高砂熱学工業、YKK、日本航空(JAL)など7者が連携し、沖縄県で水揚げされた魚を冷凍せずに鮮度を保ち流通させる仕組みを構築しました。このプロジェクトには国頭漁業協同組合なども参画しています。
高砂熱学工業が持つ空調設備向けの製氷知見を生かした独自の保冷技術「シャーベットアイス」と、YKKの防水ファスナーを採用した梱包材を組み合わせることで水漏れを防ぎ、航空機での一般貨物との混載を実現しました。輸送時間の短縮と鮮度の維持を両立させ、地方の鮮魚が適正価格で流通する基盤を整え、水産業の持続的な発展に貢献する取り組みとして注目を集めています。
■よくある質問1:空調設備の製氷知見は水産業でどう応用されているのでしょうか?
高砂熱学工業が提供する独自技術「シャーベットアイス」は、空調設備の蓄熱技術などに用いられる製氷の知見から生まれました。通常の氷とは異なり、直径0.05ミリという極めて細かく滑らかな粒状の氷であることが特徴です。この微細な氷を使用することで、輸送中に魚の表面を傷つけることなく全体を包み込み、素早く均一に冷却することが可能になります。
さらに、魚の細胞が凍結しないマイナス1度という温度帯を維持しつつ、塩分濃度を低く抑えた製氷ができる点も強みです。本技術は約40年前から展開されてきましたが、水産業向けとしては2018年に事業化されました。これまでに国頭漁協をはじめ全国9カ所の漁協や水産加工会社に専用の製造機を納入した実績を持っています。建設業界の温度管理技術が、他産業の課題解決に直結している点は、自社技術の横展開を模索する企業にとって非常に示唆に富む事例だといえます。

シャーベットアイスで空輸した鮮魚と松平氏(2月27日午後、東京・羽田空港で)
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
■よくある質問2:航空機を利用した鮮魚輸送の従来の課題と、その解決策は何ですか?
従来の氷を使用する水産物の航空輸送には水漏れの危険という大きなハードルがありました。機内や貨物室での水漏れは機体や他の貨物に深刻な影響を及ぼすため、事前の特別な手続きが必須でした。そのため利用のハードルが高く、同社における実績も年間10件程度にとどまっていたのが実情です。
これを根本から解決したのが、YKKが開発した高性能の防水ファスナーを活用した新梱包材です。水密性に優れた袋の中に鮮魚とシャーベットアイスを密閉することで、水漏れのリスクを極限まで低減させることに成功しました。これにより、特別な手続きを要する貨物としてではなく、一般貨物と混載しての空輸が可能になりました。実際に2025年10月から国内やバンコクへの輸送試験を実施し改良を重ねてきました。本年2月27日に羽田空港で公開された到着現場では、当日朝に沖縄県から発送された鮮魚が、みずみずしい状態を保ったまま東京に到着したことが確認されています。
■よくある質問3:本プロジェクトは環境面や現場の働き方にどのような影響を与えますか?
本件は、環境配慮と現場の労働環境改善の双方に恩恵をもたらすと考えられています。環境面では、将来的に袋を収納する外装を従来の発泡スチロール製の箱から、段ボールなどの環境負荷の低い素材へ切り替える計画が進められています。これが実現すれば、資材の製造工程や廃棄時の二酸化炭素(CO2)排出量削減に大きく寄与することになります。
また、現場の働き方や経済的な好影響についてです。沖縄県国頭漁協の村田佳久組合長が「魚の品質を正しく伝える取り組みだ。漁師として現場に立つ経験から、現場の努力が報われる社会づくりに役立つと考えている」と語るように、高品質なまま都市部へ輸送できる仕組みは生産者の利益向上に直結します。高砂熱学工業の担当部長も「水産業の方々が命懸けで取った魚を適正価格で販売できるようにしたい」と言及しています。現場の人々の努力が適正に評価され、正当な対価として還元される仕組みの構築は、建設業界の現場における処遇改善とも共通する重要なテーマです。

沖縄から羽田空港に到着した鮮魚のコンテナ(2月27日午後、東京・羽田空港で)
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
まとめ
本記事では、空調設備の製氷技術と高性能防水ファスナーを活用した、鮮魚の高鮮度空輸プロジェクトについて解説しました。自社の保有する専門技術を異分野へ展開し、複数の企業が持つ強みを掛け合わせることで、旧来の業界課題を打破する新しいビジネスモデルが生まれています。このような柔軟な発想と企業間連携の姿勢は、建設業や設備工事業を営む皆様の事業展開にとっても、大きなヒントになるのではないでしょうか。
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