遠隔操作AFが実用段階へ到達、舗装現場の完全自動化へ向けた挑戦

舗装施工の自動化が新段階へ―AF遠隔操作を実装

道路舗装業界において、施工の自動化技術が新たな局面を迎えた。世紀東急工業は、アスファルトフィニッシャー(AF)の自動化に必須となる遠隔操作および自動操舵技術を実用レベルで実装することに成功したのである。同社は国土交通省関東地方整備局長野国道事務所が発注した「R6長野出張所管内舗装修繕工事」において、この新技術を導入した。

特筆すべきは、現場から約140kmも離れた栃木県の技術研究所から遠隔操作を行ない延長約320mの施工を完遂した点である。この実証において、通常の舗装工事と同等の施工速度を維持しつつ、一般車両が通行する環境下でも安全性を確保し、工期の遅延もなく工事を完了させた。これはi-Construction 2.0の柱である「施工のオートメーション化」を具現化するものであり、現場の省力化や生産性向上、さらには働き方改革を推進する重要な一歩となる。永渕克己常務執行役員技術本部長が「道路施工現場の肝であり、舗設作業の核となる」と語るAFの進化は、建設業界が抱える諸課題を解決する鍵となりそうだ。

今回の技術革新は、実際の現場業務や経営環境にどのような影響をもたらすのだろうか。公表された情報を基に、多くの建設業従事者が抱くであろう疑問点について解説していく。


運転席が無人の状態で施工
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。

Q1. 具体的にどのような操作が自動化・遠隔化されたのか?

従来、AFの操作は走行制御や合材供給を行なうオペレーターと、舗設の厚さや幅を調整するアジャストマンの2名体制で行なわれてきた。今回実装された技術では、オペレーターが担っていた役割の大部分が遠隔化および自動化されている。

具体的には、前後進やステアリング操作、速度調整といった走行に関わる操作に加え、ホッパーの開閉やバーフィーダの操作、さらにはダンプの誘導といった作業までもが遠隔操作の対象となった。AFにはカメラと通信・制御装置が搭載されており、現場の映像は携帯電話回線を通じて遠隔操作室へ送信される。オペレーターはこの映像を見ながら、離れた場所から的確な操作を行なう仕組みである。

また、自動操舵システムにおいては、AFに取り付けられたカメラが現場の型枠をAI(人工知能)で認識し、走行ルートを計算する。これにより、3次元データを事前に用意せずとも、自動でステアリング操作を行なうことが可能となった。これは事前のデータ準備工数を削減できるという点でも大きな進歩であるといえる。

Q2. 遠隔操作による施工品質や安全性に問題はないのか?

遠隔操作において最も懸念されるのは、通信の遅延や状況把握の難しさによる品質低下や事故の発生である。しかし、今回の実証工事においては、通常の舗装工事と比較しても遜色のない速度で施工が行なわれたと報告されている。

工区のほぼ全てで終日この技術が適用されたが、一般車両が近接して走行する実際の道路環境においても、十分な安全性が確保された。施工の遅延も発生しなかったことから、実用レベルでの運用に耐えうる技術であることが証明された形だ。映像伝送技術と制御技術の高度化により、オペレーターは現場にいるのと変わらない感覚で、あるいはAIの支援を受けながらより正確に、重機をコントロールできていると考えられる。

Q3. この技術は「働き方改革」や「人材不足」にどう貢献するのか?

建設業界、特に舗装の現場は、夏場の猛暑や冬の厳寒、アスファルトの高熱や粉塵など、過酷な環境下での作業を余儀なくされることが多い。オペレーター業務を遠隔化することで、作業員は空調の効いた快適なオフィスから重機を操作できるようになる。これは労働環境の劇的な改善であり、働き方改革の推進に直結する。

また、省人化が進むことで、少人数での施工が可能となり、深刻化する人手不足への対策となる。さらに、高齢の熟練オペレーターが現場に出向くことなく技術を提供できたり、外国人材が活躍しやすくなったりと、多様な人材の活用にも道が開ける。
遠隔操作技術は、物理的な移動時間を削減できるため、一人のオペレーターが複数の現場を掛け持ちで担当するといった運用も将来的には可能になるかもしれない。これは生産性向上という観点からも極めて大きなメリットである。


約140㌔離れた技術研究所から遠隔操作
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。

Q4. 「技能伝承」という観点ではどのようなメリットがあるか?

熟練工の高齢化と引退に伴う技術の継承は、業界全体の喫緊の課題である。今回の技術は、この技能伝承にも寄与すると期待されている。
オペレーターの作業がデジタル化・映像化されることで、熟練者の操作技術をデータとして記録・分析することが容易になるからだ。

また、遠隔操作室であれば、ベテランと若手が隣り合ってモニターを見ながら指導を行なうことも、現場の騒音に邪魔されることなく可能になるだろう。AIによる自動操舵が補助となることで、経験の浅い若手でも一定レベルの品質を担保しやすくなり、育成期間の短縮にもつながるはずだ。

Q5. 今後の技術開発の展望は? 完全無人化は実現するのか?

世紀東急工業は、今回の成果に留まらず、さらなる自動化に向けた開発を進めている。現在は、合材をダンプトラックからAFへ搬入する箇所の自動化技術の開発に取り組んでいるという。これが実現すれば、舗装工事における主要なプロセスの多くが自動化されることになる。

同社は今年中にも現道での施工を予定しており、技術の完成度を高めていく方針だ。永渕常務執行役員は「将来的には、自宅などどこからでも舗設作業できることを目指す」と展望を語っている。在宅勤務で道路工事を行なうという、かつては想像もできなかった働き方が現実のものとなろうとしているのである。

まとめ

アスファルトフィニッシャーの遠隔操作・自動操舵技術の実用化は、単なる機械の進化に留まらない。それは、過酷な現場作業からの解放、安全性と生産性の向上、そして多様な人材が活躍できる環境の創出という、建設業界の構造改革そのものである。

i-Construction 2.0が掲げる「施工のオートメーション化」は、着実に現実のものとなりつつある。中小規模の現場への普及にはまだ時間を要するかもしれないが、この流れは不可逆であり、いずれ業界標準となっていく可能性が高いといえるだろう。

 

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