鹿児島県は、2024年7月より通行止めが続いている国道504号「北薩トンネル」について、2026年度より本復旧工事に着手する方針を固めた。
これは1月16日に開催された「北薩トンネル技術検討委員会」において報告されたものであり、トンネル本体の復旧工法については原形復旧を基本とすることが確認されている。
同トンネルは鹿児島空港と阿久根市を結ぶ地域高規格道路の一部であり、総延長4850mの長さを誇る重要インフラであるが、出水市側の坑口から約1870mの地点で大規模な湧水と土砂流出が発生し、約120mの区間が被災した。
県はこれまでに水抜き導坑の掘削などの応急処置を進めており、総事業費は約60億円を見込んでいる。
Q1:なぜ本復旧工事の着手が2026年度になるのか?
被災した現場の状況は極めて深刻であり、慎重な安全対策と地盤安定化が最優先されるためである。
県によると、これまでに本坑と平行する形で長さ120mの水抜き導坑などを掘削し、本坑をつなぐ水抜き孔を設置する作業が行なわれた。
湧水対策自体は2025年11月末までに完了したとされているが、直ちに本工事に入れるわけではない。
現在はトンネル壁面の裏側に空洞がないことは確認されているものの、地山の安定性を確保するために、3月までに薬剤の注入工を実施する計画となっている。
この薬剤注入によって地盤を固め、土砂流出の危険性が完全に排除されたと判断されて初めて、本復旧に着手できる段階となる。
すなわち、2025年度いっぱいは地盤改良と経過観察、そして発注準備に充てられるため、実際の本復旧工事着手は2026年度となる見通しだ。

25年12月現在の被災状況
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。
Q2:総事業費60億円の内訳と復旧工法の詳細は?
今回見込まれている約60億円という巨額の総事業費は、難易度の高いトンネル内での土木工事と、安全性を担保するための高度な技術投入を反映したものである。
技術検討委員会(委員長・酒匂一成鹿児島大教授ら専門家8名で構成)での議論を経て、トンネル本体の復旧については「原形復旧」を基本に進めることが確認された。
これは、別ルートへの迂回やトンネル形状の変更を行なわず、被災した箇所を元の機能・構造に戻すという方針である。被災区間は前後を含めて約120mに及んでおり、狭小なトンネル空間内での重機作業や、湧水との戦いとなるため、高度な施工管理能力が求められる。
現在進行中の応急復旧工事に関しては、熊谷組・渡辺組・福上産業JV(共同企業体)が担当しており、大手ゼネコンと地元企業の連携によって難局にあたっている状況だ。
本復旧工事の発注準備は今後進められるが、同規模の予算と技術力が投入されることになるだろう。
Q3:北薩トンネルの重要性と地域への影響は?
北薩トンネルは、霧島市にある鹿児島空港と阿久根市を結ぶ「北薩横断道路」の中核をなす構造物である。全長4850mという長大トンネルは、県内の物流や観光、生活道路として極めて重要な役割を果たしてきた。
2024年7月の被災以降、長期にわたる通行止めは地域経済や住民の利便性に少なからぬ影響を与えていることは想像に難くない。
今回、県が明確な復旧スケジュールと工法、そして予算規模を示したことは、地域住民や利用運送業者にとって一筋の光となる。
特に、湧水や土砂流出というトンネル工事における最大の敵に対し、水抜き導坑の設置や薬剤注入といった具体的な対策を着実に進めている点は評価されるべきである。
現場では、2025年11月末までに湧水対策を完了させ、現在は次なるステップである地山安定化へと移行している。2026年度の着手から完成までにはさらなる時間を要するが、インフラ再生に向けた確実な歩みが進められているといえる。

※画像はイメージです。
まとめ
鹿児島県の北薩トンネル本復旧工事は、2026年度の着手を目指し、総事業費約60億円規模で進められることが決定した。
現在は薬剤注入による地山安定化のフェーズにあり、技術検討委員会の指導のもと、原形復旧に向けた準備が着実に進行している。
現場の最前線では、湧水と土砂流出という困難な自然条件に対し、日本の土木技術を結集した対策が講じられている。
建設業界に従事する我々にとって、こうした災害復旧の現場は、技術の継承と進化を目の当たりにする重要な事例である。
安全を最優先しつつ、インフラという地域の動脈を再生させる使命感こそが、建設業の根幹を支えているといえるだろう。
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