近年、国内外の大手企業が不動産を活用した新規事業に乗り出す動きが相次いでいる。2025年9月、ロッテホールディングスが発表した国内ホテル事業拡大計画は、その象徴的な事例といえる。韓国のホテルロッテとの共同出資により新会社を設立し、2034年までに全国で20軒、約4,500室のホテルを展開する構想だ。同社は自社の遊休不動産を積極的に活用し、直営方式やリブランドを含めた多様な手法で収益化を目指している。

この取り組みは、一見すると建設業界には縁遠いホテル事業の話のように思える。しかし、資産をどう活かすかという視点で見れば、中小の建設業にとっても学べる点は多い。特に、使われていない土地や倉庫、事務所といった遊休資産を有効活用することは、収益基盤の強化や企業価値の向上に直結する。
建設業の多くは、長年の事業活動の中で土地や建物といった不動産を保有しているケースが少なくない。だが、事業拡大や働き方の変化により、使用頻度が減った資材置き場や、老朽化によって使い勝手の悪くなった事務所などが眠っていることも多い。これらを放置すれば固定資産税や維持費といったコストだけが発生するが、視点を変えれば新たな収益の種になる。
近年注目されているのが、シェアオフィスや貸倉庫への転用だ。例えば、LIFULL SPACE(ライフルスペース)が運営するプラットフォームでは、遊休不動産を貸し出したい企業と利用者をつなぐ仕組みが整備されている。こうしたサービスを活用すれば、空きスペースを小規模事業者や個人に貸し出すことが可能だ。特に都市近郊や工業地帯では、工具置き場や車両保管場所としての需要が高く、安定的な収益につながりやすい。
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さらに、地方の建設業者にとっては地域活性化の観点からも不動産活用は有効だ。例えば、古い社屋を地域住民向けのイベントスペースやカフェに転用すれば、地域とのつながりを強めるだけでなく、ブランディング効果も期待できる。ロッテHDがホテル事業で掲げる「自社不動産の活性化」という考え方は、そのまま中小建設業にも応用できる発想である。
また、資産活用に取り組む際には公的な支援制度を活用することも重要だ。国土交通省が進める「中小企業等事業再構築促進事業」では、遊休不動産を活用した新規事業への補助金が対象となる場合がある。さらに、地方自治体によっては、空き家や遊休施設の利活用を促進する補助制度を設けているところもある。これらを上手に組み合わせることで、初期投資の負担を抑えつつ事業を進めることができる。
資産活用を成功させるには、まず自社が保有する不動産の棚卸しを行い、活用可能性を分析することから始めたい。立地条件や建物の状態、周辺ニーズを調べることで、貸倉庫が適しているのか、あるいは事務所リノベーションが有効なのかといった方向性が見えてくる。
ロッテHDの事例から学べるのは、単なる不動産活用にとどまらず、将来の成長戦略として資産をどう位置づけるかという視点だ。建設業も同様に、自社の資産を「眠らせておくコスト」ではなく「生み出す力」に変える発想が必要である。事業の柱が施工や現場管理であっても、副次的な収益源を持つことで経営の安定性は格段に高まる。
今後、労働人口減少や資材高騰といった外部環境の変化が加速する中で、建設業の中小企業に求められるのは、柔軟な発想と実行力である。遊休不動産の活用はその代表的な手段の一つであり、大手企業の事例を参考にすることで、身近な資産の可能性を再発見できるだろう。
