ゼネコンが仕掛ける先端農業の衝撃!冬イチゴ収穫に見る異業種参入の勝算

「苫東ファーム」が冬イチゴ出荷のピーク

北海道苫小牧市の「苫東ファーム」において、クリスマス需要に応える冬イチゴの収穫が最盛期を迎えている。
同社は2014年に清水建設、富士電機、ウシオ電機、北洋銀行、苫小牧信用金庫、菱中建設の6社による共同出資で設立され、2020年4月からは清水建設の連結子会社として運営されている。

国内最大級となる4ヘクタールの栽培施設を有し、3つの区画に分かれた温室で計24万4000株のイチゴを育成しているのが大きな特徴だ。
収穫のピークを冬、夏、秋と意図的にずらして定植を行なうことで、通年での安定的な栽培・出荷体制を構築している。
特に6月から7月に定植する冬イチゴは12万株と全体の約半数を占め、需要が最大化する12月に合わせた緻密な生産管理が徹底されている。
12月17日から23日の1週間で約4.2トンの収穫・出荷を見込み、その9割が北海道内のクリスマスケーキ用として供給される予定だ。


クリスマスに向けて出荷のピークを迎える冬イチゴ(清水建設提供)
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。

建設業界が農業へ参入する経営的背景と戦略的意義

大手ゼネコンが農業分野へ本格参入し、着実な成果を上げている背景には、建設業界が直面する構造的な課題と、建設技術がもつポテンシャルの高さがある。
建設業は従来、受注に依存するフロー型のビジネスモデルが中心であったが、近年の経営環境の変化により、安定的な収益基盤の確保、すなわちストック型ビジネスへの転換が多くの企業で喫緊の課題となっている。
農業、特に精密な環境制御を行なう施設園芸は、一度生産システムを構築すれば継続的な売上と利益の計上が期待できるため、多角化経営における有力な選択肢となる。

また、建設現場で培われた工程管理、品質管理、そしてコスト管理のノウハウは、農作物の生育状況をデータ化し、計画的に生産を行なう「スマート農業」と極めて親和性が高い。
清水建設のような大手のみならず、地域に根ざした建設会社にとっても、農業は自社の技術的強みを活かせる新領域といえる。

現場視点でのメリット:雇用安定と技術の有効活用

現場を預かる立場から見ても、建設会社が農業を手掛けることには多くの実務的なメリットが存在する。
特筆すべきは、建設業界において長年の懸案事項となっている「通年雇用の確保」「労働力の平準化」だ。

北海道などの降雪地帯では、冬場の外仕事が減少するため、季節によって労働需要に大きな差が生じる。
しかし、苫東ファームのように冬場に収穫のピークを迎える農業を組み合わせることで、年間を通じた安定的な雇用環境を従業員に提供することが可能となる。
これは若手人材の確保や、熟練技能者の離職防止において、競合他社に対する強力な差別化要因となる。

また、自社で施工した農業施設のメンテナンスを内製化できる点も、コスト最適化の観点から非常に効率的だ。
建築物としての温室の維持管理は、建設業の日常業務そのものであり、トラブルへの迅速な対応も自社リソースで完結できる。

建設技術は具体的にどう農業に活かされるのか

「建設会社の技術が、畑違いの農業にどう貢献するのか」という疑問は少なくない。
しかし、その答えは施設の隅々に隠れている。

例えば、温室内の温度、湿度、二酸化炭素濃度を数分単位で自動制御するシステムは、現代のビル管理システム(BAS)や工場におけるクリーンルームの空調制御技術の応用である。
植物に最適な養液を循環させる灌漑システムは、高度な配管工事や水処理技術の延長線上にある。

さらに、大規模な農地造成や、台風や積雪に耐えうる強固な施設構造の設計・施工などは、まさに建設業が最も得意とする分野だ。
建設会社は単にイチゴを育てる場所を作るだけでなく、ITや機械工学を駆使して「植物の成長を最大化する工場」を運営するプロフェッショナルとして振る舞うことができる。
こうした技術的背景があるからこそ、天候に左右されにくい安定供給が実現可能となる。


※画像はイメージです。

中小建設企業が多角化経営を成功させるための道筋

一方で、中小規模の建設企業が農業へ参入する際には、初期投資の負担や農業特有のリスクをいかに管理するかが焦点となる。
植物という生き物を扱う以上、予期せぬ病害虫の発生や品質のバラつきは避けられない。

苫東ファームの事例を参考にすれば、複数の異業種企業が出資する形でリスクを分散し、地元の金融機関と強固なパートナーシップを結ぶことで、経営の安定性を担保している点が重要だ。
中小企業においても、地元の既存の農業生産法人と協力関係を構築したり、自治体が主導する官民連携プロジェクトに参画したりすることで、スモールスタートを切る道が検討できる。
まずは自社の保有する遊休地や、施工した施設の管理業務から入り、徐々に生産現場のオペレーションに深く関わっていく手法が現実的だ。

DXによる生産性向上と将来的な労働力不足への対応

建設業のDX(デジタルトランスフォーメーション)と農業のDXを同期させる試みも、今後の大きなトレンドとなる。
ドローンを用いた広大な敷地の測量や赤外線カメラによる生育診断、IoTセンサーによる土壌データの収集、AIを活用した収穫量の予測などは、両業界で共通して進化している技術領域だ。
こうした先端技術を積極的に導入することで、生産性を飛躍的に向上させつつ、これまで個人の経験や勘、すなわち「職人技」に頼りすぎていた生産体制を、誰でも再現可能なシステムへと昇華させることができる。

これは、建設業と農業の双方が抱える深刻な労働力不足に対する、一つの現実的な解決策となる。
デジタルに強い若手社員を農業部門のリーダーとして抜擢することで、社内のDX化を加速させる触媒としての効果も期待できる。

地域社会のインフラとしての役割と地産地消の推進

地域活性化の観点からも、建設会社の農業参入は大きな期待を寄せられている。
過疎化や高齢化が進む地域において、建設会社は単なる一企業を超えて、除雪や災害対応といった地域のインフラを支える公的な側面をもっている。
その企業が農業を通じて新たな雇用を生み出し、地域に根ざした産業を興すことは、地方創生の象徴的なモデルとなる。

苫東ファームが道内のクリスマスケーキ用イチゴの需要を支えている事実は、まさに地産地消の体現であり、物流コストの削減や鮮度の維持、ひいてはフードマイレージの低減にも寄与している。
建設業がもつ「形あるものを作り、守る」という使命感は、食の安全と安定供給を守る農業の使命と、本質的な部分で深く結びついている

まとめ

建設業が培ってきた高度な管理能力と施設構築の技術は、これからの近代農業を牽引する大きな原動力となる。
異業種参入には特有の難しさも伴うが、安定経営の基盤構築冬場の雇用確保地域への貢献という多角的なメリットを考えれば、極めて戦略的な選択肢の一つだ。

清水建設の子会社による冬イチゴの成功例は、技術と市場ニーズを的確に融合させることが、変化の激しい時代を生き抜く強力な武器になることを証明している。
建設業の未来は、現場で培った知恵をいかに新しい分野へと拡張していくかにかかっているのかもしれない。

 

 

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