公共建築の常識が変わる!建設現場に求められる木造校舎JIS改正への対応と新工法導入

文部科学省は、木造校舎の構造設計標準(JIS A 3301)の改正内容を固めた。この改正は、新しい時代の学校施設のあり方や建築基準関係法令の改正、技術開発の進展に対応するため、2027年12月の公示・適用開始を目指し進められている。改正の柱は計7項目に上り、木造建築を取り巻く現状と課題への対応を企図している。具体的な改正項目には、自然採光を有効利用するためのハイサイドライト(張弦トラス)の計画導入や、快適な温熱環境とNearly ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)達成に向けた屋上への太陽光発電設備設置が可能な構造計画の採用が含まれる。

さらに、空間の自由度を確保するため、高性能なCLT(直交集成板)耐力壁を新たに設定する。背景には、近年の公立小中学校等における木造校舎の割合が15~20%弱で停滞しており、大規模木造建築の企画・設計ができる技術者が不足しているという課題がある。今回のJIS改正は、木造校舎の建設に取り組みやすい環境を整備し、木造ならではの魅力ある空間を実現することを目的とする。現場においては、金物工法などを活用した合理的な構造によるコスト縮減や工期短縮、そして耐久性や維持管理の容易性に配慮した材料を用いた長寿命化が強く意識されており、現場の施工技術や段取りに大きな影響を与えかねない。

※画像は建設通信新聞さまからお借りしました。

木造校舎の建設環境整備と改正の背景

木造校舎の建設を推進する上で、現状では大規模木造建築物を計画・設計できる技術者が少ないことが大きな障壁となっている。文部科学省が学識者や設計事務所などで構成する有識者検討会や作業部会を設置し、報告書をまとめたのは、こうした課題に対応し、木造建築技術の進展を踏まえた規格の必要性が高まったためである。改正の根本的な目的は、木造校舎の建設に携わりやすい環境を整え、魅力ある学習空間の実現を促進することにある。近年の公立の小中学校・特別支援学校施設の新設・建て替えでの木造校舎の割合は15%から20%弱で推移している状況が継続している。この規格改正が実現すれば、木造建築に関わる現場の需要増加や、新たな技術習得の必要性が高まる見込みである。

 

現場が変わる!新JISが規定する7つの重要項目

今回のJIS改正において、建設現場の施工や資材調達に直接関わってくる主要な7項目を深く理解することが肝要である。これらの項目は、従来の木造校舎建設のあり方を大きく変え、現場の生産性向上と品質確保の両立を強く求めるものである。

1. 張弦トラス計画の導入と大スパン対応 自然採光を確保するためのハイサイドライト(張弦トラス)の計画が可能になる。これは、従来の構造形式にとらわれない、より明るく開放的な空間設計を可能とするものであり、大スパン構造の施工精度が現場で求められる。

2. 屋上太陽光発電設備設置への構造対応 快適で健康的な温熱環境確保とNearly ZEBの達成を目指し、屋上に太陽光発電設備を設置することを前提とした構造計画が求められる。現場では、設備荷重増に対応した構造躯体の施工精度や、設備設置に伴う防水・躯体貫通部分の施工管理が重要となる。

3. 高性能CLT耐力壁の設定による空間自由度の確保 CLT(直交集成板)耐力壁が新たに設定されることで、空間の自由度が高まる。CLTは高い耐力と剛性を持ちながら、軽量化と工期短縮に貢献する新建材であり、現場ではその取り扱い方や、パネル接合部の高い施工技術の習得が必須となる。

4. コスト縮減・工期短縮を意識した構造の合理化 「金物工法」などを利用した合理的な構造が推奨され、コスト縮減や工期短縮が強く意識されている。これにより、現場ではプレカット技術の高度化や、接合金物を用いた合理的な施工方法への移行が加速する可能性がある。

5. 耐久性・維持管理の容易性に配慮した長寿命化 耐久性や維持管理の容易性に配慮した材料選定と構造計画が求められ、施設の長寿命化が図られる。これは、木材の防腐・防蟻処理、適切な材料の選定、そして施工時の品質管理の重要性を一層高める。

6. バルコニー設置による避難・維持管理・日射遮蔽への対応 現行JISにはない、避難や維持管理、日射遮蔽に有効なバルコニーの設置が加わる。バルコニーの構造的な納まりや、外装・防水との取り合いの施工は、現場における新たな課題となる。

7. 上階の床衝撃音低減対策を講じた床計画 上階からの床衝撃音の低減対策を講じた床計画が必要となる。これは、床構造材の選定や、遮音・緩衝材の施工において、より厳密な仕様と施工品質が求められることを意味する。

 

【Q&A】現場監督・職人が知っておくべき実務上の変更点

Q. 新しい木造校舎は、どの程度の高さまで建てられるのか?

A. 改正JISでは、適用範囲となる平屋建て・2階建ての木造校舎(1棟当たりの延べ床面積は2000㎡未満)について、軒高9m以下の規定が撤廃される予定である。さらに、最高高さ13m以下の規定は、1階の階高や耐力壁などを勘案し、16m以下への拡大が見込まれている。これは、より大規模な木造校舎の建設が視野に入り、現場での高所作業や建方計画の策定において、より高度な安全管理と技術が要求されることを示唆する。

 

Q. 階高の規定が変わると、現場の施工計画にどのような影響があるか?

A. 2階建ての1階の階高について、採光や換気、設備計画を考慮するため、現行の3650mm以下から3800mm以下程度に拡大する見込みである。階高の拡大は、現場での足場計画や資材搬入方法、あるいは梁のせいの調整など構造部材の寸法にも影響を与える。

 

Q. 設計の自由度確保は、現場にどのような対応を求めるか?

A. 中廊下型など特定の校舎プランにおいて、発注者や設計者が利用しやすいように、梁間方向と桁行き方向の寸法に幅を持たせ、設計の自由度を確保する。加えて、中廊下型の廊下に幅の広いプラン新設や、1ユニット(教室や教室+廊下)の寸法をより広いものに設定する改正にも取り組む。現場にとっては、多様な寸法設定に対応できる柔軟な施工管理体制、そして部材の標準化と特注対応のバランスを取る能力が重要になってくる。

 

Q. いつから新しいJISに基づいた建築が始まるのか?

A. 文部科学省は、2027年12月末までに改正JISを公示し、適用を始める予定である。今後、日本建築学会が2026年1月から原案作成作業を進め、2027年11月に日本産業標準調査会(JISC)から審議結果の答申を受ける段取りである。また、JISによる設計のための補足資料となる**「技術的資料」も、改正JISの公示と同時期に策定される**見込みである。現場での施工計画を具体的に練るためには、構造設計の例や各構造要素の許容耐力、留意事項などが示されるこの技術的資料の公開を待つ必要があり、公開後、速やかに内容を把握する必要がある。

 

Q. CLTなどの新材料導入は、現場の生産性向上に貢献するのか?

A. 改正の柱には、「金物工法」などを利用した合理的な構造でコスト縮減や工期短縮に配慮することが明記されている。高性能CLT耐力壁の導入は、空間の自由度を高めつつ、工期短縮にも寄与する可能性が高い。現場では、新しい材料や工法を効率的に扱うためのマニュアル整備や職人への教育・研修が急務であり、これが実現すれば、全体の生産性向上につながることは確実である。

 

まとめ

木造校舎の構造設計標準改正は、単なる技術的な変更に留まらず、建設業界における木造大規模建築の普及を後押しし、公共工事のあり方そのものに変革をもたらす重要な動きである。現場の職人や監督者にとって、張弦トラスや高性能CLTといった新工法への理解、そしてコスト・工期短縮を意識した合理的な施工技術は、今後、必須のスキルとなるだろう。2027年末の適用開始に向け、技術的資料の動向にも注視し、新たな標準に対応できる体制を早急に構築することが、競争力を維持する鍵となる。

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