建設現場が直面する課題:羽曳野市庁舎建替再公告の重要性
大阪府羽曳野市は、前回不調に終わった本庁舎建替事業のデザインビルド(DB)プロポーザル(プロポ)を再公告しました。
今回の再公告において、市は事業の上限額を前回の約110億円から131億円超へと大幅に増額。
これは、資材価格の高騰や人件費の上昇といった建設業界全体が直面する課題を反映したものと推察されます。
また、プロポ参加を促すため、参加要件における技術者配置要件も緩和され、業界の深刻な人手不足への対応が図られています。
参加表明書の提出期限は12月5日まで、事業者選定・特定は2024年3月を予定しており、建設業界における大型公共事業の最新動向として、その行方に注目が集まります。
本事例は、地方自治体が主導する大規模公共工事が、現在の建設業界の厳しい環境下でいかに計画の見直しを迫られているかを明確に示す事例です。
建設現場に従事する皆様にとって、このニュースは単なる一自治体の情報として片付けられない重要な示唆を含んでいます。
以下、現場の視点から、今回の再公告に関する重要なポイントを解説いたします。

新庁舎外観イメージ(市の資料から)
※画像は日刊建設新聞さまからお借りしています。
Q1. なぜ前回は不調となり、事業費がこれほど増額されたのか?
羽曳野市は、2023年1月にプロポーザルを公告しましたが、応募者が辞退するなどの事態により不調に終わりました。
その反省に基づき、市は入札環境の改善として、技術者配置要件の見直しや、事業者へのサウンディング(意見聴取)を実施いたしました。
最も注目すべきは、上限事業費の引き上げです。
前回プロポ時の上限額は110億7,222万1,700円(税込み)でしたが、今回は131億4,767万8,100円(税込み)へと増額されています。
これは約20億円の上積みであり、約19%もの上昇に相当します。
この大幅な引き上げは、昨今の原材料費やエネルギーコスト、そして人件費の高騰が、公共工事の積算価格に深刻な影響を与えている現状を端的に示しています。
建設業界の現場では、見積もりを出してもすぐに価格が変わってしまうという状況が続いていますが、大規模な公共事業においても例外ではないことが、市の対応から裏付けられた形となります。
Q2. 技術者配置要件の緩和は、現場の人材確保にどのような影響があるか?
今回の再公告の重要な変更点の一つが、技術者配置要件の緩和です。
前回、応募者の辞退が相次いだ背景には、厳しい技術者要件をクリアできる人材の確保が難しかったことが考えられます。
具体的に、本事業は2者または3者構成のJV(共同企業体)での参加が可能であり、代表構成員には延べ床面積3,000平方メートル以上の庁舎または病院の設計・施工実績が過去20年間で必要とされています。
また、難易度の高い建築設計・施工経験をもつコンソーシアム(特定業務協力者)の協力体制も条件に含まれていました。
技術者要件の緩和は、現場監督や技術者の資格・経験年数のハードルを下げることで、より多くの企業が参加しやすくなるよう配慮されたものです。
建設業界全体で人手不足が深刻化するなか、発注者側が要件を柔軟に見直す姿勢は、現場の負担軽減と若手・中堅技術者の育成機会創出につながる可能性を秘めています。
公共工事においても、経験豊富なベテラン技術者の確保が困難になるなか、この要件緩和は、技術者不足に対する実務的な対応策として注目されます。
Q3. 新庁舎の建設内容と工期について詳細な情報は何か?
羽曳野市新庁舎建替事業は、設計・施工一括発注方式(DB)で進められます。
新庁舎は、延べ床面積が約1万7,157平方メートルを予定しており、これは地域の中核となる大規模施設です。
工事の内容は多岐にわたります。
新庁舎の建設はもちろんのこと、昨今の社会的要求に応じ、省エネルギー化やZEB Ready(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル レディ)への配慮が求められています。
さらに、現庁舎(約4,747平方メートル)の解体撤去や、外構・付帯設備工事も含まれています。
工期に関して、新庁舎棟の竣工は2026年3月28日までの予定です。
その後、供用開始を経て、既存庁舎の解体撤去、外構・インフラバイパス工事などが引き続き行なわれる計画です。
このタイトなスケジュールで大規模なZEB Ready対応の施設を完成させるには、現場における生産性向上と効率的な労務管理が極めて重要となります。

※画像はイメージです。
Q4. DB方式における外部専門家(CM)の役割は何か?
本事業はDB方式を採用しており、施工者がコンストラクション・マネジメント(CM)として外部専門家を起用し、事業を推進する体制をとります。
CMとは、建設プロジェクトにおいて、発注者の代行者あるいは補佐役として、設計から施工に至るまでのマネジメント業務を行なう専門家を指します。
今回のプロポでは、施工者がCMとして外部専門家を活用し、基本設計図書の作成支援や実施設計図書の照査を行なうことが求められています。
この体制は、設計と施工を一体で進めるDB方式の特性を活かしつつ、専門的な知見をもって品質確保とコスト管理を両立させる狙いがあります。
現場の技術者にとっては、CMとの連携を通じて、設計段階から施工性を高める提案や、詳細な工程管理を行なう機会が増えることになります。
まとめ
羽曳野市本庁舎建替事業の再公告は、公共工事における建設コストの増加が避けられない現実と、深刻化する技術者不足に対し、発注者側が柔軟な対応を迫られている現状を浮き彫りにしました。
上限事業費の131億円への増額は、現場で働く皆様が実感している資材費や人件費の高騰が、公共発注価格に反映され始めた具体的な証拠です。
同時に、技術者配置要件の緩和は、企業がより参加しやすくなるための重要なステップであり、建設業界の人材確保と働き方改革を推進するうえで、公共セクターの理解が進んでいることを示唆しています。
このような大型案件の動向を通じて、今後の市場環境の変化や、求められる技術・人材要件のトレンドを把握し、自社の競争力強化に繋げていくことが肝要です。
建設円陣PLUSは、建設現場の皆様の業務改善に資する情報を引き続き発信し、事業の発展を支援いたします。
