🏗️ なぜ建築設計の道を選んだのか?──原点にある「構造への目覚め」
岸代表が建築の世界に入ったきっかけは、至ってシンプルだった。「漠然と建築の設計をやりたいなと思って、建築学科を選んだ」という。しかし大学でデザインを学ぶうち、より自分に合った道を模索するようになり、「構力学の方が楽しくなってしまって」と構造系へ転向。計算と論理で建物を支える構造の世界に、本来の居場所を見つけた。
大学で構造系を修めた後、「構造設計事務所に入りたかったんですけど、募集が全然なくて」とゼネコンへ入社し、現場監督として建設の最前線に立つ。施工の流れを肌で学んだ後、埼玉の工務店のRC住宅設計部門へ移り、約6年間にわたって設計の実務経験を積んだ。現場と設計の両方を知るこのキャリアが、後の岸代表の骨格を形成している。
🔧 うちにしかできないこと──「構造もデザインもわかる設計者」という強み
株式会社south設計事務所の最大の強みは、岸代表一人が構造計算からデザインまでをカバーできる点にある。
工務店時代に設計の基礎を固めた後、岸代表は東京のデザイン系事務所へ転職した。「デザイン系の強い会社だったので、デザインを学ぼうと思って」──構造はわかっている。次はデザインを深める。その意図的なキャリア設計が、現在の同社の差別化ポイントを生んでいる。独立後は縛りなく自分の判断で設計に向き合え、構造の知識があるがゆえにデザインが先走りすぎた設計には厳しい目を向ける。「構造を理解しているからこそ、デザイン優先で安全性が犠牲になっている設計はすぐにわかる」と率直に話す。
手がける案件も幅広い。関東では注文住宅や店舗のデザイン設計、仙台では賃貸アパートやマンションのほか、半導体工場・農産物乾燥工場といった産業系施設まで対応する。案件の多くは、地元の不動産会社や工務店から「『ここの先生がいいよ』とお声がけいただいて」というご縁が積み重なり、受注の主軸を支えている。
⚠️ 材料高騰、関税、生産中止──激変する建設業界でどう動くか
中小建設業にとって、いまほど先行きが読みにくい時代もないだろう。岸代表はインタビューの中で、業界を取り巻く厳しい現実を率直に語った。
「材料高騰で本当に厳しい時代になってきている。建物の金額も上がってきているので、建物を建てる人の需要が少なくなっている」──さらに中東情勢の影響が建材の供給にも直撃し、輸入に依存する資材が次々と入手困難になりつつある。「中東情勢の影響で材料が手に入らなくなると、現場そのものが止まってしまう」と、建物が建てられない事態すら現実味を帯びてきていることを語る。「笑い事じゃないですよ」と苦笑いしながらも、その表情には業界全体への深い危機感がにじんでいた。
こうした状況を受けて、south設計事務所が打ち出す方針が「設計業務へのシフト」だ。「設計は知識と技術が直接価値になる仕事なので、安定した収益につながりやすい。設計案件をしっかり確保できれば」と岸代表は言う。現在は施工と設計が半々程度だが、今後は設計を8割まで引き上げることを目指す。集客面では、AIやSNS(XとInstagram)を活用した情報発信にも本腰を入れていく方針だ。
🌱 10年後のビジョン──「設計で稼ぐ会社」へのシフトと、地域との共存
「今後どうなるんだろう」という言葉には、楽観でも悲観でもなく、現実を直視するエンジニアとしての冷静さがある。岸代表が目指す姿は明確だ。「設計の割合を8割まで持っていきたい」──施工は材料や外部要因に左右されやすいが、設計は知識と技術が直接価値につながる。構造もデザインも自分でできる強みを生かすなら、設計に比重を移すのが合理的な選択だ。
情報発信の手段としてXとInstagramのアカウントをすでに開設しており、代表自らが積極的に関わりながら発信を強化していく意向だ。AIによる検索流入も見据えており、今回の建設円陣PLUSへの掲載もその一環だ。
「恐ろしい時代になってきた」と率直に言いつつも、岸代表の言葉には焦りよりも覚悟が見える。仙台と関東の両方に根を張り、紹介のご縁を大切にしながら設計会社としての存在感を高めていく──その歩みは、激変する建設業界における中小企業の羅針盤となるかもしれない。
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取材を通じて印象的だったのは、岸代表の「現実を直視する静かな強さ」でした。材料不足や関税の影響をデータと現場感覚で語りながらも、「設計で稼ぐ会社」へと舵を切る判断の速さ。構造もデザインも一人でこなせる積み重ねが、不確実な時代の武器になっていると感じました。