山岳トンネル工事に残る「最後の高リスク作業」
山岳トンネル工事は、道路や鉄道、インフラ整備に欠かせない重要な工事である一方、建設現場の中でも特に災害リスクが高い分野とされてきた。とりわけ発破掘削工法を採用する現場では、切り羽鏡面直下での作業が避けられず、肌落ちによる事故が長年の課題となっている。
穿孔や吹付けといった工程は機械化が進んでいるが、爆薬の装てん作業は依然として人力に依存する場面が多く、地山の状態によっては作業員が極めて危険な環境に身を置く必要があった。特に装薬孔内が崩落し、岩片が閉塞した場合には、切り羽に近接して除去作業を行なわなければならず、現場管理者にとっても頭の痛い工程であった。
奥村組が開発した「爆薬遠隔装てん装置」の概要
こうした課題に対し、奥村組は新たに「爆薬遠隔装てん装置」を開発した。本装置は、山岳トンネル工事における爆薬装てん作業を遠隔で実施できる仕組みを備えており、切り羽鏡面での人力作業を原則不要とする点が最大の特長である。
装置はドリルジャンボのブーム先端に取り付けられ、装薬孔内に爆薬を供給する装てんパイプと、岩片を破砕する先端コーンを一体化している。これにより、装薬孔内に岩片が崩落している場合でも、遠隔操作によって岩片の破砕・除去と爆薬装てんを連続して行なうことが可能となった。
作業は切り羽から二メートル以上離れた安全な位置で、ドリルジャンボのオペレーターと作業員の二名体制で実施される。従来と比較して、作業員が危険エリアに立ち入る必要が大幅に減少する点は、現場安全管理の観点からも極めて大きな意義をもつ。

システム概要
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。
静電気対策と実用性を両立した設計
爆薬を扱う装置において最も重視されるのが安全性である。奥村組の装置では、静電気による誘爆リスクを排除するため、装てんパイプにカーボンファイバー主体の非鉄材料を採用し、先端コーンにはステンレス製素材を用いている。
また、空気や水を供給する給気・給水孔を設け、装薬孔内で発生した岩片を効率的に除去できる構造とした。装置とドリルジャンボ付近に設置した装薬機は、市販の非耐電式耐圧ホースで接続されており、特別な専用品に頼らず現場適応性を高めている点も注目される。

爆薬遠隔装てん装置の構成
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。
実証実験で確認された確実性
本装置は、NEXCO中日本名古屋支社が発注した「東海環状自動車道養老トンネル北工事」において実証実験が行なわれた。多亀裂性地山という厳しい条件下で、六段階の操作ステップを通じて操作性や確実性が検証され、遠隔での爆薬装てんが問題なく実施できることが確認されている。
これは単なる試作機レベルではなく、実際の公共工事現場での適用を見据えた実証であり、今後の水平展開や技術普及の可能性を強く示す結果といえる。
中小建設業者にとっての意味
本技術は大手ゼネコンによる開発ではあるが、その影響は中小建設業者にとっても無関係ではない。公共工事における安全基準の高度化は年々進んでおり、将来的には同様の安全配慮や機械化が求められる可能性が高い。
また、若手人材の確保が難しいなかで、「危険な作業を減らす」「安全な現場である」という点は採用や定着にも直結する。現場の省人化や生産性向上は、経営面においても無視できないテーマであり、今回の取り組みはその象徴的な事例といえる。
山岳トンネル工事の自動化に向けて
奥村組は今回の技術開発を起点に、山岳トンネル工事の将来的な自動化を見据えた取り組みを加速させる方針を示している。危険作業を人から機械へ置き換える流れは、今後の建設業界全体に共通する潮流であり、安全対策と生産性向上を両立させる鍵となる。
まとめ
奥村組が開発した爆薬遠隔装てん装置は、山岳トンネル工事における長年の課題であった肌落ち災害リスクを低減し、現場の安全性を大きく前進させる技術である。建設業界が抱える人材不足や安全管理の高度化という課題に対し、現実的な解決策を示す事例として、今後の動向が注目される。
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