強靱な国土を支える建設技術の最前線:ICT活用と求められる「人の価値」

関東地方整備局は、2025年度「建設技術フォーラム」を東京・東池袋のサンシャインシティ展示ホールCにて開催した。本フォーラムは「強靱な国土が私たちの暮らしを守る」をテーマに掲げ、日刊建設工業新聞社主催の「建設技術展2025関東(C-Xross 2025)」との共催で実施された。関東整備局の橋本雅道局長は、開会あいさつの中で、デジタル技術を活用し建設業の生産性向上を図りつつも、今後は「人間にしかできないことが価値として評価される」時代になると指摘した。また、首都直下地震を含む自然災害への備えとして、「技術で何ができるのかを考える機会にしてほしい」と呼び掛けた。基調講演では、田中克直企画部長が関東整備局が推進する国土強靱化施策を説明した。

発表された8件の研究事例や施策には、防災・減災関連の最新技術が多く含まれ、特に埼玉県内で建設が進む荒川第2調節池の工事では、ICTを活用した施工の省力化が進められており、2026年1月には大型施工機械を遠隔で操作する世界初の実証実験が計画されていることが米沢拓繁荒川調節池工事事務所長から明らかにされた。この動きは、道路、河川、空港、公園といった多様なインフラ分野におけるデジタル化と、災害に強い国土を構築するための技術開発の加速を明確に示すものである。

Q1: 国土強靱化は、現場の業務とどのように結びつくか?

国土強靱化は、自然災害から社会基盤を守り、早期復旧を可能にするための重要な取り組みであり、建設現場はその実現を担う最前線である。災害対策への具体的な備えは多岐にわたり、例えば、羽田空港では滑走路や誘導路に加え、「エプロン部の耐震化」に着手する方針が温品清司東京空港整備事務所長から表明された。これは、大規模地震が発生しても、空港の運用機能を維持するための重要な工事であり、現場には極めて高い耐震基準を満たす施工が求められる。

また、国営東京臨海広域防災公園(東京都江東区)は、隣接するがん研有明病院と連携し、非常時には災害対策本部として機能するように設計されている。平常時も防災教育の拠点として活用されており、インフラが単なる構造物ではなく、地域の安全を守る多機能な拠点として位置づけられている。現場で働く人々は、建設作業の一つ一つが、災害時における人命救助や社会機能維持という、極めて公共性の高いミッションに直結していることを理解する必要がある。

※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしました。

Q2: 建設現場のデジタル技術(DX)の導入状況を知りたい

建設業の生産性向上に不可欠なDXは、最新の技術フォーラムで最も注目されたテーマの一つである。前述の荒川第2調節池工事での事例のように、ICTを活用した施工の省力化は進んでおり、大型施工機械の遠隔操作実証実験は、作業員の安全性向上と効率化を両立させる試金石となる。また、メンテナンスや管理業務においてもデジタル化が進行している。例えば、桑原祐史茨城大学大学院教授は、公園管理の効率化を目指し、ドローンで撮影した画像から異常箇所を生成AIで分析する技術を紹介した。これにより、広大な敷地の点検作業を大幅に短縮し、人員配置の最適化に貢献する。

さらに、東京電機大学の中村明生教授は、除草ロボットシステムの開発成果を披露し、現場での重労働やルーティン作業の自動化が進んでいることを示した。現場従事者にとっては、これらの新しい技術ツールを使いこなし、収集されたデータを活用する能力が、今後のキャリアにおいて決定的な要素となる。

Q3: インフラメンテナンスの効率化はどのように図られているか?

既存インフラの維持管理は、国土強靱化を実現するための柱である。設立7年目を迎えた関東道路メンテナンスセンター(関東MC)は、直轄橋梁の点検データを一元管理し活用する「GISプラットフォーム」を紹介した。このプラットフォームは、点検結果を視覚的に把握しやすくすることで、効率的な維持管理計画の策定を可能にするだけでなく、自治体への技術支援にも役立てられている。

加えて、河川部の三好健次上下水道調整官は、道路陥没事故の事例を挙げつつ、上下水道インフラの維持管理が自治体にとって大きな財政的・人的負担であることから、「上下水道インフラの広域化」が進むという見解を示した。インフラ管理の広域化は、限られたリソースの中で専門性を高め、効率的かつ包括的なメンテナンス体制を構築するための施策である。現場でメンテナンス業務に携わる技術者には、地域をまたいだ連携や、データに基づく科学的な判断力が強く求められるようになる。

Q4: 技術革新が進む中で、「人」に求められる価値とは何か?

デジタル技術の発展によって、多くの現場作業が自動化、省人化される傾向にあるが、この変革期において最も重要な視点は、関東整備局の橋本局長が強調した「人間にしかできないことの価値」の再評価である。機械やAIが担うのは、データ収集や反復的な作業、特定の条件下での実行である。しかし、現場における予期せぬトラブルへの対応、複雑な地形や環境下での判断、そして品質を確保するための微細な調整能力は、熟練した職人や監督者の経験と知見が不可欠である。例えば、遠隔操作技術が導入されたとしても、機械の挙動を監視し、計画通りに進まない場合に即座に対応する能力は、人間の判断力が支える。

また、関東MCが活用するGISプラットフォームや生成AIによる分析結果を、現場のリアルな状況と照らし合わせ、最終的な施工や補修の意思決定を下すのも「人」の役割である。これからの建設現場で評価されるのは、高度な技術を使いこなし、複数の情報源を統合して、安全かつ最適な解を導き出す能力、すなわち「ヒューマンスキル」と「システム思考」の融合である。

Q5: 道路ネットワークの整備状況はどうなっているか?

国土強靱化と経済活動の円滑化のため、道路ネットワークの機能強化も継続して進められている。道路部の小澤知幸道路企画官は、現在整備が進む「3環状9放射」の状況について詳細に説明した。これらの主要幹線道路は、平時の物流効率を高めると同時に、災害時には緊急車両や救援物資の輸送を担う重要なライフラインとなる。

さらに、事業化を目指している「新湾岸道路」の概略ルートについても説明があり、新たな交通インフラの構築に向けた具体的な計画が進んでいることが示された。これらの大規模な整備事業は、建設業の中小企業にとって安定的な事業機会を提供するとともに、技術革新の成果を適用し、生産性を高めるための実証の場となる。現場の技術者には、これらの公共工事の品質基準や安全管理要件を厳格に遵守することが求められる。

Q6: 中小企業や現場従事者は、この変革にどう対応すべきか?

建設業の変革は避けられない潮流であり、特にリソースが限られる中小企業や現場従事者にとっては、その対応が企業の存続と成長の鍵となる。まず、荒川調節池での遠隔操作実験のように、最新のICT技術は、人手不足や危険な作業環境の改善に直結するため、その導入を積極的に検討すべきである。自治体支援の一環として関東MCが提供するGISプラットフォームのような共有技術やデータ利用の仕組みを積極的に活用し、コストを抑えつつ専門知識を取り入れることが有効な戦略である。現場従事者は、デジタル技術への忌避感を持たず、ドローンやAIツール、ICT施工管理システムなど、新しい技術領域への学習を継続的に行うことが重要である。これにより、機械が代替できない高付加価値な業務、すなわち「人間にしかできないこと」を担える人材となり、自身の市場価値を高めることができる。変革期においては、技術の進化を単なる脅威ではなく、安全性の向上、効率化、そして個人のスキルアップの機会と捉える柔軟な姿勢が求められる。

まとめ

2025年度建設技術フォーラムは、「強靱な国土」の実現に向け、建設業がデジタル化による生産性向上と、人間の経験と知恵に基づく価値創造を両立させる道のりを歩んでいることを示した。大型機械の遠隔操作やAIを活用した効率的なインフラ管理など、現場の景色は確実に変わっていく。この変化に適応し、技術を駆使して現場の安全と品質を確保することが大切である。

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