高輪ゲートウェイシティ開業―国内最大級開発が建設業にもたらす新戦略
JR東日本が港区を中心に整備を進めてきた「TAKANAWA GATEWAY CITY」が、3月28日にグランドオープンを迎える。2020年開業の高輪ゲートウェイ駅を皮切りに、車両基地跡地の約7万4000平方メートルを開発してきた総延べ約84万5000平方メートルに及ぶ国内最大級のプロジェクトである。本計画は「100年先の心豊かな暮らしのための実験場」と位置付けられ、IC乗車カード「Suica」等を用いた先進的な取り組みを推進する。
また、列車位置情報とセンサーで取得する街の情報を融合し、ビッグデータを処理・蓄積する仕組みも整えられた。都心の「ゲート」となるこの要衝には、オフィスや飲食店、住居が入る3つのエリアが同日開業する。「ニュウマン高輪」も系列最大規模の商業施設となり、クリニック入居などで近隣住民の利用も見込む。同社は「入場料なしの施設も多い。公園のような存在の街になれば」と展望を語る。
このように華々しいオープンを迎える一大プロジェクトだが、我々のような建設業、特に現場仕事や中小企業にとって、どのような経営的意味をもつのか。ここからは現場から寄せられる「よくある質問」を参照しつつ、今回の開発が業界に与える波及効果や、今後の経営戦略に求められる視点を解説する。

新規開業のMoN Takanawaとレジデンス棟(奥)
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
超大型の開発プロジェクトは大手ゼネコンの仕事であり、中小企業や現場の職人には直接的な関係がないのではないか?
開発を元請けとして牽引するのは大手ゼネコンが中心となる。しかし、建物の竣工がすべてではない。巨大施設が稼働を開始すれば、周辺インフラの整備、テナント入退去に伴う内装工事、経年劣化に対応する修繕工事といった二次的な需要が恒常的に発生する。人の流れが変わることで隣接エリアの再開発需要も高まる。
中小企業や専門工事会社にとって、これら波及効果による周辺地域の案件は大きなビジネスチャンスとなる。さらに、大規模開発で採用された最先端の工法や安全管理手法が今後の業界標準となる可能性も高く、経営戦略の観点からも大手ディベロッパーの動向注視が欠かせない。
「実験場」としてどのような新技術が導入されているのか?また、それは現場仕事にどう影響するのか?
今回の開発では、街に張り巡らされたセンサー網から取得する情報と鉄道運行データを掛け合わせ、ビッグデータとして処理する仕組みが整備されている。建設業への影響として、建物自体が高度なIT機器の集合体へと進化していく事実が見逃せない。
施工にあたっては複雑な配線計画やセンサー機器の確実な設置など、システム連動を見据えた緻密な作業が求められる。今後スマートビルの建設が増加する中で、現場監督や職人には従来の建築知識だけでなく、ネットワーク通信の基礎知識が不可欠になる。新技術に適応できる人材育成や、ITツールを活用した社内教育の充実が中小建設業の経営における重要課題となる。
人手不足が深刻だが、こうした大規模開発が続く状況で、中小企業はどのように人材を確保し現場を回すべきか?
巨大現場に多くの職人が動員され、小規模現場での人員確保がいっそう難しくなる懸念がある。中小企業がこの状況を乗り切るためには、IT活用やDX推進による生産性向上が急務である。進捗管理や図面共有にタブレットやクラウドシステムを活用して事務負担を軽減し、少ない人数でも効率的かつ安全に複数現場を管理する体制の構築が必要不可欠だ。
また、最新のデジタルツールを導入して業務改善を進めること自体が、若者にとって働きやすい魅力的な職場としてのアピールにつながり、結果的に人材の採用や長期間の定着に寄与する。巨大開発の裏側で求められるのは、現場レベルでの着実なIT化推進である。

ニュウマン高輪「MIMURE」には22の飲食店舗などがオープン(2枚とも25日撮影)
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
まとめ
高輪ゲートウェイシティの全面開業は、単なる新しい街の誕生を超え、建設業界全体に次の時代の標準を提示する重要な転換点となる。ビッグデータを活用したシステム構築や、地域社会と調和する空間づくりなど、ここから発信される新しい概念はやがて全国の現場へ波及していくだろう。
最新の技術動向を的確に捉え、自社の強みと結びつけることが中小規模の建設業者には不可欠である。激変する環境下で安定した経営を長く続けるため、ITツール活用による業務効率化や、新技術に対応できる人材育成に継続して取り組む姿勢が問われるのかもしれない。
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