日本建設業連合会(日建連)は、持続的な経済成長のため、政府に対し公共事業関係費の拡大と長期的な視点に立った予算編成を強く要望した。労務費や資材価格の高騰を適切に反映した予算確保に加え、当初予算段階での公共事業費拡大を求めている。
また、国土強靱化計画を着実に推進するため、従来を上回る規模の補正予算の早期編成も要請した。さらに、業界が直面する人材不足の課題に対し、政策的な公共工事設計労務単価の引き上げを提案し、他産業との賃金格差是正と若手人材の確保を目指す考えを示した。この動きは、建設業界全体の待遇改善と、安全で安心できる国土づくりの実現に向けた重要な一歩といえる。

Q1. なぜ今、公共事業費の拡大が求められているのか?
公共事業費の拡大が強く求められている背景には、複数の喫緊の課題が存在する。
第一に、労務費と資材価格の急激な高騰が挙げられる。近年の経済情勢により、建設現場で働く技能労働者の人件費や、鉄骨、セメントといった主要資材の価格は上昇を続けている。これらのコスト上昇分が公共事業予算に適切に反映されなければ、工事を受注する建設会社の経営を圧迫し、品質確保や安全管理にも支障をきたしかねない。日建連は、こうした実態を予算に反映させることを強く求めている。
第二に、国土強靱化の着実な推進という国家的な要請がある。日本は地震や台風、豪雨など自然災害のリスクが極めて高い国である。南海トラフ巨大地震や首都直下地震といった大規模災害への備えは待ったなしの状況であり、インフラの老朽化対策も深刻化している。これらの課題に対応するため、政府は「国土強靱化実施中期計画」を策定しているが、計画を遅滞なく、かつ迅速に進めるためには、安定した予算確保が不可欠である。そのため、日建連はこれまでの規模を上回る補正予算の編成も求めている。
第三に、持続的な経済成長の基盤整備という観点がある。公共事業は、道路、橋、港湾といった社会資本を整備することで、経済活動の効率化や国民生活の質の向上に寄与する。これは短期的な経済効果だけでなく、長期的な国の成長ポテンシャルを高めるための投資である。日建連は、短期的な景気対策に終始するのではなく、長期的な展望に立って日本の安定成長を支えるための予算編成を求めている。
これらの理由から、単に事業量を増やすだけでなく、質の高いインフラを整備し、国民の安全・安心を守り、日本経済全体の活力を維持・向上させるために、公共事業費の拡大が不可欠な状況となっている。
Q2. 「公共工事設計労務単価」が上がると、私たちの給与はどう変わるのか?
公共工事設計労務単価の引き上げは、現場で働く技能労働者の賃金に直接的な影響を与える重要な要素である。
設計労務単価とは、公共工事の予定価格を算出する際の積算に用いられる、職種ごとの技能労働者の基本的な賃金日額である。この単価が引き上げられると、公共工事全体の予定価格が上昇する。その結果、元請け企業が下請け企業に支払う工事代金にも反映されやすくなり、最終的に現場で働く一人ひとりの技能労働者の賃金水準向上につながることが期待される。
日建連の宮本洋一会長は、「労働時間を考えると、建設業技能労働者の賃金は他産業に比べると低い」と指摘し、この賃金格差が若手人材の入職を妨げる大きな要因であるとの認識を示した。実際に、賃金水準の低さは、建設業界が長年抱える人材不足問題の根幹にある。
そこで日建連は、単に市場の実勢価格を反映させるだけでなく、「『こうあるべきだ』という賃金を設定し、それに向かって設計労務単価を上げていく」という政策的な引き上げを国に求めている。これは、他産業との賃金格差を是正し、建設業が若者にとって魅力的な選択肢となるために必要な、戦略的なアプローチである。
この政策が実現すれば、公共工事に従事する技能労働者の収入は着実に増加する可能性が高い。賃金の上昇は、労働者のモチベーション向上や生活の安定に直結するだけでなく、業界全体のイメージアップにも貢献し、ひいては優秀な人材の確保と定着を促進する好循環を生み出すことが期待される。

Q3. 業界は、人材不足に対して他にどのような対策を考えているのか?
賃金水準の向上と並行して、日建連は多様な人材が活躍できる環境整備にも力を入れている。その柱の一つが**「けんせつ小町」に代表される女性活躍の推進**である。
宮本会長は、新たな「けんせつ小町活躍推進計画」の策定に触れ、女性活躍をさらに進めるためには、経営トップ自らが建設業界の展望を見据え、女性活躍に対する確固たる思いを発信することの重要性を強調した。経営トップの強いリーダーシップが、全社員、さらには業界全体の意識改革と行動変容を促す要になると訴えている。
具体的な取り組みとしては、女性が働きやすい現場環境の整備(女性専用トイレや更衣室の設置など)、柔軟な勤務体系の導入、育児や介護との両立支援などが考えられる。また、技術者や技能者としてキャリアを築いていくための研修制度の充実や、ロールモデルとなる女性社員の積極的な登用も不可欠である。
女性が活躍できる職場は、性別を問わず全ての従業員にとって働きやすい環境であることが多い。こうした取り組みを通じて、これまで建設業界への就業をためらっていた層にも門戸を開き、多様な視点や価値観を取り入れることで、業界全体の活性化と生産性向上を目指している。人材不足という構造的な課題に対し、賃金という「経済的魅力」と、働きがいのある「環境的魅力」の両面からアプローチしていくことが、持続可能な産業への転換に不可欠であるとの考えが示されている。
まとめ
建設業界は今、公共事業費の拡大と設計労務単価の引き上げという、待遇改善に向けた大きな転換点を迎えようとしている。これは、日々の業務に真摯に取り組む現場の技術者・技能者一人ひとりの努力が、正当に評価される社会を目指す動きに他ならない。国土強靱化という国民の安全を守る使命を担い、経済成長を支える基盤を築く建設業の重要性は、今後ますます高まる。業界全体の価値向上と、そこで働く全ての人々の生活の安定に向けた取り組みが、着実に前進することが期待される。
