日立建機・土浦工場の大改革とは?製造現場の自動化が進む理由
日立建機は、主力の油圧ショベルを製造する土浦工場(茨城県土浦市)の大規模な工場改革を2031年度に完了させる計画を明らかにしました。同社は2018年から事業規模200億円強の大規模再編を進めており、国内7拠点のうちすでに6拠点で改革を終えています。
最後のピースとなるマザー拠点の土浦工場では、溶接、塗装、組み立て、構内物流の自動化に加え、AIを活用した熟練工の動作分析などを導入しています。これにより、一連の取り組みを通じて年間約40億円のコストメリットが生まれる見通しであると説明しています。
具体的な進捗として、金属加工工程でのロボット適用率(溶接体積ベース)は86%に達し、改革前の2017年度から17ポイント上昇しました。塗装工程においては機械化の範囲を拡大させ、2029年度の完成を目指し、塗料使用量を2025年度比で54%削減する計画です。さらに、熟練スタッフが担う上部・下部ユニットのドッキング工程にも人と機械が協業する専用設備を導入し、現場の声も反映させた新ラインを構築しています。
ここからは、本事例に関連して建設業や現場仕事に従事する皆様からよく寄せられる疑問について、一問一答形式で詳しく解説します。

組み立てラインを紹介する伊藤課長
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。
Q1. 日立建機のような大企業の工場改革は、現場仕事が中心の中小建設業者にどのような学びを与えますか?
大企業の工場改革は、建設業界全体のサプライチェーン効率化に直結し、将来的には高品質な重機が安定した価格と納期で現場に供給されることにつながります。また、中小企業にとっても大きな経営上の学びが存在します。今回の改革における重要なポイントは、単に最新鋭のロボットを導入しただけでなく、数百人の組み立てスタッフを束ねる課長をはじめ、現場の作業員を新ラインの検討メンバーに加えている点です。
中小の現場においても、新しい工具やITツールを導入する際、実際にそれを使用する職人や現場監督の意見を事前に反映させることが、最も確実な生産性向上への近道となります。現場の声を無視したトップダウンの導入は失敗しやすいため、現場スタッフを主役とした協働の姿勢は規模を問わず不可欠です。
Q2. AIやロボットの導入は多額の予算が必要に感じます。中小企業はどのようにDXや自動化を進めるべきでしょうか?
日立建機の投資額は200億円強という巨額なものですが、中小企業が初めから同規模の投資を行なう必要はありません。重要なのは、現在のアナログな作業プロセスのうち、どこに最も無駄やコストが発生しているかを的確に把握することです。日立建機はAIで「熟練工の動作分析」を進めていますが、これは属人化していた技術をデータ化し、若手への効率的な技術継承に役立てる取り組みです。
中小の現場でも、まずはスマートフォンを活用した現場写真の共有アプリや、LINEを活用した連絡網の整備、手軽なクラウド型見積管理ソフトの導入など、少額から始められるITツールの活用が有効です。また、作業工程を見直す「労務管理」の視点をもつだけでも立派な業務改善です。身近なデジタル化から着手し、浮いた時間を安全対策や付加価値の高い作業に振り分けることがコスト最適化の第一歩となります。
Q3. 自動化や人と機械の協業が進むことで、現場の職人や作業員の仕事は奪われてしまうのでしょうか?
結論として、機械が人間の仕事を完全に奪うのではなく、人間の役割が「より高度で安全な管理・判断業務」へシフトしていくと考えられます。日立建機の組み立て工程における最重要工程でも、人の手を完全に排除するのではなく「人と機械の協業」が選ばれました。
建設現場は工場のように環境が常に一定ではないため、全作業のロボット化は極めて困難です。天候や周辺環境の変化に応じた臨機応変な対応は、依然として熟練した職人の勘に依存します。機械は重筋作業の軽減や定型処理を担い、人間は安全管理や品質の最終チェックといった付加価値の高い業務に専念するようになります。
若年層の採用定着や、女性の現場進出を後押しするうえでも、こうした人と機械の協働は大きなカギを握るといえます。建設業界における人手不足は深刻ですが、機械化によって労働環境が改善されれば、体力的な問題で就業が難しかった人材の活躍も見込めるようになるでしょう。

上下ユニットがドッキング。熟練スタッフの技が光る
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。
まとめ
日立建機の土浦工場における再編は、単なるコスト削減にとどまらず、現場の声を反映させながら人と機械の最適な協働体制を構築する先進的な試みです。
建設業界全体が直面する慢性的な人手不足や高齢化といった課題を解決するためには、こうした自動化やIT活用の波を恐れず、自社の規模や現場の状況に合わせて柔軟に取り入れていく姿勢が求められるのかもしれません。
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