株式会社奥村組と昭和コンクリート工業株式会社は、共同で開発したプレキャストPC床版の継手工法「Zスパイラル工法」が、100年相当の耐久性を有することを確認したと発表しました。この確認は、大型車の走行を模擬した輪荷重走行試験によって行われ、これにより、道路の車線を確保しながら半断面ずつ施工を行う「幅員方向分割取替工事」においても同工法の適用が可能となります。
この工法は、特殊ならせん鉄筋「Zスパイラル筋」を使用することで、従来のループ継手工法と比較して接合作業時間を約75%も短縮できる画期的な技術です。高速道路の老朽化対策が急がれる中、工期の短縮と作業の効率化は喫緊の課題であり、本工法は今後のインフラ更新工事において重要な役割を担うことが期待されます。
Q1. 「Zスパイラル工法」とは、具体的にどのような技術ですか?
A1. 橋の床版を接合する際の手間と時間を大幅に削減する新工法です。
「Zスパイラル工法」は、工場で製造されたコンクリート部材であるプレキャストPC床版を現場で繋ぎ合わせるための新しい継手工法です。従来の「ループ継手工法」では、床版から出ているループ状の鉄筋の中に、橋の軸と直角方向に6本の鉄筋を1本ずつ手作業で通し、固定する必要がありました。この作業は非常に手間がかかり、多くの時間と労力を要するものでした。 これに対し、「Zスパイラル工法」では、その直角方向鉄筋の代わりに「Zスパイラル筋」と呼ばれる矩形状の特殊ならせん鉄筋を使用します。このZスパイラル筋は、ループ筋の上部から一度に挿入し、結束固定するだけで作業が完了します。この革新的な手順により、接合部に要する作業時間を約75%も短縮することが可能になります。この技術は、2024年6月にNEXCO総合技術研究所(NEXCO総研)から継手性能の証明書の承認も受けており、その信頼性は公的に認められています。

Q2. なぜ今、この工法が重要視されているのですか?
A2. 高速道路の老朽化対策と、交通規制を最小限に抑える必要性があるためです。
現在、日本の多くの高速道路でコンクリート床版の老朽化が深刻な問題となっており、その更新工事が急務です。しかし、工事を行うためには長期間の交通規制が必要となり、社会経済活動への影響が大きな課題でした。 そこで重要になるのが「半断面施工」です。これは、道路の幅を半分ずつに分け、片側の車線を確保しながら工事を進める手法です。まず片側(1次施工)の床版を取り替え、その後、交通をそちらに切り替えてから残り半分(2次施工)の工事を行います。この施工方法では、1次と2次で設置した床版を道路の中央(縦目地)で強固に一体化させる必要があります。 従来、この縦目地での接合の信頼性を確保するため、横目地(橋の進行方向の継ぎ目)には実績のある標準工法が用いられるのが一般的でした。しかし、今回、「Zスパイラル工法」を横目地に使用した場合でも、縦目地で接合した床版が100年相当の疲労耐久性を持つことが実規模の試験で確認されました。これにより、交通規制を伴う半断面施工においても、作業時間を大幅に短縮できる「Zスパイラル工法」を安心して適用できる道が開かれたのです。

Q3. 「100年相当の耐久性」はどのようにして確認したのですか?
A3. 実物大の試験体を用いた過酷な「輪荷重走行試験」によって証明されました。
「100年相当の耐久性」という評価は、単なる計算上の推測ではありません。実際に「Zスパイラル工法」で接合した実物大の床版試験体を作成し、大型車両の繰り返し走行を模擬した「輪荷重走行試験」を実施することで確認されました。この試験は、床版に繰り返し荷重をかけることで、長期間の使用による疲労や劣化を再現し、ひずみや変形を精密に計測するものです。 試験の結果、「Zスパイラル工法」で接合された床版は、長期にわたる過酷な使用環境に耐えうる十分な疲労耐久性を有していることが証明されました。さらに、接合部の防水性を確認する漏水試験なども実施されており、品質と安全性が多角的に検証されています。このような厳格な試験を経て、100年という長期にわたる供用にも耐えうると結論付けられたのです。
Q4. この技術は、建設業界にどのような影響を与えますか?
A4. 工期短縮、生産性向上、そして作業員の負担軽減に大きく貢献します。
「Zスパイラル工法」の普及は、建設業界、特に道路インフラの維持更新分野に複数の好影響をもたらすと考えられます。 第一に、圧倒的な工期短縮です。接合作業時間を75%削減できることは、プロジェクト全体の工期を大幅に短縮し、コスト最適化にも繋がります。これにより、より多くの老朽化インフラを効率的に更新することが可能になります。 第二に、生産性の向上です。鉄筋の挿入という複雑で時間のかかる作業が簡素化されることで、現場の作業効率は飛躍的に向上します。これは、人手不足が深刻化する建設業界において極めて重要な要素です。 第三に、作業員の身体的負担の軽減です。狭い空間で鉄筋を一本ずつ挿入する作業は、作業員にとって大きな負担でした。「Zスパイラル工法」は、この負担を大幅に軽減し、より安全で働きやすい労働環境の実現に貢献します。 奥村組と昭和コンクリート工業は、今後、高速道路の床版分割取替工事を中心に本工法を積極的に提案し、その普及と展開を図っていく方針です。
まとめ
今回紹介した「Zスパイラル工法」は、単なる新技術にとどまらず、建設業界が直面する工期、コスト、労働力不足といった複合的な課題に対する有効な解決策の一つです。100年相当の耐久性という信頼性を確保しつつ、作業時間を75%も短縮できるこの工法は、今後のインフラ更新工事の標準となる可能性を秘めています。現場の生産性向上と働き方改革を推進するため、このような技術革新の動向に注目し、知識を深めていくことが重要です。
