災害応急対策の最前線:建設業7割超が協定締結、現場を悩ます「要員確保の壁」とその打開策

国土交通省が2023年12月以降に、建設業者1602者を対象に実施した調査により、地方公共団体等との災害時における応急対策業務に関する協定(災害協定)の締結状況と、その運用における課題が明らかになった。

この調査は2024年1月に実施されたものであり、建設業者が災害時において担う役割の大きさを定量的に示す内容である。

調査結果によると、回答した建設業者のうち、災害協定を「締結している」と回答した企業は74.7%に達し、災害発生時の即応体制が業界内で相当程度整備されている実態が浮き彫りになった。

特に総合工事業者の締結率は8割を超えており、高い地域貢献意識が確認できる。

しかしながら、協定を締結している企業が直面する具体的な課題として、「応急対策などに従事する要員の確保」を挙げた事業者が92.0%と突出して高く、人員確保が災害対応における最大のボトルネックとして認識されていることが判明した。

また、未締結の事業者においても、協定締結への関心を示す企業が10.0%存在する一方で、懸念事項の筆頭も「人員の確保」が77.7%で最も多く、全産業の懸念事項の中で最多を占める結果となった。

建設業が担う災害時の重要な役割を継続的に果たすためには、この人員・資機材確保の構造的な課題を平時に解決することが喫緊の課題と認識する必要がある。

Q1:災害協定の締結率が高いにもかかわらず、なぜ人員確保が課題の9割超を占めるのか?

建設業の災害協定締結率が74.7%という高い水準にあることは、業界全体が社会インフラの維持に対して強いコミットメントを有することを示す。

専門工事業者に限定しても7割を超える締結率があり、地域に根差した中小企業の役割の大きさが読み取れる。

しかし、この高い締結率の裏側で、応急対策などに従事する要員の確保が92.0%の事業者で課題として認識されている実態は深刻である。

これは、災害対応が突発的かつ不確実性の高い業務である特性に起因する。

通常の業務に加え、緊急時に熟練した技術者を即座に動員する必要が生じるため、特に地方においては、災害時に必要となる要員を平時から確保し続けることが極めて困難な状況にある。

さらに、要員確保の課題に付随して、「広域・長時間にわたる要員等の確保」も53.3%の企業が課題として挙げており、大規模災害時の長期的な人員配置の難しさも顕在化している。

建設業界全体で進む担い手不足や高齢化が、この災害対応力を直接的に脅かしている構造が読み取れるため、平時からの人材育成と定着策の強化が、災害対応力維持の前提条件になる。

Q2:人員確保以外で、協定締結企業が特に懸念している資機材や連携に関する課題は何か?

人員確保が圧倒的なトップであるものの、現場で応急対策の実効性を高めるためには、資機材の準備と関係機関との連携も不可欠である。

調査結果では、資機材関連の課題として、「その他資機材の確保」(32.0%)、「車両などの資機材の確保」(22.7%)が挙げられた。

これは、応急対策に特化した特殊な重機や消耗品を、平時から整備・保管するコストやスペースが中小企業にとって負担になっている可能性を示唆する。

また、対応の質を高めるための課題として、「訓練・研修の充実」が33.2%を占めている点も注目する必要がある。

災害対応は通常の建設業務とは異なる特殊な技能や判断力が求められるため、平時からの継続的な訓練が重要視されていることが分かる。

さらに、災害対策は単独企業で完結するものではなく、官民連携を含めた協力体制が必須である。

関係機関との連携に関する課題として、「他業種などとの連携」(34.2%)、「行政などとの連携」(33.1%)がそれぞれ3割を超えて指摘された。

迅速な応急対応を実現するためには、平時から行政や他業種との間で情報共有や役割分担を明確にする必要性が認識されており、訓練を通じてこれらの連携を深めることが求められる。

Q3:未締結企業が持つ「人員確保」の懸念を乗り越えるための具体的な対策は可能か?

災害協定への関心はあるものの、締結に至らない主な要因が、やはり「人員の確保」77.7%である。

特に中小企業や専門工事業者においては、日常業務で手一杯のなか、不確実な災害対応のためにリソースを割くことに躊躇が生じるのは、経営的視点から自然な判断といえる。

しかし、この課題解決なしに災害対応力を高めることはできない。一つの打開策として、調査結果で30.3%の事業者が課題として挙げた「ICTの活用」が鍵を握る。

ドローンや情報通信技術を活用することで、少ない人員でも広範囲の状況把握や初期対応の効率化が可能になり、要員確保の負担を軽減できる可能性がある。

また、地域内の建設業者や他業種との連携を強化することで、緊急時に相互に人員や資機材を融通し合う体制を構築することも有効である。

協定を締結していない事業者が懸念事項として挙げた「応急対策資機材の確保」56.1% を、広域的な連携によりカバーすることも視野に入れる必要がある。

行政側も、中小企業が協定締結しやすいように、要員や資機材の動員基準の緩和や、平時からの訓練への財政的な支援などを拡充することが求められる。

建設業者が災害協定に参加することは、地域社会への貢献に加えて、公共工事の受注機会の増加や企業ブランディング向上に繋がる可能性もあり、長期的な視点での経営戦略として位置づけることが推奨される。

Q4:現場で働く我々が今すぐ取り組める平時の備えとは何か?

国交省の調査は、災害時の対応力を高めるための「平時の準備」の重要性を明確に示唆している。現場で働く個々の技術者や管理者にとっては、以下の三点が特に重要となる。

第一に、「知識と技術のアップデート」である。

訓練・研修の充実が課題に挙がる通り、平時から応急対策に特化した技術習得を意識的に行なうことが、緊急時の迅速な対応に直結する。

特に、地方の建設業では、人員確保の懸念が最も深刻であり、技術者のスキルレベルの均質化と底上げが急務である。

第二に、「資機材の明確な管理と共有」である。

特殊資機材がどこにあり、誰が操作できるかを明確にし、定期的なメンテナンスを徹底する。

さらに、地域内の他社との間で、緊急時にどのような資機材が利用可能か、情報を共有する仕組みを構築する。

第三に、「情報共有体制の確立とICTへの習熟」である。

災害対応においてICT活用が課題として指摘されている点を鑑み、日常的にデジタルツールや連携アプリに習熟し、緊急時の情報共有や通信手段を確保しておくことが重要。

行政や他業種との連携をスムーズにするためにも、平時の情報交換や顔の見える関係構築が、いざという時の実効性を担保する。

まとめ

国土交通省の調査結果は、建設業が災害協定を通じて地域社会に深く貢献している事実を示す一方、その最前線で働く事業者が、人員・資機材の確保という構造的な課題に直面している現状を浮き彫りにした。

特に人員の確保は、協定締結の有無にかかわらず、業界全体の懸念事項のトップにある。

この課題を克服するためには、単に人員を増やすだけでなく、ICTの積極的な導入、地域内の事業者間・行政との連携強化といった、効率化を視野に入れた具体的な経営戦略が不可欠といえるだろう。

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