🛠️ なぜエアコン業界を選んだのか? 原点にある正直な話
佐古さんがエアコン業界に入ったのは、いわゆる「天職を見つけた」というドラマチックな話ではありません。20代はパチンコ業界で働いていました。給料が良かったからという、至ってシンプルな理由でした。
ただ、20代なかばで主任を任されたころから、自分の将来を真剣に考え始めます。「パチンコはこれから先細っていきそう」という直感と、「店長になったら365日出勤が当たり前」という現実が重なり、「このまま60歳まで続ける気にはなれない」と感じていたといいます。
転職を考えた先に「手に職をつけたい」という思いがありました。資格やスキルなしに年齢を重ねることへの不安、そして大企業勤めの親が50代で役職定年を迎えた姿を見て、「定年まで会社に頼るのとは違う生き方がしたい」という思いも重なっていたそうです。
「いろんなところを受けたんですが、資格も何もない状態で雇ってもらえたのが、たまたまエアコン会社だったというのが正直なところです。でも、入ってみたら楽しかった。だから資格も勉強して取っていきました」
電気工事士を筆頭に、高圧ガス取扱いの資格、冷媒取扱技術者、クレーン・溶接の資格など、数え切れないほどの資格を現場で働きながら取得。働くうちに「この仕事を極めたい」という意欲が自然と育っていきました。中小建設業にとっても、職人として腕を磨き続けることの大切さが伝わるエピソードです。
⭐ 「妥協しない」が強み──お客様の口コミが証明すること
競合他社との差別化を尋ねると、佐古さんはためらわずこう言いました。「妥協しないことです」。シンプルですが、その言葉には具体的な裏付けがあります。
エアコンのクリーニングでは、外すのが面倒な部品も徹底的に分解して洗浄します。「前の業者はそこまでしていなかった」と言われることが多いと話します。また、作業前の養生(汚れや水が飛び散らないようにする保護作業)を丁寧に行うことも、口コミでよく褒められるポイントです。
「自分の中で、ここで終わらせたくないって思ってしまうんです。時間が迫っているからといって手を抜いた仕事はしたくない。自分が嫌なので」
業務効率の観点で言えば、1日に詰め込まず、1件ごとに十分な時間を確保するスタイルは回転率が悪いかもしれません。しかし佐古さんは「それでいい」と言い切ります。追われながら作業して仕上がりが落ちるくらいなら、件数を絞って質を守る。この姿勢が「また頼みたい」というリピーターを生み出しています。
また、暮らしのマーケットなどのプラットフォームを通じて依頼が来るお客様の中には、「ホームページがある業者を選んだ」という方も少なくありません。きれいに整備されたウェブサイトが、信頼感の一つの根拠になっているといいます。
💡 一人親方の現実と、どう仕事を安定させるか
中小建設業やひとり事業者にとって共通の課題が「仕事の安定確保」です。佐古さんにもその課題があります。かつては、前職の会社から下請けとして某回転寿司チェーン店の全国店舗を夜間にクリーニングして回るという仕事を受注していました。全国50店舗ほどを富山から鹿児島まで、昔から付き合いのある協力業者と二人で夜間作業、ホテルを転々としながらこなす、なかなかハードな出張仕事です。
この仕事は当初、年間のほぼ10ヶ月を占めていました。ところが数年前から業務体制が変わり、担当期間が約5ヶ月に縮小。残り7ヶ月を自分で仕事を獲得しなければならなくなりました。
「急に半分以上が空白になったんです。だからホームページを作って、自分でも集客しなあかんと思い始めました」
この変化をきっかけに、デジタルでの情報発信の重要性を実感しています。エアコンのトラブル情報や豆知識をウェブで発信することで、「信頼できる業者」として認識してもらい、プラットフォームに依存しない集客ルートを育てていくことが、今後の課題として見えています。中小建設業・設備業でも同様に、「待つだけではなく、発信して選ばれる」仕組みを整えていくことが、これからの時代に求められます。
🌱 大きくするより、質のいい仕事を──これからのビジョン
「従業員を大勢雇って会社を大きくしたい」という野心は、今のところ佐古さんにはありません。「まず自分一人が安定して食えること。どうせやるなら売上効率のいい仕事を選びたい」というのが、現実的なビジョンです。それは決して後ろ向きな話ではなく、一人で責任を持って品質を保てる範囲でやり続けることへの、プロとしての矜持だと感じます。
業界の将来についても、独自の見方を持っています。
「AIや機械に置き換えられる仕事が増えていくと言われていますが、エアコンの現場作業はそうはならないと思っています。だからこそ、手に職をつけることの価値は長く続くはずです」
また、「体を使う仕事はしんどい」というイメージから建設・設備業界の人気が下がっているとも感じていますが、「やっていくうちに楽しくなる。健康にもなる。プラモデル作りみたいな感覚で、技術が身につく喜びもある」と話します。これからこの業界に入ろうとしている人への、等身大のメッセージです。
一人で丁寧に、自分の仕事に責任を持ち続ける。派手さはなくても、そこにはブレない職人の哲学があります。
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取材を通じて伝わってきたのは、佐古社長の「自分として許せない」という一言に凝縮された職人気質でした。派手な野心はなくとも、仕事への筋の通し方が、確実にお客様の信頼を育てています。こういう一人親方の方々こそ、建設・設備業界の底力だと改めて感じました。