常総水害から10年、建設業が担う地域防災の今とこれから

2015年9月に関東・東北地方を襲った豪雨は、鬼怒川の堤防を決壊させ、茨城県常総市に甚大な被害をもたらしました。この災害から10年という節目に、国土交通省関東地方整備局や茨城県などが式典を開催し、水害の教訓を次世代へ継承する誓いを新たにしました。当時、決壊した堤防は、国土交通省からの要請を受けた日本建設業連合会(日建連)の協力のもと、鹿島建設と大成建設がわずか2週間で復旧工事を完了させるなど、建設業界が地域のインフラ復旧に重要な役割を果たしました。この式典では、復興の軌跡を共有するとともに、地域防災力を向上させるための継続的な取り組みが宣言され、建設業が地域社会の安全・安心に不可欠な存在であることが改めて確認されました。本記事では、この事例を基に、建設業が災害時に果たす役割と、平時から備えるべき防災対策について、よくある質問を交えながら詳しく解説します。

※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしました。

Q1. 災害発生時、建設業には具体的にどのような役割が期待されますか?

緊急復旧工事の担い手として
大規模な自然災害が発生した際、建設業が担う最も重要な役割は、社会インフラの迅速な復旧です。常総水害の事例では、鬼怒川の堤防が決壊し、約4000ヘクタールが浸水するという危機的な状況下で、国土交通省は災害協定に基づき日建連に対応を要請しました。これを受け、大手ゼネコンが被災直後から現場に入り、わずか2週間で堤防の応急復旧工事を完了させたことは、建設業の高い技術力と組織力を示す象徴的な出来事です。道路、橋梁、堤防、ライフライン(水道、ガス、電気)といったインフラは、住民の生命と生活、そして経済活動の基盤であり、その機能が停止すれば社会全体が麻痺してしまいます。一刻も早い復旧は、被災地の孤立を防ぎ、救助活動や支援物資の輸送路を確保するために不可欠です。建設業者は、こうした緊急性の高い復旧工事を安全かつ迅速に遂行する専門家集団として、社会から大きな期待を寄せられています。

地域社会の安全確保
災害発生直後、建設業者は重機や資材を活用して、二次災害の防止や救助活動の支援にも貢献します。例えば、土砂崩れが発生した現場では、さらなる崩落を防ぐための応急対策や、がれきの撤去による救出路の確保が急務となります。また、倒壊の危険がある建物の解体や、浸水地域からの排水作業など、専門的な知識と機材がなければ対応できない業務が数多く存在します。平常時から地域社会に根差し、地理やインフラの状況を熟知している地元の建設業者は、こうした初動対応において極めて重要な役割を果たします。地域住民の安全を守る「地域の守り手」としての存在価値は、災害時にこそ最大限に発揮されるのです。

 

Q2. 災害に備え、建設会社として平時から何を準備すべきですか?

BCP(事業継続計画)の策定と訓練
災害はいつ、どこで発生するか予測できません。そのため、有事を想定したBCP(事業継続計画)の策定が不可欠です。BCPとは、災害などの緊急事態において、事業への損害を最小限に抑え、中核となる事業を継続または早期復旧させるための方針や手順をまとめた計画書を指します。建設業においては、従業員の安否確認システムの導入、本社や営業所が被災した場合の代替拠点の確保、保有する重機や資材の管理・点検、そして災害協定に基づく出動要請に即応できる体制の構築などが含まれます。計画を策定するだけでなく、定期的に防災訓練を実施し、計画の実効性を検証・改善し続けることが重要です。これにより、いざという時に組織として迅速かつ的確に行動できるようになります。

地域や行政との連携強化
常総水害からの復旧・復興は、国、県、沿川7市町が連携して進める「鬼怒川緊急対策プロジェクト」のように、官民が一体となった取り組みによって成し遂げられました。建設会社も、平時から地方自治体や地域の防災組織と密に連携し、災害協定を締結しておくことが求められます。協定を通じて、災害時の役割分担や連絡体制を明確にしておけば、スムーズな初動対応が可能となります。また、地域の防災訓練や防災イベントへ積極的に参加することも有効です。これにより、行政や地域住民との顔の見える関係を構築し、相互の信頼を深めることができます。関東地方整備局が外国人向けに「マイ・タイムライン」講習会を開催しているように、多様な住民を対象とした防災意識の向上に貢献することも、地域に根差す企業としての重要な社会的責任です。

常総市の街並み

 

Q3. 従業員の防災意識を高めるためには、どのような取り組みが有効ですか?

防災教育と資格取得の奨励
従業員一人ひとりの防災意識と知識を高めることは、組織全体の災害対応能力を向上させる上で不可欠です。常総水害をきっかけに防災士の資格を取得した芸人の赤プルさんのように、災害を自分事として捉え、専門知識を学ぶことは非常に有意義です。企業として、防災士や自主防災組織リーダーといった資格の取得を奨励し、取得費用を補助する制度を設けることも有効な手段です。また、社内研修として、ハザードマップを用いた自社の立地リスクの確認、マイ・タイムライン(個人の防災行動計画)の作成支援、救命講習などを定期的に実施することが推奨されます。こうした教育を通じて、従業員はまず自身の安全を確保する方法を学び、その上で会社や地域のために何ができるかを考える力を養うことができます。

情報共有とコミュニケーションの活性化
災害時には、正確な情報を迅速に共有することが、従業員の安全確保と事業継続の鍵となります。そのため、緊急時の連絡網を整備し、定期的にテストしておくことが重要です。安否確認システムやビジネスチャットツールなどを活用し、複数の連絡手段を確保しておくと良いでしょう。また、社内報や朝礼などを通じて、会社の防災方針やBCPの内容を繰り返し周知し、従業員の理解を深めることも大切です。常総市の式典で「防災の取り組みに終わりはない。総力を挙げて次の世代に伝えていく」と述べられたように、防災は継続的な取り組みが求められます。経営層から現場の作業員まで、全社的に防災に関するコミュニケーションを活性化させ、災害に強い企業文化を醸成していくことが、最終的に地域社会全体のレジリエンス(回復力)向上に繋がります。

まとめ

常総水害からの10年という歩みは、建設業が単なるインフラの構築者ではなく、地域社会の安全を守る上で不可欠なパートナーであることを示しています。災害発生時の迅速な復旧活動はもちろんのこと、平時からのBCP策定、行政との連携、そして従業員の防災教育といった地道な備えが、企業の存続と地域への貢献を両立させる鍵となります。災害の教訓を風化させることなく、防災・減災への取り組みを継続的に進めていくことが、建設業界に課せられた重要な使命といえるでしょう。

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