巨大災害を乗り越える建設現場の知恵:BCPと地域連携で事業を守る鉄則

内閣官房は、国土強靱化に関する第1次中期計画の確実な実行を目指し、「国土強靱化年次計画2026」の策定方針素案をまとめました。この素案では、巨大地震の被害想定地域への対応を追跡(フォローアップ)し、重要業績評価指標(KPI)を活用して各施策の進捗管理を進める方針が示されています。特に、取り組みの実効性を高めるため、広域・分野・関係府省庁間の連携に加え、民間事業者や地域住民との連携を強化する点に重点が置かれています。大規模災害の懸念が高まる中、内閣官房は、災害発生後に経済活動が停滞しないよう、企業が適切なリスク認識を持ち、災害リスクを回避または管理(コントロール)する必要があると指摘しています。

2023年度時点での事業継続計画(BCP)策定率は、大企業で76.4パーセント、中堅企業で45.5パーセントであり、上昇傾向にはあるものの、さらなる対策の浸透が急務となっています。また、防災インフラ投資への民間資金活用については、平常時から非常時を想定するフェーズフリーの視点からの対策が求められており、災害リスク情報を民間企業へ発信・浸透させることが重要との意見も出ています。

中小の建設業者こそBCPを構築すべき理由

中堅企業のBCP策定率は45.5パーセントにとどまっており、大企業に比べて危機管理体制の整備が遅れています。しかし、地域のインフラや建物維持を担う建設業は、大規模災害が発生した場合、経済活動を早期に再開させる上で極めて重要な役割を担う存在です。企業が適切なリスク認識を持たなければ、資材調達の遅延、作業員の負傷、顧客からの信用失墜などにより、事業継続そのものが困難になる可能性があります。

BCPは、単なる防災マニュアルではなく、災害発生時における事業の優先順位を明確にし、迅速な意思決定を可能にするための経営戦略であります。特に、地域に根差した中小建設業者にとって、地域社会との連携を円滑にし、復旧・復興作業に即座に対応できる体制を構築することは、企業の存在価値を保持するうえで欠かせない要素と考えられます。

現場で実践する「フェーズフリー」な安全対策とは

民間資金を防災インフラに投じる議論のなかで、**平常時と非常時を区別しない「フェーズフリー」**の視点が重要視されています。これは、現場の作業や資材管理において、日常的に使用している設備や方法が、災害発生時にもそのまま防災・減災に役立つように工夫することを意味します。例えば、高所に設置する足場やクレーンの固定方法、資材の保管場所について、平常時の効率性だけでなく、地震や台風といった非常時に二次災害を引き起こさない強度や配置を常に考慮する姿勢が求められます。災害時に資材が倒壊したり、避難経路を塞いだりしないよう、日常の整理整頓と安全確認を徹底することが、そのまま防災対策につながります。

また、現場で利用するデジタルツールや通信手段も、平常時の業務効率化だけでなく、災害時の情報共有や安否確認システムとして機能するよう設計・運用するべきです。この視点を持つことで、突発的な災害に対し、特別な対策を取るのではなく、日常の延長線上でシームレスに対応できるようになります。

現場力を高めるための「適切なリスク認識」の定義

内閣官房は、企業に対し、適切なリスク認識を持ち、災害リスクを回避・コントロールする必要があると指摘しています。建設現場におけるリスク認識の向上は、まず、自社の事業エリアで想定される災害の種類(地震、津波、風水害など)と、その規模を具体的に把握することから始まります。次に、それらの災害が現場の作業スケジュール、資材供給チェーン、協力会社との連携にどのような影響を及ぼすかをシミュレーションすることが不可欠です。例えば、特定の輸送ルートが寸断された場合、代替となるルートや資材の事前備蓄計画を立てる必要があります。

また、リスク情報を民間企業に発信・浸透させることの重要性が提言されているように、最新のハザード情報や気象情報を、現場の作業員一人ひとりにまで確実に共有する仕組みを構築することが、人的被害を最小限に抑える上で重要になります。リスクを「知っている」だけでなく、「対応できる」状態にすることが、現場力を高める鍵となります。

地域連携と官民連携を現場の強みに変える実践法

国土強靱化の取り組みを実効性のあるものとするためには、関係府省庁間の連携に加え、民間事業者と地域住民との連携が強く求められています。建設業は、この連携の中心的な役割を担う存在です。現場レベルでは、近隣の住民や他業種の事業者との間で、災害時の避難経路、緊急連絡先、重機や資材の共同利用に関する事前協定を結ぶことが有効です。

例えば、能登半島地震の復興事例から、建物の耐震化の進捗や、建設関係の総額整理の必要性が示唆されていますが、これは地域全体で復旧・復興に向けた資源を最適に配分するための連携が重要であることを意味します。地域コミュニティの一員として、平常時から防災訓練への参加や、地域のインフラ情報(耐震化状況など)の共有に積極的に参画することで、有事の際の迅速な対応力を飛躍的に向上させることが可能になります。

BCP策定におけるKPI管理の現場への適用方法

国土強靱化の施策では、重要業績評価指標(KPI)による進捗管理が進められています。これは、現場におけるBCP策定・実行においても応用可能です。BCPを策定しただけで終わらせるのではなく、「災害発生後、主要設備を○時間以内に復旧させる」「連絡網を用いて全社員の安否確認を○分以内に完了させる」「重要顧客との連絡手段を○種類確保する」といった具体的な目標値をKPIとして設定し、定期的な訓練を通じてその達成度を評価・改善していく必要があります。

成果連動型委託(PFS)/ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)は、成果の可視化や合意形成に課題があると指摘されていますが、内部のBCP管理においては、KPIを設定することで、対策の効果を定量的に可視化し、改善サイクルを回すことが可能になります。現場の安全管理担当者や管理者にとって、KPIを設定することは、BCPを抽象的な概念から具体的な行動目標へと落とし込む有効な手段になります。

中小企業がすぐにできるリスク回避・コントロールの実践例

内閣官房が強調するリスクの回避とコントロールは、中小企業においても取り組める具体的行動があります。リスク回避の一つは、**「情報のデジタル化と分散保管」です。設計図面、顧客情報、協力会社の連絡先など、事業継続に必須なデータをクラウドサービスなどを利用して本社から離れた場所に安全に保管することで、建物が被災しても業務の再開が迅速になります。

また、リスクコントロールとしては、「多角的な資材調達ルートの確保」が挙げられます。大規模災害時には特定の地域からの供給が停止する事態が想定されるため、複数の供給元と契約を結び、代替品のリストアップと確保に努めるべきです。さらに、現場作業員の健康管理も重要なリスクコントロールです。特に熱中症対策や怪我の防止は、BCPの基盤であり、作業環境の改善や適切な休憩の確保は、有事だけでなく平常時からの重要な取り組みです。BCPは、「災害後の復旧」だけでなく、「災害時の被害拡大を防ぐ」**ための日々の努力の積み重ねが本質であることを認識すべきです。

※画像はイメージです

災害に強い組織文化の醸成:BCPを「自分事」にするには?

BCPの浸透において、多くの建設現場で課題となるのが、策定した計画が現場の作業員にとって「他人事」になってしまうことです。計画の実効性を高めるには、すべての関係者が適切なリスク認識を持ち、行動する必要があります。これには、トップダウンでの指示だけでなく、現場からの意見を反映した訓練の実施が効果的です。例えば、災害発生を想定した模擬訓練を実施し、その場で作業員が感じた課題や改善点を吸い上げ、計画に反映するサイクルを確立します。

また、フェーズフリーの考え方を取り入れ、日常の安全点検や朝礼の際に、防災の視点を含めたディスカッションを取り入れることも有効です。災害対応の専門知識を持つ人材(例えば、防災士などの資格保有者)を社内で育成し、その人材が中心となって、安全とBCPに関する意識を現場全体に浸透させる取り組みが求められます。組織全体で「災害から事業を守る」という共通認識を持つことが、強靱な建設現場を築く土台となります。

 

まとめ

国土強靱化の推進は、建設業に事業継続計画(BCP)の実効性を高めることを強く要求しています。中堅企業のBCP策定率は大企業に比べて低く、早急な対策が必要です。現場の皆様には、平常時と非常時を区別しない「フェーズフリー」の視点を導入し、災害リスクを適切に認識・管理することが求められます。これは、資材調達や現場作業の安全性を高めるだけでなく、地域住民や他事業者との連携を強化し、有事の際に迅速かつ強靱な対応を可能にするための経営上の最重要課題です。建設現場の安全と継続性を確保するため、今一度、貴社のBCPとリスク管理体制を見直すことが肝要です。

 

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