⛏️ なぜ採掘の道を選んだのか?その原点にある想い
税所代表がこの仕事に入ったきっかけは、父の背中だった。父はダムやゴルフ場の造成といった大規模工事に携わり、発破を使う現場を長く経験してきた職人だった。税所代表は高校卒業後、大手企業でまず修行の場を得た。様々な現場を経験しながら技術を磨き、その後も採石・採掘の世界を離れることなく歩み続けてきた。
「18から、ずっとこういう仕事に携わってきました」
約14年前に父の会社を引き継ぐ形で現在の事業を本格始動。それ以降も採掘一本で現場を続けてきた。発破という技術は業界外ではほとんど知られていない専門領域だが、税所代表はそこに自分たちの仕事の特殊性と誇りを感じている様子だった。中小建設業にとっても珍しい、ニッチかつ高い専門性を持つ職域で、気づけば30年以上、ひたすら現場と向き合ってきた。
🪨 うちにしかできないこと──現場が語る強みとは?
現在、株式会社山陽が稼働させているのは茨城県日立市の鉱山一現場のみ。そこに五名の従業員を全員投入し、元請けの採石会社から継続的に採掘工事を受注し続けている。契約は毎月続く形で、同じ元請けとの付き合いは数年に及ぶ。
「仕事は絶えずある。安全にやる。それが一番」
重機を使った採掘が中心となるが、作業エリアは傾斜のある山肌であり、発破を扱う現場だ。一歩間違えれば命に関わる。だからこそ税所代表が最も重視するのは「安全第一」の一言に尽きる。元請けからも「たとえ多少の損失が出ても、事故だけは起こすな」と言われており、それを守り続けることが信頼の核心だと理解している。
また、重機の操作が基本となる現場ならではの働きやすさも強みだ。「夏は涼しく、冬は暖かい」重機のキャビンで作業できる環境、残業はほぼなし、週休二日制(年間休日120日以上)、そして休日を増やす際には日給単価を改定して手取りが下がらないよう配慮した。こうした従業員への気配りは、口数は少なくとも、確実に税所代表の行動に表れている。
⚠️ 人手不足と採用難──課題だらけの現場で、どう動くか
中小建設業が直面する人手不足の問題は、株式会社山陽も例外ではない。過去には出入りが激しい時期が何年か続いた。ハローワーク経由では定着率が低く、知人紹介の方が長く続く傾向があるとはいえ、その紹介も限界がある。
「今までは限られた人数で現場を回さないといけない大変さがあった」
現在はTikTokを活用した採用活動により、直近で2名の新入社員を獲得することができた。採掘現場の発破シーンや重機の映像が反響を呼び、採用につながったのだ。現場に出ていることが多い税所代表はなかなか電話に出られないことも多く、それでも何度もかけ直してきた応募者が今の新入社員だ。「一回でも諦めずに連絡を続けてきた人が入ってきてくれた」と税所代表は言う。粘り強さを見せた応募者を評価するその姿勢は、現場で求められる人間性そのものを映している。
若い人材の「距離感の近い話し方」に戸惑いを感じることもある正直な一面も語ってくれた。しかし「悪気があってのことではない」と受け止め、対外的な場面でのふるまいをどう伝えるかを静かに考えている。中小建設業として人を育てることの難しさと、それでも諦めない姿勢が言葉の裏にある。
🌱 心の片隅にある夢──次の世代へのバトンと、地道な展望
税所代表に将来のビジョンを聞くと、慎重な言葉が返ってくる。事業の急拡大を望む気持ちは表には出さない。元請けとの長年の信頼関係を壊さないよう、独自に現場を増やすことには今のところ慎重な姿勢だ。
「想いを表立って出すわけにはいかない。でも、片隅にはある」
理想を問われれば、こう答える。今の現場を信頼できる誰かに任せ、自分は少し身を引きながら会社を広げていきたい。ただそれが実現するかどうかは、新しく入った従業員がどこまで育ってくれるかにかかっている。
72歳になる古参の従業員が長く支えてくれていることも、税所代表には大きな心の支えだ。一方で「自分が倒れたらどうなるか」という不安も正直に口にする。だからこそ、今の若い従業員に一言で動いてくれる「右腕」になってほしいと願っている。その気持ちを面と向かって言葉にするのは得意ではないが、週休二日制の導入も、単価改定による手取り保証も、すべては従業員を大切に思うがゆえの選択だ。言葉よりも行動で示してきた代表の、静かな愛情がそこにある。
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取材を通じて感じたのは、税所代表の「職人としての誠実さ」だった。多くを語らないが、元請けへの義理も、従業員への気遣いも、すべて行動に表れている。「言葉にするのが一番ダメ」と笑いながら話してくれた言葉が、むしろ印象に残った。伝えることが苦手でも、伝わっているものは確かにある。