🎨「違和感なく、綺麗に」── 風天堂・塚原裕之が一人で守り続ける内装仕上げの流儀

🖼️ 東京都町田市を拠点に、壁紙施工から和紙張り・表装まで幅広い内装仕上げを手がける風天堂。代表の塚原裕之氏は2016年の創業以来、一人で現場に立ち続けてきた職人だ。✨ 外資系ホテルや大手ゼネコン案件にも携わるなど、クロス一般にとどまらない高度な技術を持つ塚原氏が語る仕事への哲学と、これからの内装業界の姿とは。

🏗️ なぜ内装の道へ?父から受け継いだ「職人の血」

塚原氏が内装の世界に足を踏み入れたのは、ごく自然なことだったという。「もともと父親がこの仕事をしていたので、一番最初にやったのは20代前半ぐらいのときだったと思います」。二代目というほど改まったものではないが、幼い頃から身近で職人仕事を見てきた環境が、自然と業界への親しみをつくっていた。

最初は賃貸物件のクロス張り替えから始まり、その後はメーカー主催の勉強会や講習会に積極的に参加。そこで技能検定(表装技能士)の資格を持つ職人たちと多く出会ったことが、塚原氏に大きな影響を与えた。「温故知新ではないですけど、表装や表具の世界を勉強し始めて、技術がいる仕事だと気づいて面白いなと思いました」

途中、設備機器のメンテナンス会社に約4年間勤務した時期もあったが、その後再び内装業界へ。2016年に風天堂を創業し、独立開業した。今年でちょうど創業10周年を迎える。中小建設業において10年続ける企業はそう多くない。この節目が、塚原氏のこれまでの歩みの確かさを物語っている。

🔧 「クロス屋」を超えた強み ── 和紙張り・表装の専門技術とは

風天堂の強みは、一般的なクロス貼りにとどまらない、表装・和紙張りまでをカバーする幅広い技術にある。「クロス屋さんと表具屋さんの境界が曖昧になっている時代ですが、現場でちょっと特殊なものを貼る機会も多くあります」と塚原氏は語る。外資系ホテルのエントランスや、インバウンド需要を取り込んだ高級施設の壁面施工など、一般の職人ではなかなか携われない現場も経験してきた。

一級表装技能士の資格は、大手ゼネコンの現場への入職要件となる場合もある。「高級商材を扱うとき、そういう資格がないとって言われることもあるんで、持っていてよかったと思います」。こうした資格と技術の裏付けが、工務店から信頼を集める理由の一つだ。

また、老舗の表具屋が廃業していくなか、「誰に頼んでいいかわからない」という問い合わせが自然と集まってくるのも塚原氏の強みとなっている。職人の数が減りつつある分野において、技術を持つ人材の希少性はますます高まっている。中小建設業にとっても、こうした専門職との繋がりは現場の質を左右する大切な要素といえる。

⚠️ 「とりあえずやってくれ」は受けない ── 選ばれる職人として生き残る術

内装仕上げの業界が抱える課題は、職人の高齢化と技術継承の問題だけではない。塚原氏は、仕事の質と付き合い方にも問題意識を持つ。「とりあえずやってくれみたいな仕事は、もう全く受け入れなくなっちゃいました」とはっきり言い切る。

その背景には、元請け・工務店との関係性に対する明確な考えがある。「仕事をくれるお客さんではなく、お互いに知識や考えを合わせて、より良いものを作ろうという気持ちが合致できる人と仕事したい」。ビジネスパートナーとして現場を共に作るという姿勢が、長期的な信頼関係を生んでいる。

SNS禁止の大手現場が多く、施工実績を外部に発信しにくいという制約も正直に語ってくれた。「個人的に撮ってはいるんですが、なかなか出せない。そこはちょっと悩みかもしれないですね」発信で集客しにくい環境だからこそ、一件一件の現場で信頼を積み重ねる地道なアプローチが、今の塚原氏のスタイルになっている。

🌱 和紙張りの「受け皿」になる ── 面白い仕事を自分で取りにいく未来

創業10年を迎えた塚原氏が今、次のビジョンとして描くのは、和紙張りの専門家としての存在感をさらに高めることだ。「壁張りの和紙張りとなったらあの人、と思われるようになりたい」という言葉は、明快な目標を語っている。国内産の良質な和紙を活かした施工や、特殊な内装で困っている施主・工務店の受け皿になることを見据えている。

チームとしての体制づくりについても意識は向いている。「一人よりも二人、二人よりも三人のほうがクオリティは確実に上げられる」と語り、将来的には業界に興味を持った人を受け入れ、育てていきたいという思いもある。職業訓練校との繋がりを持つ知人がいることも、その可能性を感じさせる。

これから内装の世界に入る人へのメッセージを聞くと、「住宅でも店舗でも、常に人の目に触れる仕事です。違和感なく綺麗にという、当たり前のことほど難しいことはない。繊細な作業と気遣いと、思いを込めることが、作ったものに必ず反映される」と語った。道具は水と糊という、シンプルかつ難しい世界。だからこそ職人としての探求は終わらない。

📝 編集部コメント

取材を通じて感じたのは、塚原氏の「いい仕事をしたい」という一本筋の通った職人哲学でした。規模の拡大よりも質の追求を優先し、信頼できる相手と長く付き合うスタイルは、中小建設業のあり方として多くの方に刺さるものではないでしょうか。

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