NTTドコモビジネス、大林組、鹿島建設、大成建設をはじめとする計10社が、建設現場などのフィールドにおいて、AIおよびロボットを活用した実証実験を開始しました。
この取り組みの主眼は、現場の状況を把握し、作業効率と安全性を高めるためのデジタル技術の導入検証にあります。
具体的には、映像監視によって取得した現場データを、現場付近に配置されたエッジAIと、より広範囲な処理を行なうクラウドAIの両方で分析し、現場における変化や作業員の動線を詳細に把握する点が重要視されています。
さらに、建設現場特有の課題である通信環境の不安定さを克服するため、メタサーフェス技術(人工材料を用いた特殊なアンテナ技術)を用いて、電波を通信困難な重要なエリアへ意図的に誘導し、通信エリアの確保を目指す検証も同時に進められています。
この実証期間は9月から11月頃を予定しており、自律移動型のロボット連携などの技術開発とも連動する動きとして注目を集めます。
Q1:実証実験のフィールドと具体的な検証内容は何か?
今回の実証実験のフィールドは大きく二つ設定されています。
一つは、大成建設の技術センター(横浜)における建設現場です。
ここでは、主に現場の映像監視を行ない、作業員の動線データなどを分析することで、現場の状況変化や効率的な動きを把握する検証を実施します。
もう一つは、鹿島建設の西湘研修所にあるダム現場です。
こちらのフィールドでは、ダムでの作業や休憩時の様子を撮影し、映像監視や現場の変化把握を行ないます。
特にダム現場では、休憩中の映像データなどを、自動で巡回移動するロボットに搭載されたカメラを利用して取得するケースを想定しており、巡回ロボットによるデータ収集の有効性を検証する目的があります。
これらの検証を通じて、現場における作業効率のボトルネックを特定し、AIによるインサイト抽出を可能にすることが期待されます。

実証フィールドの機器配置図(仙台市役所本庁舎整備第1期建築工事現場)=報道発表資料から
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
Q2:建設現場の通信問題を解決する「メタサーフェス技術」とは何か?
建設現場、特に大規模な現場や地形が複雑な場所では、資材や構造物によって電波が遮られ、通信環境が不安定になりやすいという深刻な課題があります。
この問題を解決するために、今回の実証実験ではメタサーフェス技術が適用されます。
メタサーフェス技術とは、人工的な構造をもつ表面を利用して、電磁波(電波)を特定の方向へ反射または屈折させることを可能にする技術です。
例えば、鹿島建設のダム現場のような難所や、大成建設の建設現場内の特定エリアなど、電波が届きにくい場所に対し、メタサーフェスを用いた特殊なシートやデバイスを設置します。
これにより、電波を狙った重要なエリアに強力に誘導し、安定した通信エリアを確保できます。
現場でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するうえで、安定した通信基盤は欠かせず、この技術は作業員が使用するIoTデバイスやロボットの運用において極めて重要な役割を果たすと考えられます。
Q3:AI・ロボットによる「現場の変化把握」は現場監督や職人にどのような利益をもたらすか?
AI・ロボットによる現場の状況把握は、主に安全性向上と生産性向上の二つの側面から現場に大きな利益をもたらします。
安全性向上については、映像監視を通じて、危険な作業動線や、立ち入り禁止エリアへの侵入、または予期せぬ資材の落下などの「変化」をリアルタイムで検知できる可能性が高まります。
これにより、事故を未然に防ぐためのアラートや、危険行動の即時是正が可能となります。
生産性向上については、AIが作業員の動線や資材の移動効率を客観的に分析し、非効率なプロセスや待ち時間をデータとして抽出します。
従来の現場管理では、人の目や経験に頼っていた「ムダ」の特定が、データに基づいて正確に行なえるようになります。
特に、大成建設の現場での検証では、作業員が携わらない、つまり人がデータを書き込まない作業自体を分析の対象とすることで、より客観的な改善データを得ることを目指します。
このデータは、現場監督が最適な人員配置や作業フローを見直す際の強力な根拠となることでしょう。
Q4:現場で収集されるデータは、作業員のプライバシー侵害にならないか?
この実証実験では、プライバシー保護に配慮した設計がなされています。
大成建設の現場での動線分析の検証においては、人による書き込みは基本的に無しとする範囲で基本的なデータ収集と分析を実施する方針です。
作業そのものの効率性や危険性を客観的に評価することに主眼を置いているため、個々の作業員の行動を過度に追跡・監視する目的では実施されていません。
ただし、一部のフィールドでは、作業員の協力を得て動線把握の対象とするケースも存在します。
AIによる映像監視は、個人の特定よりも「異常な状態」や「非効率なパターン」を抽出することに焦点を当てており、労務管理や働き方改革の一環として、現場全体の環境改善に繋げるためのデータ活用を前提としています。

※画像はイメージです。
Q5:中小の建設業者がこの技術をすぐに導入することは現実的か?
現在、この実証実験を主導しているのは、NTTドコモビジネスや大手ゼネコンであり、検証には高度なAI技術や特殊なメタサーフェスデバイスが投入されています。
中小企業が直ちに大規模なAIシステムを導入することは、コストや運用面でハードルが高いかもしれません。
しかし、重要なのは、この実験によって得られる知見や技術が、徐々に汎用化され、中小規模の現場向けにパッケージ化される可能性があるという点です。
特に、通信環境の改善は、現場のデジタル化における最も基礎的な課題であり、メタサーフェス技術のような「電波を増強する」ソリューションが安価で容易に導入できるようになれば、小規模な現場でもスマートフォンやタブレットを活用した情報共有、現場管理アプリの導入が飛躍的に容易になります。
また、AIによる映像解析も、クラウドサービスの利用が進むにつれて、初期投資を抑えた形で導入可能になることが予想されます。
中小企業にとって当面は、「誰が」「どこで」「何に」時間を費やしているかを客観的に把握できるツールの導入が、生産性向上の第一歩となるでしょう。
大手による実証の成果を注視し、数年後の技術普及を見据えた準備を進めることが、経営戦略上重要です。
Q6:今回の取り組みが日本の建設業全体に与える影響は?
建設業界は、高齢化と若年層の入職者不足により、構造的な労働力不足に直面しています。
この実証実験は、単なる技術検証にとどまらず、建設現場の持続可能性と国際的な競争力向上を目指す国家的な取り組みの一環と位置づけられます。
AI・ロボットによる作業効率化が進めば、職人や現場監督は、危険度の高い作業や定型的な監視業務から解放され、より創造的で専門性の高い業務に集中できるようになります。
これは、現場の働き方改革を強力に推進し、特に若手や女性など、これまで現場から遠ざかっていた人材にとって魅力的な労働環境を創出する鍵となります。
最終的に、これらの技術は、建設現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させ、人手不足を補いつつ、プロジェクト全体のコスト最適化と品質向上に貢献する極めて重要な取り組みであると評価できます。
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