日本建設業連合会(日建連)北陸支部は2025年8月25日、石川県内の学生に土木の魅力を伝えることを主たる目的として、「現場見学会」および「若手技術者との交流会」を富山県南砺市利賀村にて開催しました。この行事には、金沢大学の土木系の学科で学ぶ大学院生12名が参加し、北陸地方整備局利賀ダム工事事務所の職員、さらには清水建設および大成建設に所属する若手技術者7名が同席しました。参加した大学院生は、北陸整備局が建設を進める利賀ダムの二つの主要現場、すなわち「利賀ダム本体建設第1期工事(清水建設・鴻池組JV)」と「利賀ダムの押場地区貯水池法面対策第1期工事(大成建設・東急建設・岩田地崎建設JV)」を視察しました。現場では、堤体基礎掘削や造成工といった建設の根幹をなす工程の様子が公開され、学生たちは土木の最前線を肌で感じることができました。また、昼食を囲んで行われた交流会では、大学院生、事務所職員、若手技術者の間で土木の仕事内容やそのやりがいをテーマに活発な意見交換が交わされ、学生にとって机上では得られない実践的な知識を獲得し、将来のキャリア形成を具体的に考察する上で極めて有益な機会となったと報告されています。

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建設現場の最前線で働くことの意義と魅力
利賀ダムのような大規模な公共工事は、単なる構造物の建設に留まらず、地域の安全・安心を確保し、持続可能な社会基盤を構築するうえで不可欠な役割を担っています。このような国家的なプロジェクトの最前線で働くことは、極めて大きな意義と魅力に満ちています。土木技術者や現場作業員は、時に過酷な自然条件と向き合いながらも、緻密な計画と高度な技術力をもって、巨大な構造物を大地に刻み込みます。堤体基礎掘削や造成工といった基礎的な工程一つをとっても、その精度や品質がダム全体の安全性と機能性を左右するため、一つ一つの作業に高い専門性と責任感が求められます。
この仕事の最大の魅力の一つは、自身の仕事が具体的な「形」として残り、後世にまでその価値が継承される点にあります。完成したダムが洪水から地域を守り、安定した水資源を供給する姿を目にする時、従事者には計り知れない達成感と誇りが生まれます。また、現場では予期せぬ課題が常に発生し、その都度、チーム一丸となって解決策を模索し、実行していく過程は、個人の技術力と問題解決能力を飛躍的に向上させます。最先端の技術や工法を学び、実践する機会も豊富であり、常に自身のスキルアップを図ることができる環境も、この仕事の醍醐味と言えるでしょう。社会貢献性の高さと、技術者としての成長を実感できることは、建設現場で働くプロフェッショナルにとってかけがえのない財産となります。
若手技術者との交流が示すキャリアパスと専門性の追求
日建連北陸支部が開催した交流会では、若手技術者と大学院生が土木の仕事内容ややりがいについて意見を交換しました。この交流は、建設業界における若手のキャリア形成、そして専門性追求の重要性を示唆しています。今日の建設現場では、ICT施工やBIM,CIMといったデジタル技術の導入が進み、より高度で効率的な施工が求められています。若手技術者には、これらの新技術を積極的に学び、現場に適用していく役割が期待されています。彼らは、入社後のOJTを通じて実践的なスキルを習得するだけでなく、専門分野における資格取得や、継続的な学習を通じて自身の市場価値を高めていくことが不可欠です。
キャリアパスは多岐にわたります。現場監督としてプロジェクト全体を統括する道もあれば、特定の専門分野(例えば、地盤改良、トンネル掘削、橋梁架設など)のスペシャリストとして技術を深める道もあります。また、設計、研究開発、品質管理など、現場を支える多様な職種も存在します。若手技術者が自身の興味と適性を見極め、目標を定めて努力を重ねることで、業界内で確固たる地位を築くことが可能です。発注者側である北陸地方整備局の職員との交流は、公共工事の計画・発注段階から竣工・維持管理に至るまでのプロセス全体を理解する上で貴重な機会であり、技術者としての視野を広げ、より多角的な視点からプロジェクトに貢献できる人材へと成長する助けとなります。

大規模公共工事における先進技術と安全管理の最前線
利賀ダムの現場見学会では、堤体基礎掘削や造成工といった大規模工事の具体的な工程が公開されました。このような公共工事の最前線では、安全性、品質、効率性を高い次元で両立させるために、先進技術の導入と厳格な安全管理体制が不可欠です。例えば、GNSS(全球測位衛星システム)を活用したICT建機は、設計データに基づいた高精度な掘削や造成を可能にし、作業の効率化と品質向上に大きく貢献しています。また、ドローンを用いた測量や進捗管理、3Dスキャナーによる現況把握は、詳細な情報を迅速に取得し、正確な意思決定を支援します。
安全管理においては、KY活動(危険予知活動)の徹底、リスクアセスメントの実施、そして作業手順の厳守が基本となります。加えて、AIを用いた映像解析による危険行動の検知システムや、ウェアラブルデバイスによる作業員の生体情報モニタリングなど、最新のテクノロジーを駆使して事故を未然に防ぐ取り組みも進められています。清水建設、大成建設といった大手建設会社が施工を担当する現場では、これらの技術と管理手法が体系的に運用され、高い水準の安全と品質が維持されています。現場で働く人々は、これらの先進技術を積極的に習得し、安全意識を常に高く保つことで、自身のプロフェッショナリズムを日々磨き上げています。
現場経験がもたらす個人の成長とチームへの貢献
学生が現場見学会を通じて「机上では学べない実践的な知識」を得たように、建設現場での経験は、従事者自身の個人の成長に計り知れない価値をもたらします。現場で直面する多種多様な課題、例えば予期せぬ地盤条件の変化や天候による作業制約などは、教科書には載っていない実践的な問題解決能力を養う絶好の機会です。これらの経験を通じて、技術者は状況判断力、応用力、そして迅速な意思決定能力を培います。また、多くの利害関係者が関わる大規模プロジェクトにおいては、発注者、元請け、協力会社、地域住民といった多様な主体との円滑なコミュニケーション能力や調整力も不可欠です。
チームでの協働も、現場経験がもたらす重要な側面です。一つの構造物を完成させるためには、測量、設計、施工、検査など、各分野の専門家が連携し、それぞれの役割を果たす必要があります。若手技術者は、先輩やベテラン職人の知識と経験から学び、自身の技術を磨きながら、やがては後進を指導する立場へと成長していきます。このように、現場経験は単なる技術力の向上だけでなく、人間性、リーダーシップ、そしてチームを動かす力を育む基盤となります。個々の技術者の成長が、ひいては組織全体の生産性向上と技術革新に繋がり、建設業界全体の発展に貢献するのです。
まとめ
日建連北陸支部が開催した利賀ダムの現場見学会と交流会は、単に学生に土木の魅力を伝えるだけでなく、建設業界が抱える可能性と、現場で働くプロフェッショナルたちの矜持を再確認する機会となりました。大規模公共工事の推進は、先進技術の導入と厳格な安全管理によって支えられており、これらを担う技術者一人ひとりの情熱と専門性が極めて重要です。現場経験を通じて培われる実践的な知識、問題解決能力、そしてチームワークは、個人のキャリア形成のみならず、業界全体の持続的な発展に不可欠な要素です。
