TOTO、水素混燃による衛生陶器製造を始動:脱炭素経営への転換点と課題

グリーン水素で焼成工程を脱炭素化―TOTOが進める製造DXと強靭な生産体制

TOTO株式会社は、グループ会社であるTOTOサニテクノ小倉工場(北九州市小倉北区)において、本年1月8日より水素混燃技術を用いた衛生陶器の生産を開始した。同工場では敷地内に水素発生装置を新たに設置し、再生可能エネルギー由来の電力を用いて、二酸化炭素(CO2)を排出しない「グリーン水素」を生成する体制を整えた。

生成された水素は、衛生陶器の製造工程の中で最も多くのCO2を排出する「焼成工程」において燃料として投入される。これにより、従来の天然ガス使用量の削減を図り、年間で大幅なCO2排出削減を見込んでいる。

今回の取り組みは単なる環境対策にとどまらず、燃料調達を含めた工程全体において、外部環境の変化に左右されない強固な生産体制の構築を目指すものである。建設業界においてもサプライチェーン全体での脱炭素化が求められるなか、製造段階におけるこの先進的な事例は、経営視点からも多くの示唆を含んでいる。


水素を使って焼成される衛生陶器
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。

Q. 導入された設備の規模と水素の生成能力はどの程度か?

今回、水素混燃が導入されたのは、2022年に稼働を開始した断熱性能の高い「生産用ファイバー窯」1基である。この窯に対し、工場敷地内で生成したグリーン水素を供給し、都市ガスなどの既存燃料と混合して燃焼させる仕組みだ。

水素の発生量は1時間あたり100ノルマル(N)立方メートルに達する。また、同工場では2025年4月からグリーン水素の生成を開始しており、生産用窯だけでなく試験窯での利用も並行して行なわれている。

特筆すべきは、工場内に水素発生装置を収容する施設「Sui Station」を設け、工場見学者に対して水素利用の取り組みを可視化し、広報している点である。これは、環境技術を企業のブランド価値向上に直結させる経営戦略の一環とも読み取れる。

Q. 具体的なCO2削減効果と経営的なメリットは何か?

製造業、特にエネルギー多消費型の窯業において、燃料コストとCO2排出削減は経営上の大きな課題である。TOTOの試算によれば、今回の水素混燃導入によって、焼成工程で使用する天然ガスのうち2割を削減できるとしている。

これは、同社の「スコープ1(自社での直接排出)」における排出量の約75%を占める焼成工程において、年間140トン(全体の約7%相当)のCO2削減効果をもたらす計算となる。天然ガス価格の変動リスクを低減しつつ、炭素税などの将来的な環境コスト上昇に備える意味でも、この2割削減という数字は経営的に無視できないインパクトをもつ。

Q. 自治体や地域社会との連携はどうなっているのか?

このプロジェクトは、地域行政との連携モデルとしても注目される。1月28日、TOTOは北九州市から「北九州市低炭素水素認証制度」の第一号として認証を取得した。この制度は、市内で低炭素水素を製造・利用する事業者を支援し、地域全体での脱炭素化を推進するために設立されたものである。

北九州市という環境モデル都市において、地元企業であるTOTOがその第一号認証を受けたことは、官民が連携して地域産業の競争力を高める成功事例といえる。補助金や認証制度をうまく活用し、企業の社会的信用を高める手法は、建設業界の経営者にとっても参考になるはずだ。


見学者に水素利用の取り組みを説明
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。

Q. 技術的なハードルはクリアされているのか?

新しい技術を導入する際、経営者が最も懸念するのは「品質への影響」である。TOTOは2023年から同工場で実用化に向けた検証を重ねてきた。報道陣に公開された際、山崎政男執行役員衛陶生産本部長は、試験窯において原料の配合率や生産設備を変更することなく、水素100%での燃焼によって衛生陶器が問題なく焼成できることを確認したと述べている。

つまり、既存の生産設備や原材料レシピを大きく変更することなく、燃料の転換が可能であるという技術的裏付けが取れている点は重要だ。これは、設備投資を最小限に抑えつつ環境対応を進めたい中小製造業にとっても、勇気づけられる事例といえる。

Q. 実用化に向けた今後の経営課題は何か?

試験レベルでの成功と、量産ラインでの長期安定稼働は別物である。山崎本部長は、今後の課題として「生産用ファイバー窯の耐久性の確認」と「コストダウン」を挙げている。水素は燃焼特性が天然ガスとは異なるため、窯の耐火材やバーナーなどの設備寿命にどのような影響を与えるか、長期的なデータ収集が不可欠となる。

また、水素の製造・調達コストは現状では割高であり、これをいかに低減し経済合理性を確保するかが普及の鍵を握る。同社は今後、混燃比率のさらなる向上を目指すとともに、海外を含めた他の生産拠点への展開も検討していく方針を示している。

まとめ

TOTO小倉工場での水素混燃による衛生陶器生産は、製造業における脱炭素化の技術的到達点を示すとともに、コストや耐久性といった残された課題も浮き彫りにした。しかし、自社敷地内でエネルギーを創出し、主要工程の燃料を代替しようとする姿勢は、外部環境の変化に強い経営体質の構築につながる。建設業界全体がサプライチェーンの見直しを迫られるなか、こうした先行事例から学べる経営のヒントは多いといえるだろう。

 

 

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