洋上風力発電の巨大基礎は「コンクリート」が鍵:地元建設業に新たな需要が生まれるか

大成建設はこのほど、浮体式洋上風力発電設備に用いるコンクリート製セミサブ型浮体式基礎「OO-STAR」について、日本海事協会から基本設計承認(AiP)を取得しました。このOO-STARは、15メガワット級の巨大風車に対応可能な浮体式基礎であり、今後の浮体式洋上風力発電の本格導入を強力に推進するものとして期待が高まっています。

この基礎の特筆すべき点は、その主材料にコンクリートを採用している点に集約されます。コンクリートを用いることにより、材料の安定供給が確保され、さらに地産地消による地域経済への貢献、ライフサイクル全体での二酸化炭素(CO2)排出量の削減といった多岐にわたるメリットが実現する見込みです。OO-STARはセンターシャフトと三つのコーナーカラムで構成され、合成繊維索のセミトート係留を用いた多点システムで係留されます。この新技術は、今後のカーボンニュートラル(CN)社会実現への貢献を目指し、政府が掲げる洋上風力発電の導入目標達成に向けた重要な一歩となります。

巨大コンクリート基礎「OO-STAR」とはどのような構造物か

このたび基本設計承認を取得した「OO-STAR」は、洋上風力発電の分野で急速に導入が進む浮体式基礎技術の一つであり、具体的にはセミサブ型に分類される構造物であります。洋上風力発電では、着床式が不可能な深海域で発電を行なうため、浮体を海面に浮かせる技術が必要とされ、この浮体式基礎がその土台を担います。

この基礎が持つ最大の特徴は、その規模の大きさと構造のシンプルさにあります。15メガワット級という巨大な風車を支える能力を持ちながら、他のセミサブ型浮体式基礎と比較して、カラム天端のブレスなどの細かい補強部材がない、極めて簡素な構造を保持しています。このシンプルな構造は、現場における製作の容易さに直結する重要な要素です。

また、OO-STARは多点システムで係留され、係留には合成繊維索のセミトート係留が採用されています。この係留方式と構造設計が、巨大風車を安定して洋上に保持することを可能にしています。基本設計承認の取得は、この技術が安全基準を満たし、実用化へ向けた確かな一歩を踏み出したことを意味します。

※コンクリ製セミサブ型浮体式基礎「OO-STAR」概要図。画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしました。

なぜコンクリートが洋上風力基礎の主材料に選定されたのか

OO-STARが主材料としてコンクリートを選択した背景には、日本の建設業界や地域経済、そして環境負荷に対する深い配慮が存在します。

まず、建設現場に携わる者にとって最も重要な要素の一つが、材料の安定供給です。コンクリートは国内で広く製造・供給が可能であり、大規模なインフラ事業である洋上風力発電において、鉄鋼材料の供給変動リスクやコスト高騰リスクを回避する上で極めて有効な選択肢です。大規模開発においては、安定した資材調達が工期遵守と予算管理の根幹を成します。

次に、地域経済への貢献が挙げられます。コンクリート基礎の製作を推進することは、すなわち「地産地消」を可能にします。浮体構造を地域内のヤードで製作し、地域のコンクリート関連業者や建設技術、人材を積極的に活用することで、洋上風力発電事業がもたらす経済効果を広範囲に、そして具体的に地域社会へ還元することが期待できます。これは、地域活性化に直結する重要な取り組みであります。

さらに、地球規模の課題である環境負荷の低減に対しても貢献します。ライフサイクル全体で見た場合、OO-STARのコンクリート採用は二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながるという分析があります。これは、脱炭素社会の実現を目指す上で、建設業者が果たし得る重要な役割の一つであり、2050年問題(カーボンニュートラル目標)への対応にも繋がります。

製作場所と工法の革新:現場に求められる技術とは

大規模な浮体式構造物の製作には、従来、巨大な造船ドックが必要とされるケースが多かったといえます。しかし、OO-STARの設計は、その前提を覆す製作技術の革新を含んでいます。

大成建設の技術開発によれば、OO-STARの製作には造船ドックを必要としません。一定規模のヤードさえ確保できれば、基礎の製作が可能になります。これは、製作拠点の柔軟性を高め、より多くの地域でのサプライチェーン構築を可能にする要素であります。特定の大型インフラに依存せず、既存の建設ヤードや港湾設備を有効活用できる可能性を示唆しており、中小建設業者や土木業者がこの新しい市場に参入する際のハードルを下げる効果も期待できます。

また、前述のようにOO-STARは構造が極めてシンプルであり、他の浮体式基礎に見られるような複雑な補強部材が少ないため、作りやすい特徴を持っています。このシンプルな構造は、製作現場における工期短縮や品質管理の容易化、そして生産性向上に直結します。急速な普及を目指す洋上風力発電において、いかに効率的かつ低コストで大量生産を実現するかは喫緊の課題であり、設計段階からこの課題に対応しています。

※画像はイメージです

量産化とコスト最適化に向けた取り組み

このOO-STARの導入拡大は、単なる技術開発に留まらず、国家的なエネルギー戦略の一環として位置づけられています。大成建設は、基本設計承認の取得と並行して、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業に参画しています。

この委託事業の目的は、導入促進に資する次世代技術の開発であり、特にコストダウンを実現するための設計技術の開発、そして急速量産技術の開発に重点が置かれています。具体的には、年間で25基以上もの浮体式基礎を製造することを可能にする技術の確立を目指しています。

この急速量産化の実現は、洋上風力発電コストの劇的な低減をもたらし、再生可能エネルギーの主力電源化を後押しします。現場で働く建設技術者や管理者に求められるのは、この急速量産に対応できるだけの、効率的かつ高品質な施工管理能力です。シンプルなコンクリート構造だからこそ、標準化された工法による大量生産体制を早期に確立することが、事業成功の鍵を握ります。コスト最適化は、設計技術の開発と急速量産技術の開発を通じて追求されています。

建設サプライチェーンへの波及効果

政府は浮体式洋上風力発電の導入目標を掲げており、OO-STARのようなコンクリート製基礎の登場は、その目標達成に向けた技術開発を一層加速させます。

大成建設は今後、関係機関との連携を通じて、この大規模事業を支えるための体制整備を進め、同時にサプライチェーン(供給網)の構築にも取り組む方針です。これは、日本全国の沿岸域で計画されている大規模開発プロジェクトにおいて、コンクリート材料の供給、ヤードでの基礎製作、輸送、据付工事に至るまで、広範な分野で新たな建設需要が生まれることを示唆しています。

特に、地域に根差す中小建設業者にとっては、地産地消を目指すコンクリート製基礎の製作・供給体制に参加する絶好の機会となります。基礎の製作ヤードが一定規模で足りるという特性は、これまで大規模な海洋土木事業への参入が困難であった企業にも、その門戸を開く可能性があります。

この新しい建設需要は、地域活性化に寄与すると同時に、建設業界全体の生産性向上とコスト最適化の取り組みを加速させる原動力ともなり得ます。コンクリート技術という、日本の建設業が長年培ってきた得意分野が、次世代のエネルギーインフラ構築の最前線で活用されることは、業界全体の持続可能性を高める重要な潮流となります。

まとめ

大成建設によるコンクリート製浮体式基礎「OO-STAR」の基本設計承認取得は、洋上風力発電の導入加速に向けた具体的な成果です。コンクリート材料の採用は、安定供給、地域経済への貢献、CO2排出量削減といった多くの利点をもたらし、製作における造船ドック不要なシンプルな構造は、急速量産化とサプライチェーンの構築を後押しします。建設業に携わる者は、この大規模な新規インフラ市場の動向を注視し、新たな技術需要と地域での事業機会への準備を進めることが肝要です。

今後、洋上風力発電を通じたカーボンニュートラル社会の実現という大きな目標達成に向け、建設現場の技術力と工夫が求められる局面がさらに増大するでしょう。

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