電力系統を支える新技術:関電工が挑んだ東電管内初・系統用蓄電所建設の難所と現場の知恵

関電工は、電気事業法改正に基づき新設された系統用蓄電所制度において、東京電力管内での第1号案件となる小山市でのプロジェクトを完遂した。

これは、風力や太陽光といった再生可能エネルギー(再エネ)の導入拡大に伴う電力系統の安定化と、エネルギーの有効活用を図るうえで極めて重要なインフラ施設で、50年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みの一環として、その役割が注目を集めている。

再エネ発電は天候により出力が変動しやすい特性があり、これが電力系統に接続する際の大きな課題となるが、蓄電所は電力を貯蔵・放電することで、この変動を吸収し、系統を安定させる役割を担う。

本プロジェクトの完遂は、関電工にとって系統用蓄電所における初めての施工実績であり、この経験は、系統用以外の蓄電池設置工事の計画や施工、さらには関連部署との連携強化にも活かされる見込み。

ここからは、電力系統安定化という社会インフラの根幹に関わる大規模プロジェクトから得られた、現場の具体的な知恵と挑戦について、建設業の皆様の今後の業務に役立つ視点を含めて詳述する。

Q1:系統用蓄電所とは具体的にどのような施設か。また、建設における現場の特徴は何か。

A1:系統用蓄電所とは、電力系統の需給バランス調整を主目的として設置される大規模な蓄電池施設である。

小山市の案件では、電力を交流から直流に変換する整流器を用い、蓄電池に電力を蓄える。

そして、電力系統の不安定化が懸念される際に、直流から交流へ再変換して放電を行なう仕組みが採用された。

本施設は、2023年7月に運転を開始しており、蓄電容量18,888kW、定格出力3,750kWという、その規模からも社会的な貢献度が理解できる大型の蓄電池設備を擁する。

建設現場の特徴としては、本分野が2022年の電気事業法改正によって規定された新制度に基づくものであり、前例が極めて少ない点が挙げられる。

特に、今回の事例のように蓄電池ユニットがコンテナとして供給され、それを建屋の内部に設置する際、現場では通常の設備工事とは異なる制約や課題が生じやすい。

施工の全工程を通じて、蓄電池設備の設計、設置、接続、そして運用開始に至るまで、関係する各部門、協力会社、電力会社といった多様なステークホルダーとの間で、綿密な調整と技術的な摺り合わせが不可欠となった。

新技術を扱う現場においては、図面と仕様の確認だけでなく、関係者全員が目的と工程を深く理解することが肝要となる。

 

また、系統用蓄電所は、電気事業法の改正により2022年から正式に制度化された新市場であり、国が掲げる脱炭素政策や再エネ主力電源化の重要施策として位置付けられている。特に、固定価格買取制度(FIT・FIP)や容量市場との連携が進むことで、蓄電設備の整備需要は今後10年間で急速に拡大すると予想されている。


こうした国家方針と連動した工事は、通常の設備工事とは異なり、法制度・規制・補助制度の理解が欠かせず、現場では行政対応や技術資料の整合性確認など、施工以外の業務負荷も大きい点が特徴である。


小山蓄電所の全景
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。

Q2:このプロジェクトで現場のチームが直面した最大の難所と、それを乗り越えるための知恵は何か。

A2:プロジェクトチームが直面した最大の難所の一つは、コンテナ化された蓄電池設備の設置に関する技術的および行政的な調整であった。

蓄電池はコンテナ形状で提供されたが、それを建屋の内部に設置する場合、法的な位置づけを明確にすることが必要とされた。

まず、この設備が建屋(建築物)の構成要素ではないことが確認され、その後の施工プロセスに進むことが可能になった。

しかしながら、その後も、建屋内の設置場所に対してコンテナの寸法や搬入経路、安全に必要なクリアランス(余裕空間)を確保するための細かな検討が求められた。

現場を率いたチームリーダーは、この前例のない取り組みに対し、「施工を進めるにあたり、都度発生する問題がないか、関係部署と協議を重ねる必要があり、地道な調整作業に時間を要した」と述べている。

特に、コンテナ運搬に必要な経路確認や、設置後の機器接続に関する調整は、計画段階での徹底したシミュレーションと、それに続く関係者間の迅速な意思疎通によって支えられた知恵であったといえる。

さらに、蓄電池設備は高電圧・高エネルギー密度を扱うため、消防法や電気設備技術基準、リチウムイオン電池の安全性に関するJIS規格など、複数の法令・基準に基づいた安全管理計画の策定が求められた。


現場では、搬入時の感電・破損リスク、据付時の火災対策、さらには運用開始後の熱暴走(Thermal Runaway)防止のための監視設備導入まで、技術者と安全管理担当者が密に協議しながら施工を進めた。

新分野への挑戦は技術的な壁だけでなく、精神的な側面での困難も伴う。リーダーは「大変な苦労があったが、やり遂げたという達成感が大きい」と語り、チーム全体が困難な状況下でも粘り強く業務を推進した姿勢が成功の鍵となった。

エネルギーインフラ建設の現場では、電気を系統に接続する「電線につなぐ、というところが醍醐味」であると現場担当者が述べているように、技術者のモチベーションの源泉を理解し、困難を乗り越えるための精神的支柱とすることが、新技術導入時の現場マネジメントにおいて重要な知恵となる。

プロジェクトを取り仕切った関電工の山本工務施工チームリーダー
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。

Q3:系統用蓄電所が、今後の建設業界、特に現場仕事にどのような影響を与えるのか。

A3:系統用蓄電所市場の本格的な立ち上がりは、建設業界、特に電気設備工事や、蓄電池設置のための基礎・土木工事、建屋建設における新たな需要を生み出す。

再エネ導入は国際的な課題であり、電力系統安定化のための蓄電施設の必要性は今後も季節や天候に左右される再エネの導入ペースと連動し、全国で増加することが予想される。

この新しい需要に対応するためには、建設業者、特に現場サイドで新たな知識と技術、そして柔軟な対応力が求められる。

関電工は今回の経験を活かし、系統用蓄電所プロジェクトで培ったノウハウを、「系統用以外の蓄電池設置工事の計画・施工」についても積極的に応用し、事業の展開を図るとしている。

蓄電池関連工事は、今後「第二種電気工事士」「電気主任技術者」「施工管理技士(電気・土木・建築)」など複数資格の重要性が増す分野とされており、既存の電気設備工事の枠を超えて、BESS(Battery Energy Storage System)に対応できる人材の育成が急務となっている。


実際に、大手ゼネコンや設備会社では、蓄電池・系統連携工事向けの社内研修や資格取得支援制度を設ける動きが加速しており、技能継承と新技術教育の両輪による人材戦略が求められている。

現場従事者にとっては、蓄電池の設置に伴う電気的な接続技術だけでなく、コンテナやユニット製品の搬入・設置に関わる土木・建築的な制約条件を正確に理解し、安全かつ効率的に作業を進めるノウハウが重要となる。

設備の大型化と複合化が進むなかで、現場での調整項目が増加するため、従来の施工管理に加え、多岐にわたる専門家や関係者との折衝能力が現場監督や熟練職人層に今後より強く求められる傾向にある。

Q4:新制度対応工事から得られる、現場の安全管理と品質確保の教訓は何か。

A4:本事例は、新しい技術や制度が導入される際の「試行錯誤」のプロセスと、そのなかでの安全管理の重要性を示唆している。

特に、法令や技術基準がまだ十分に確立されていない、あるいは前例がない状況下では、初期段階でのリスクアセスメントの徹底と、それを反映した安全管理体制の構築が必須となる。

今回の案件のように、大型の機器(コンテナ)を限定された空間に設置する場合、狭隘な空間での作業、重量物の取り扱い、設置後の電気設備工事が複合的に発生する。

これらは、通常の建設現場以上に、作業動線の明確化、重量物吊り上げ時の詳細な安全計画、そして高電圧設備接続時の感電防止対策を厳格化する必要がある。

また、蓄電池設備は、性能維持のために適切な温度管理が重要であり、設置環境の確認、特に換気計画や熱対策が品質管理上不可欠な要素となる。

現場の知恵として、初期段階での設計仕様と製品情報の収集を徹底し、設計者・発注者・施工者間の仕様確認を曖昧にせず行なう姿勢が、後の手戻りや品質低下を防ぐ最も確実な方法となる。

不確実性の高い新分野の工事こそ、現場での経験と慎重な確認作業、そして関係部署との全面的な協力体制が求められる。

まとめ

関電工が完遂した東電管内初の系統用蓄電所建設は、再エネ時代における電力安定化の実現に向けた重要な一歩であり、建設業の新たな分野への参入モデルとして大きな意義をもつ。

この難易度の高い新分野の工事を通じて、現場チームは、前例のない課題に対し、関係者との徹底的な協議と、技術的な検証を積み重ねることで乗り越える知恵を獲得した。

建設業界は、今後も続く系統用および非系統用蓄電池の需要増を見据え、本事例から得られた新制度への適応力、技術的な難題への挑戦意欲、そして関係部門との緊密な連携という教訓を、日々の現場運営に活かすことが肝要である。

系統用蓄電所の建設は、単なる電気設備工事にとどまらず、地域の防災力向上やレジリエンス強化、災害時の非常用電源確保といった社会的使命も担っている。


今後、建設業に求められるのは「施工技術」だけでなく、「エネルギー・防災・環境」の3分野を横断的につなぐ視点であり、今回の関電工の事例はまさにその先駆けといえる。

 

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