3D LiDARで土留め壁を常時監視―安藤ハザマの新安全技術とは
安藤ハザマは、建設現場における安全性と生産性の向上を目的として、3D LiDAR(ライダー)センサーを活用した「土留壁変状監視システム」を開発した。このシステムは、複数の3D LiDARセンサーを併用することで、仮設物などの影になりやすい死角を相互に補完し合いながら、土留め壁の全面を点群データとして計測するものである。
特筆すべきは、非接触で24時間の連続監視が可能となる点であり、これにより従来の手法と比較して監視業務の負担が大幅に軽減される。また、システムが設定値以上の変状を検知した際には即座に警報を発する仕組みとなっており、作業員のヒューマンエラーによる見落としを防ぐ効果も期待される。同社は今後、土留め壁の内側に杭などの既設構造物が存在する複雑な現場への導入を進め、さらなる機能改良を目指すとしている。
ここからは、建設現場の安全管理において重要度が増しているこの新技術について、現場監督や経営者が抱くであろう疑問に答える形で解説を加える。

3DLiDAR計測イメージ(報道発表資料から)
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
Q. 従来の土留め壁監視にはどのような課題があったのか?
多くの現場関係者が実感している通り、従来の土留め壁の変状監視は、変位計や切梁反力計といった接触型のセンサーによる計測と、作業員による目視巡回(巡視)が主流である。しかし、これらの手法には明確な限界が存在した。まず、従来のセンサーによる検知は、あくまでセンサーが設置された「点」あるいは「特定の範囲」に限られるため、センサーのない箇所で発生した異変を即座に捉えることが困難である。
また、現場全体を面的に確認できる巡視は非常に有効な手段だが、その頻度は通常1日に数回程度に限られる。24時間体制で刻一刻と変化する地盤の状況を、数回の巡視だけで完全に把握することは現実的ではない。さらに、土留め壁の崩壊や予期せぬ大きな変状を確実に未然防止しようとすれば、センサーの設置数を大幅に増やすか、巡視の頻度を極端に上げる必要がある。これは現場の作業員にとって甚大な手間となり、業務負担の増大に直結していたのが実情だ。
Q. 3D LiDARを用いた新システムは、具体的にどう課題を解決するのか?
今回開発されたシステム最大の特徴は、「点」ではなく「面」での監視を実現したことにある。3D LiDARは対象物にレーザーを照射し、その反射を測定することで対象の形状を正確に把握するセンサーだ。本システムでは、複数の3D LiDARを用いることで土留め壁を面的かつ連続的に点群計測する。これにより、従来のポイント式センサーでは捉えきれなかった壁面全体の微細な変化を逃さず監視することが可能となった。
また、複数のセンサーを組み合わせることで、複雑な形状の仮設物や障害物がある場合でも、死角を補い合いながら計測できる。これは、入り組んだ現場環境においても監視の精度を落とさないための重要な工夫である。計測は非接触で行なわれるため、設置やメンテナンスの手間も最小限に抑えられ、24時間休むことなく現場を見守り続けることが可能だ。
Q. 現場の生産性や働き方にはどのような影響があるか?
このシステムの導入は、現場の「安全性」と「生産性」の双方に大きなメリットをもたらす。まず安全性に関しては、設定値以上の変状が発生した際に即座に警報で知らせる機能により、事故の予兆を早期に発見できる。これは、作業員の目視確認に頼るがゆえに発生しがちな「見落とし」や「判断ミス」といったヒューマンエラーを防止する上で極めて有効だ。
生産性の観点からは、監視業務の自動化による省人化が大きい。これまで巡視や計測に割かれていた人的リソースを、他の施工管理業務や安全指導に振り向けることができるため、現場全体の業務効率が向上する。また、危険な箇所に人が立ち入って確認する頻度を減らせるため、労働災害のリスク低減にも直結するだろう。安藤ハザマが目指す「現場の安全と作業の生産性向上」は、まさに人手不足が叫ばれる建設業界において急務の課題であり、本システムはその解決策の一つとして期待される。

計測された点群(報道発表資料から)
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
Q. 今後の展開と導入に向いている現場は?
この技術は、特に土留め壁の内側に杭などの既設構造物が存在する現場など、従来の監視手法では死角が生じやすい環境での導入が想定されている。都市部の狭小地や、複雑な地下構造をもつ現場などでは、その真価を遺憾なく発揮するはずだ。同社は今後もシステムの機能をさらに改良していく方針を示しており、より多様な現場環境に対応できるよう進化していくと考えられる。
建設業において、テクノロジーの活用はもはや選択肢ではなく必須の要件となりつつある。今回のような3D LiDARを活用した監視システムの登場は、現場の安全管理基準を一段階引き上げる可能性を秘めている。経営者や現場監督は、こうした新技術の動向を常に注視し、自社の現場にどのように適用できるかを検討していく姿勢が求められる。それは単なる効率化だけでなく、働く人々の命を守るための投資であることを忘れてはならない。
まとめ
安藤ハザマが開発した3D LiDARによる土留め壁変状監視システムは、従来の点計測や目視巡回が抱えていた課題を払拭し、面的かつ24時間の連続監視を可能にした画期的な技術だ。非接触での計測と自動警報システムにより、現場の負担軽減とヒューマンエラー防止を同時に実現する本技術は、今後の建設現場における安全管理の新たなスタンダードとなる可能性を秘めている。
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