全国建設業協会(全建、今井雅則会長)は2025年11月18日に全国会長会議を開催し、「第1次国土強靱化実施中期計画」の初年度となる2026年度において、関連公共事業費として少なくとも2兆円以上の予算確保を政府・与党に求める方針を決定いたしました。この要望は、全国9地区で実施された国土交通省との2025年度地域懇談会・ブロック会議で集約された意見に基づいたもので、公共事業関係費全体についても、2026年度予算として2025年度の6.1兆円を大きく上回る水準の計上を要請するものです。要望事項は全部で10項目に及び、予算確保の他に、予定価格への直近の実勢価格の適切な反映、価格変更協議をスムーズにするための民間事業者への指導徹底、そして建設会社が適正な利潤を得るための予定価格の上限拘束の撤廃など、現場の経営環境と労働環境に直結する切実な内容が盛り込まれています。
今井会長は、これらの議論のなかで「昨年よりも明らかに厳しい声や切実な声が上がった」と総括し、地域建設業が「魅力ある憧れの産業」となるよう、要望を建設行政に的確に反映させる決意を示しています。

※今井会長。画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしました。
【特集】2026年度予算要望の核心と現場の期待
地域建設業が直面する課題は複合的であり、特に過酷な気候への対応、物価上昇に伴う価格転嫁の遅延、そして恒常的な人手不足が、現場の士気と企業の存続に影響を与えかねない状況が続いています。全建が打ち出した今回の要望は、これらの課題を克服し、持続可能な建設産業を実現するための強いメッセージとして位置付けられます。ここからは、現場で働く皆さまにとって特に重要となる要望の背景と内容について、詳しく解説します。
I. 予算確保に向けた強い意志:国土強靱化の柱となる2兆円超の要請
全建が2026年度予算として国土強靱化関連で2兆円以上を要望する背景には、激甚化する自然災害への対応の必要性があります。国土強靱化は、地域の安全・安心を確保し、生活基盤を守る建設業の根幹をなす公共事業です。この大規模な計画を初年度から滞りなく推進するためには、確固たる予算基盤が不可欠であり、少なくとも2兆円という具体的な数値を掲げることで、政府・与党に対する強い要請を実施しています。
公共事業関係費全体として、前年度(2025年度の6.1兆円)を大きく上回る水準を求めることは、単なる災害対策に留まらず、老朽化インフラの更新や地域経済の活性化をも視野に入れた、包括的な建設投資の必要性を示唆するものと考えられます。現場で働く方々にとっては、公共事業の安定的な発注が見込めることは、業務の継続性や雇用安定、技術継承の面で極めて重要な要素となります。今回の要望は、足元の作業量を確保し、地域社会の要請に応える基盤を固めるための重要な一歩と評価できます。
II. 「厳しい声」の結晶:適正な価格転嫁と利潤の確保
地域懇談会・ブロック会議で「厳しい声や切実な声」が上がった主要な要因の一つは、物価上昇と価格転嫁の問題です。資材価格や燃料費、人件費の上昇が続くなか、適切なタイミングで契約価格に反映されなければ、建設会社の利潤は圧迫され、結果として現場で働く人々の処遇改善が停滞する懸念が生じます。
この問題に対処するため、全建は以下の3点を柱とした具体的な要望を掲げております。
1. 予定価格に直近の実勢価格を適切に反映させること。 現場の実情に即した価格設定がなされなければ、企業は赤字のリスクを抱えながら事業を遂行することになります。市場の変動を迅速かつ正確に反映した予定価格の設定は、適正な利益を確保し、次世代への投資や技術開発を可能にするための出発点となります。
2. 価格変更協議がスムーズに行なわれるよう民間事業者への指導を徹底すること。 契約後の物価変動に対する価格変更協議は、現場の負担を軽減し、予期せぬコスト増に対応するための重要な手段です。しかし、その実施が円滑でない場合、建設会社がリスクを一方的に負うことになります。全建は、この協議プロセスが滞りなく進むよう、発注者側である民間事業者への指導強化を求めており、これは現場の資金繰りや経営の安定に直結する問題です。
3. 建設会社が適正な利潤を得るため、予定価格の上限拘束を撤廃すること。 この要望は、建設業界が長年抱えてきた構造的な問題に切り込むものです。予定価格が上限として設定されている現状では、競争入札において適正なコストを積算しても、上限価格を超えられない制約により、利潤が確保できないケースが発生します。上限拘束を撤廃することで、企業努力により適正なコストと利潤を積み上げた価格での契約が可能となり、経営の健全化と現場の処遇改善に繋がる強い効果が期待されます。この施策が実現すれば、現場で働く職人や技術者の賃金水準の向上にも寄与し、業界全体の魅力向上に繋がるものと考えられます。

※画像はイメージです。
III. 働き方と環境改善への要望:過酷な気候への対応
地域懇談会では、公共事業の推進や価格転嫁の議論に加え、「過酷な気候に対応した柔軟な働き方」についても議論が交わされています。近年、記録的な猛暑や豪雨など、建設現場を取り巻く環境は厳しさを増しており、作業員の安全確保と健康管理は喫緊の課題です。
柔軟な働き方の導入は、単なる労働時間短縮に留まらず、天候による作業中断や危険な状況を避けるための作業時間帯の調整、あるいは休息時間の確保を容易にするものです。過酷な気候条件下で安全に、かつ生産性を維持しながら作業を進めるためには、現場の裁量を尊重し、地域の実情に応じた柔軟な労務管理体制を確立することが必須となります。
全建がこの点を要望に盛り込んだ背景には、現場で働く方々の安全確保と健康管理を最優先し、持続可能な労働環境を整備することで、結果的に人材の定着と確保を図る狙いがあります。現場で働く一人ひとりにとって、命の危険と隣り合わせの環境で無理な作業を強いられない制度的裏付けは、極めて大きな意味をもちます。
IV. 目標は「憧れの産業」へ:地域建設業の魅力向上
今井会長は、今回の要望活動を通じて現場から集めた声が国政や建設行政に的確に反映されるよう全力を尽くし、最終的には地域建設業が「魅力ある憧れの産業」となることを目指すと述べています。
予算の安定確保、適正な価格設定、そして柔軟な働き方の実現は、この「魅力ある憧れの産業」への転換を実現するための三位一体の要素であす。適正な利潤が確保されれば、企業は現場で働く人々の賃金や福利厚生に投資することが可能となり、若い世代や女性にとって魅力的な職場環境が実現します。また、過酷な気候に対応できる柔軟な働き方が導入されれば、より長く、安心して働き続けることができるようになります。これらの改善は、人材確保と人材定着の最大の推進力となるものです。
地域建設業は、国土強靱化の中核を担い、地域の安全と生活を守る重要な役割を負っています。今回の要望活動は、その役割を十全に果たすための経営基盤と労働環境を国に整備してもらうための、強力な要求行動であると理解が可能です。現場の厳しい声と切実な期待が込められたこの要望が、どのように行政に反映されていくのか、今後の動向を注視する必要があります。
まとめ
全国建設業協会が打ち出した2026年度予算及び制度改革に関する要望は、国土強靱化の推進と、建設会社が適正な利潤を得るための価格適正化、そして現場の安全を守る柔軟な働き方の導入を強力に求めるものです。特に、予定価格への実勢価格反映や上限拘束の撤廃といった具体的な要求は、現場の厳しい状況を打開し、「魅力ある憧れの産業」を実現するための重要な契機となると期待されます。これらの要望が実現し、現場で働く皆様の努力が適正に報われる環境が整うことが、業界全体の持続的な発展に繋がると確信しています。
