高崎・金沢・岡崎が連携、能登の教訓生かし水道復旧の初動体制を強化
群馬県高崎市、石川県金沢市、愛知県岡崎市という、地理的に離れた三つの都市が手を組み、大規模災害に備えた新たな一歩を踏み出した。高崎市は20日、金沢市および岡崎市との間で「水道・下水道の相互応援等に関する協定」を締結したと発表した。
この協定は、甚大な被害をもたらした能登半島地震を教訓としており、被災直後の混乱期においても、迅速かつ確実に初動体制を構築することを主眼に置いている。
具体的には、三つの市が平常時から施設台帳などのインフラ情報を共有することで、有事の際に即座に復旧対応へと移行できる体制を整える狙いがある。
また、単なる物資や情報の共有にとどまらず、平時の人事交流などを通じて職員の技術向上やノウハウの蓄積も見据えている点が特徴だ。
締結式は高崎市役所で執り行なわれ、高崎市の内田昌孝上下水道事業管理者、金沢市の松田滋人公営企業管理者、そして岡崎市の中田利隆水道事業および下水道事業管理者が一堂に会し、協定書への署名を行なった。この連携は、地域建設業やインフラ維持管理に携わる事業者にとっても、災害時の動員や復旧プロセスの標準化に関わる重要な動きとなるだろう。

右から松田氏、内田氏、中田氏
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。
疑問1:なぜこれら三つの市が連携することになったのか?
今回、高崎市、金沢市、岡崎市という組み合わせで協定が結ばれた背景には、明確なリスク管理の戦略が存在する。これら3市は「中核市」として人口や施設規模が類似しており、都市機能やインフラの構造において共通点が多い。
その一方で、地理的には離れているため、大規模な地震や広域豪雨などが発生した際でも、3市が同時に被災する可能性は低いと判断されたことが最大の理由だ。災害対策において「同時被災の回避」は極めて重要な観点となる。近隣自治体同士の連携も重要だが、巨大地震などでは共倒れになるリスクがあるからだ。
遠隔地との協定であれば、被災していない都市から確実に支援部隊を派遣することが可能となる。建設業の視点で見れば、類似した規模の都市間であれば、使用されている資材や工法、管理システムにも親和性がある可能性が高く、応援に入った際の現場対応がスムーズに進むことが期待される。
疑問2:能登半島地震から得られた具体的な教訓とは何か?
今回の協定締結の強い動機となったのは、やはり能登半島地震での過酷な経験である。高崎市の内田氏は、能登半島地震の教訓を踏まえ、すでに水道応急復旧対策車を配備し、給水車を2台追加するなど、ハード面での災害対策を強化していることを明らかにしている。
また、金沢市の松田氏は、能登半島地震を通じて上下水道というライフラインの重要性を再認識すると同時に、「応急復旧の大変さ」を痛感したと述べている。
災害現場、特に道路網が寸断され、情報が錯綜する中での水道復旧は困難を極める。現地の建設業者や自治体職員だけでは手が回らない状況において、外部からの支援をいかに効率的に受け入れるかが課題として浮き彫りになったのである。
内田氏が「有事の際には最大限機能するよう連携をより一層深めていく」と力を込めたように、単なる協定文書の取り交わしではなく、実効性のある支援体制の構築が急務とされている。
疑問3:協定によって現場の復旧作業はどう変わるのか?
本協定の核心部分は、災害発生時における「初動体制の早期構築」にある。具体的には、支援に入る自治体の職員が「調整役」となり、被災地の復旧活動をバックアップする予定だ。
建設業の実務において、災害復旧の現場が混乱する最大の要因は「指揮命令系統の麻痺」と「現場情報の欠落」である。どこを掘ればよいのか、どの管を直すべきかという指示が出せなければ、重機や職人が揃っていても作業は進まない。支援自治体の職員が調整役として機能することで、地元の建設業者や復旧部隊に対し、的確な指示やエリア分けを行なうことが可能となる。
さらに特筆すべきは、平時から「施設台帳」を共有する点である。施設台帳には配管の位置、管径、材質、弁栓の場所などの詳細データが記載されている。これを共有しておくことで、支援チームは現地到着後、被災自治体からの詳細な説明を待たずとも、図面を確認して即座に作業計画を立てることが可能になる。
これは現場での待機時間を減らし、復旧スピードを劇的に向上させるためのDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環ともいえる施策だ。

※画像はイメージです。
疑問4:岡崎市との連携にはどのような経緯があるのか?
金沢市と岡崎市の間では、すでに2024年9月に同様の協定が締結されていた。今回はそこに高崎市が加わる形で、3市間の強固なトライアングルが形成されたことになる。松田氏は、高崎市とも連携することで、平時から相互の良い点を学び合い、レベルアップを図っていきたいと述べている。
また、岡崎市の中田氏も、3市が平時の情報交換や人事交流を通して互いの事業を理解し、災害対応力の強化を図ることで、今まで以上に災害に強い上下水道事業を実現したいと意欲を示している。このように、既存の連携枠組みを拡張し、多重的な安全網を構築していく動きは、全国の自治体やインフラ事業者にとって一つのモデルケースとなるだろう。
疑問5:災害時以外、つまり「平時」には何を行なうのか?
協定は災害時のためだけのものではない。平時においては、前述の通り施設台帳の共有が進められるほか、職員の人事交流が行なわれる。これは、互いの都市のインフラ構造や業務フローを肌感覚で理解しておくための重要なプロセスだ。
さらに、防災訓練の共同実施も視野に入れている。異なる自治体の職員や関連業者が合同で訓練を行なうことは、緊急時の連携手順を確認する絶好の機会となる。建設業界にとっても、発注者である自治体職員が他都市の先進事例や管理手法を学ぶことは、発注仕様の改善や業務効率化につながる可能性があるため、注目すべき動きといえる。
内田氏が述べた通り、情報の共有や人事交流を通じて連携を深めることは、結果として地域全体の防災力、ひいては建設業が活動するフィールドの安全性向上に寄与するものである。
まとめ
高崎市、金沢市、岡崎市による3市協定は、能登半島地震の教訓を具体策へと昇華させた事例である。施設台帳の共有や調整役の派遣といった取り決めは、災害現場における建設業者の活動を円滑にし、地域住民の生活を早期に再建するための基盤となる。
現場で汗を流す我々建設従事者としても、こうした自治体間の連携強化を注視し、いざという時にスムーズに連携できるよう、日頃からの備えと情報収集を怠らない姿勢が求められるだろう。
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