🏗️ なぜ塗装の道を選んだのか?原点にある一人の職人との出会い
乙黒代表が塗装業に進んだきっかけは、子どもの頃の記憶にある。
「子供の頃、両親が自宅の塗装をある会社に頼んだんですよ。その時に一人の職人さんが、家を最初から最後まで全部きれいに仕上げていって。すごいなぁって感銘を受けて」
最初はプラントや鉄骨系の現場でアルバイトとして塗装を始めたが、あの職人の姿が頭から離れなかった。
「プラントで働いてて、このまま一生終わっていくのかな、と。それよりも家の塗装に移った方が、人に感謝される仕事になるんじゃないかと思って、住宅の方にシフトチェンジしたんです」
中小建設業においても、「誰のために働くか」という軸が長く続く原動力になる。乙黒代表の場合、それは20年たった今も変わっていない。
「やりがいとしては、やっぱりお客さんに感謝していただいて、その対価としてお金をいただく。シンプルな仕事だなっていうのが正直なところですね」
🔧 見積書に書いていないことも全部やる──それが乙黒塗装のこだわり
乙黒塗装の最大の強みは、「見積書に載っていないことも惜しみなくやる」という姿勢だ。
「古い家になると、金具の裏に見えないところの錆があったり。見積もりには入っていないけど塗ってきました、サビ削ってやっておきましたって。その家にしかない不具合をこちらの判断で直させていただくんです。だからめちゃくちゃ喜んでいただけるんですよ。僕に任せてもらったら、ほぼ100%のお客さまがリピートしてくださるんですよね」
さらに徹底しているのが塗料の希釈管理だ。
「材料に水を500ミリリットルまでしか入れちゃいけないってなったら、絶対それ以下にする。サラサラにして塗りやすくする業者はいっぱいいますよ。ぱっと見はわからないけど、片や10年持ちます、片や2年……そういう差が出てくるんです」
この姿勢を支えているのは一つの哲学だと代表は言う。
「自分の親の家を塗装するつもりで取り組めば、集中力は全然違うじゃないですか。その気持ちでやりなさいって自分に言い聞かせてやってるんです。そうなれば絶対丁寧な仕事になるし、ここはもらってないからいいでしょう、にはならない」
施工中は毎日作業内容をLINEのアルバムに写真で送る取り組みも続けている。お客様の不安を先回りで解消するこうした積み重ねが、確固たる信頼につながっている。
⚠️ 下請け依存・安売り競争……課題だらけの塗装業界で、どう動いてきたか
乙黒代表もかつては職人を5〜6人抱えて下請け仕事を回していた時期があった。
「リフォーム会社から全部もらって社員抱えてやってたんですけど、安い金額で受けて安い金額で回すから、全然利益にならない。みんないいやつは独立しちゃうし、だからもうやめたんです」
今は自身が直接施工する一人請負スタイルに切り替え、必要な時だけ信頼できる後輩に外注する形で運営している。月1〜1.5棟のペースで、小さくても利益がしっかり残るサイクルだ。
営業も、相見積もり合戦には加わらない。過去に施工した家の近隣を訪問し、顔見知りのお客様に声をかけるスタイルを貫く。
「昔あの時にやらせてもらったあれです、って言うと、つながりが早いんですよ。長くやってるとそういうのが多いから。それだけでやってますけど」
長年の施工実績が「地域の信頼」という資産になっている。安売り競争に巻き込まれない仕組みを、乙黒代表は「人との関係性」で解決してきた。
🌱 10年後のビジョン──「自分の技術を受け継いだ後輩たちと、地域を支えていく」
将来像は、規模拡大より「質の維持」に重きを置いたものだ。
「将来的には、僕が教えた技術を持つ専属スタッフが何人もいて、誰に当たっても同じ品質でできますよ、という形にしたい。そして僕自身は現場に出ないで、営業と経営に専念する」
塗装以外にも後輩の設備屋や板金屋とネットワークを組み、お風呂の交換や屋根のカバー工法なども窓口として受けられる体制を整えている。「困ったことはひとまず相談できる存在」として地域に根を張っていく姿勢だ。
若者へのメッセージを求めると、代表は少し笑いながら答えた。
「おこがましくて、そんなに大したことは言えないけど……とりあえず何かにチャレンジして、ダメだったらこっちに来なさい、ぐらいの感じですかね。こんな風に長くやってたら自然と積み上がっていくものがありますよ」
飾らない言葉の中に、20年積み上げてきた職人の確かな重みがある。
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取材を通じて感じたのは、乙黒代表の「自分の親の家だと思って塗る」という言葉の重さでした。派手な戦略ではなく、現場の一刷毛に宿る誠実さが、リピート率ほぼ100%という結果を20年かけて作り上げてきた。そのシンプルな強さが、深く印象に残りました。