【世界遺産目前】代々木競技場が示す“50年後も勝てる建設会社”の条件とは?

代々木競技場の世界遺産へ―名建築の保全が示す施工と経営の学び

東京都渋谷区に位置する国立代々木競技場世界遺産登録に向けた機運が高まっている。同競技場において23日、建築家の隈研吾氏が代表理事を務める推進協議会により、「施工と保全」をテーマにした第3回シンポジウムが開催され、約850人が参加した。同競技場は1964年の東京五輪に向けて建設され、2021年の大会でも使用された名建築である。

意匠設計は丹下健三、構造設計は坪井善勝が担当し、施工は清水建設が第一体育館、大林組が第二体育館を担った。シンポジウム冒頭では、日本建設業連合会の宮本洋一会長が「日本経済と社会の加速度的発展を象徴する建物だ」と述べた。さらに、海外有識者による大規模空間構造の保全に関する講演や、清水建設、大林組、三機工業の担当者によるパネルディスカッション、日本オリンピック委員会の三屋裕子副会長らと隈研吾氏による鼎談も実施された。

ここからは、シンポジウムの内容を踏まえ、よくある質問を参照しつつ、経営と学びのヒントを考察する。


多くの参加者が講演に聞き入った
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。

なぜ今、歴史的建造物において施工と保全が重要視される
のか?

高度経済成長期に建設された大規模施設は現在、一斉に老朽化の時期を迎えている。国立代々木競技場も例外ではないが、適切な維持管理によって現役の施設として稼働を続けている。

有識者が指摘したように、大規模空間構造の保全とアーカイブの構築は学術的にも極めて重要である。建設業界にとって、過去の卓越した施工技術をいかに保全し次代へ引き継ぐかという課題は、今後の重要な柱となる。既存ストックの長寿命化は持続可能な社会の実現に向けた必須の要請であり、保全技術の高度化は新たなビジネスチャンスを生み出す源泉となる。

大手ゼネコンが手掛けた過去の巨大プロジェクトから、中小の建設業者はどのような知見を得られるのか?

両体育館の建設は、当時の最先端技術を結集したものであった。今回登壇した清水建設、大林組、三機工業の技術者たちは、図面や施工記録に基づく徹底したデータ管理の重要性を共有している。中小企業においても、日々の現場における施工記録のアーカイブ化や正確な情報の蓄積は、後年の修繕やトラブル対応において絶大な威力を発揮する。

また、丹下健三と坪井善勝の設計が見事に融合したように、設計、施工、設備担当者が緊密に連携する体制構築はプロジェクト成功の鍵となる。こうした組織間連携のノウハウは、そのまま現代の現場マネジメントや経営戦略に応用できる重要なヒントとなるだろう。

海外の大学教授など、アカデミックな視点を現場の経営にどう生かすべきか?

今回のシンポジウムでは、カルロス・ラザロ国際シェル空間構造学会会長をはじめとする海外の有識者や、国内の大学講師らが登壇し、専門的な見地から意見を交わした。現場の最前線に立つ建設業者にとって、学術的な研究結果は実務から乖離していると感じられるかもしれない。しかし、最新の構造力学や材料工学の知見は、現場の安全基準の向上や工法の最適化に直結する。

経営者はこうした学術的知見を積極的に収集し、自社の技術力向上に還元する姿勢が求められる。産学連携の視点をもつことで、経験則に頼るだけでなく科学的根拠に基づいた合理的な施工管理が可能となり、企業の競争力強化につながるだろう。


国立代々木競技場第一体育館
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。

歴史的価値のある建築物に携わる誇りを、いかにして人材育成や定着に結びつけるか?

日建連の宮本会長が述べたように、同競技場は次世代へ価値を育て続ける生きた遺産としての側面をもつ。三屋裕子氏や小塚崇彦氏らアスリートの視点も交えた鼎談は、施設が利用者に与える感動や社会的意義を浮き彫りにした。

建設業界は慢性的な人材不足にあるが、自らが手掛ける仕事が社会のインフラを支え後世に残る遺産となる可能性を示すことは、若手技術者や職人の意欲向上に直結する。自社の業務がもつ社会的価値を再定義し社内教育の場で発信し続けることは、従業員の帰属意識を高め離職防止を図るうえで極めて有効な手法となるだろう。

まとめ

国立代々木競技場の世界遺産登録に向けた取り組みは、文化財保護の枠を超え、建設業界全体に技術の継承新たな価値の創造という命題を突きつけている。半世紀前の設計と施工技術を再評価し、現代の保全へと昇華させる過程には、現場の効率化や人材育成につながる無数のヒントが隠されている。

過去の偉業から学び、現代の経営課題の解決に結びつける柔軟な思考こそが、建設企業に求められる資質といえるだろう。歴史的建造物が発する教えを日々の業務に生かすことが、業界全体のさらなる発展へとつながっていくにちがいない。

 

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