【能登で進むインフラ維持管理の革新:NTNを活用した省人化と質の向上】
インフラ維持管理におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の導入が急務となるなか、能登半島の現場で画期的な実証が実施されました。NTTドコモビジネス、ミライト・ワン、国際航業の3社は、石川県珠洲市の小屋ダムにおいて、非地上系ネットワーク(NTN)を活用したダム堤体の変位や貯水池周辺設備のひび割れなどを遠隔点検する手法の有効性を検証したと公表しました。
この取り組みは、「ダム管理DX手法」と銘打たれ、現地への移動が困難なダムの維持管理について、省人化と同時に点検の質を高めることを目的としています。実証は、NTTドコモグループと石川県が2024年11月に締結した連携協定に基づく「能登HAPSパートナープログラム」の初弾として位置づけられ、能登半島地震で通信基地局が被災し、山間部のインフラ施設の状態把握が難しくなったという経験を踏まえ、NTNを活用した災害復興支援も視野に入れたものです。小屋ダムは1993年に完成し、石川県が管理する堤高56.5メートルの中央コア型ロックフィルダムです。実証では、約1~2ミリメートルの変位計測が可能な高精度センサーの活用に加え、堤体の常時監視、3D点群データの作成、ドローン撮影画像のAI判読が可能であることを確認しています。

※shamen-netによる計測イメージ。画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしました。
【なぜ今、非地上系ネットワーク(NTN)がインフラ管理に求められるのか】
建設業が担うインフラの維持管理は、人手不足と広域性、そして高齢化の進行により、持続可能性の危機に直面しています。さらに、近年多発する大規模災害時には、従来の通信網が遮断され、山間部などに点在する重要インフラ施設の状態把握が困難となる事態が常態化しつつあります。能登半島地震の際も、通信基地局の被災により、小屋ダムのような施設の状況が把握できなくなった経験があります。
NTNは、こうした課題を克服するための鍵となる技術です。本実証で利用されたHAPS(High Altitude Platform Station)は、地上から約20キロメートルの成層圏に滞空させる航空機を基地局として使う広域通信サービスであり、地上の通信インフラに依存せず広範囲をカバーできます。これにより、災害による地上網の途絶時においても、ダムや橋梁、トンネルといった遠隔地のインフラ施設から継続的に点検データを取得し、管理の質を落とすことなく省人化を達成することが可能になります。これは、非常時における迅速な状況把握と、その後の復旧計画立案において、極めて高い貢献度を発揮します。
【ミリ単位の異常検知を可能にする技術構成とその専門性】
今回のダム管理DX実証は、複数の専門技術を組み合わせることで、従来の点検手法では得られなかった高精度な監視能力を実現しています。
主要な計測技術としては、約1ミリから2ミリメートルの微細な変位まで計測可能な高精度センサーが活用されています。さらに、国際航業が運用を担ったGNSS(全球測位衛星システム)自動変位計測サービス「shamen-net」は、常時監視体制を支える重要な要素です。これにより、構造物に発生しつつある異常を早期に察知し、大規模な損傷に至る前に予防保全的な措置を講じることができます。
通信および映像解析の分野では、NTTドコモビジネスが衛星通信サービス「スターリンク・ビジネス」を提供し、遠隔地での大容量データ通信を確保しました。加えて、米スカイディオ社のドローン遠隔監視技術を導入し、ドローンによる撮影画像をAIが自動判読することで、人間が見落としがちな堤体や周辺設備のひび割れなどの異常を検出します。
また、ミライト・ワンは、実証現場に自営無線LANを構築し、人物検知AIカメラを提供することで、現場の状況をリアルタイムで監視する体制を確立しました。このように、各社が保有する専門性の高い技術を連携させることで、遠隔点検でありながら、従来の現場点検よりも高精度かつ網羅的なデータを取得できる仕組みが構築されています。

【現場監督と経営者が注目すべき導入の利点】
本実証で確立された技術は、ダム管理に限らず、広範な建設現場やインフラ維持管理業務に応用可能であり、現場監督者や中小企業経営者にとって以下の点で大きな利点をもたらします。
1. 労働負荷の抜本的軽減:人手不足が深刻化する中、遠隔地や危険な場所への定期的な巡回点検を高度なセンサーとドローンに代替させることで、現場作業員の負担を劇的に軽減し、より付加価値の高い業務に人員を集中させることが可能です。
2. 安全性の向上:高精度センサーによる常時監視やAIカメラによる人物検知機能の活用は、作業員が危険箇所に立ち入る頻度を最小限に抑え、労働災害のリスクを低減します。これにより、特に中小企業が重要視すべき安全管理体制の強化が図れます。
3. 生産性の向上とコスト最適化:点検データの取得から解析までをデジタル化・自動化することで、点検サイクルを短縮し、突発的なメンテナンス発生リスクを抑えます。高精度な3D点群データ作成が可能となるため、補修計画も効率的かつ正確に立案でき、結果として維持管理コストの最適化に繋がります。
【インフラモニタリングの次なる展開:統合型システムの構築へ】
今回の実証成功を受け、3社は共同事業として、確立した遠隔点検手法の実用化をさらに推進する方針です。今後は、地上の監視カメラや、全天候型で広域観測が可能な**SAR衛星(合成開口レーダー)**を一体化したインフラモニタリングシステムの構築を目指します。
SAR衛星のデータ統合は、悪天候や夜間といった条件下でも地表の変動を検知可能にし、監視の死角をなくすことにつながります。こうした統合型システムが実用化されれば、建設業界におけるインフラ維持管理は、より予防保全型で、かつ災害に強い体制へと変革を遂げるでしょう。中小企業においても、こうした先進的なDX技術の導入が、今後の公共工事や民間事業の受注競争力を左右する重要な要素となる可能性が高く、技術動向の継続的な把握が求められます。官民連携によるこれらの実証結果は、建設業における技術革新の具体的な進路を示唆しています。
まとめ
能登半島でのダム管理DX実証は、NTNや高精度センサー、AIを活用した遠隔監視技術が、人手不足、広域管理の困難さ、そして災害対応という建設業界の主要な課題に対して、具体的な解決策を提示しました。本技術は、単なる省人化に留まらず、点検精度と労働安全性を飛躍的に向上させるものであり、建設業の経営層や現場監督者は、この革新的なインフラモニタリングの動向を深く理解し、自社の生産性向上とリスク管理体制の強化に活かすべき時期に来ています。
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