業界全体が直面する構造的課題への対応が急務
全国建設業協会(全建)と都道府県建設業協会、国土交通省は、二〇二五年度地域懇談会・ブロック会議を二〇二五年十月八日に東京都内で開催した関東甲信越地区の会合を皮切りにスタートさせた。この会議では、建設業界が直面する複数の重要課題について集中的な議論が行われた。特に、老朽化するインフラ整備の必要性が高まる中、二〇二六年度から本格的に始動する**「第1次国土強靱化実施中期計画」を着実に推進するため、業界側から公共工事予算の拡充が強く要望された。
また、建設業に時間外労働の上限規制が適用されて二年度目となる現状を踏まえ、建設業の柔軟な働き方や、現場の喫緊の課題である熱中症対策に対応した積算基準の見直し**が主要な要望事項として挙げられた。さらに、建設工事における最低制限価格の算定基準率の引き上げも議論の俎上に上り、地域建設業が地域の守り手としての役割を果たし続けるための、安定的かつ継続的な事業量の確保が不可欠であると強調された。国交省側も、業界が抱える共通問題の解決に向け、さまざまな支援を通じたより良い環境構築に意欲を示している。

※この画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしました。
現場で働く皆様からの重要論点:Q&A形式で解説
建設業の最前線で働く職人や現場監督にとって、今回の議論は日々の労働環境や報酬に直結する内容を含んでいる。特に頻繁に寄せられる、時間管理、安全対策、そして賃金に関する疑問について、議論された具体的な要望内容を基に解説する。
1.時間外労働の上限規制緩和と柔軟な働き方は実現するのか
建設業は、工期の制約や天候の影響を受けやすく、他の産業に比べて時間管理の難易度が高い業界特性を持つ。このため、時間外労働の上限規制が適用されて以降、現場レベルでの対応が喫緊の課題となっている。
関東甲信越地方建設業協会の会合では、時間外労働の上限規制が適用されて二年度目を迎え、**働き方や時間管理の「制度そのものを見直す時期」**が到来しているとの認識が示された。具体的には、群馬県建設業協会から、時間外労働の上限規制の緩和を求める要望が提出された。これは、地域や現場の実情に応じたより柔軟な働き方を可能にするための重要な提案である。
現場の担当者や職人にとって、単に規制を守るだけでなく、効率的かつ持続可能な労働環境を構築するための制度的な支援が求められている。地域ごとの問題意識の違いを踏まえ、意見交換会で出た議論を協会活動に役立て、国交省と業界全体で共通問題の解決を目指す姿勢が明確になった。
2.夏の熱中症対策は積算や工期にどのように反映されるのか
夏季の建設現場における熱中症対策は、労働者の健康管理と安全確保の観点から最優先されるべき課題である。しかしながら、現行の積算基準や施工計画では、十分な対策を講じることが経済的に難しいケースも存在した。
長野県建設業協会は、熱中症対策を具体的に議論の対象として挙げ、「施工歩掛かりの見直し」や「施工時間帯の変更」など、より柔軟な対応を要望した。施工歩掛かりが熱中症対策に必要な時間的・経済的コストを適切に反映することで、現場は無理なく安全対策を徹底できる環境が整う。例えば、暑い時間帯を避けた作業時間のシフトや休憩時間の延長などが、積算上も正当に評価されるようになれば、現場の健康管理は飛躍的に改善する可能性がある。
現場で働く方々が安心して作業できるよう、熱中症対策に対応した積算基準への見直しは、業界全体の重要な焦点の一つとして位置づけられている。
3.適正な賃金確保に向けた具体的な制度改正の提案
現場で働く従事者にとって、技術や労働に見合った適正な賃金が確保されることは極めて重要である。
茨城県建設業協会からは、建設従事者の適正な賃金確保を実現するため、画期的な制度改正の提案があった。それは、人件費部分の積算単価額を全額受注者が受け取れる制度への改正である。この提案が実現すれば、中間コストや不透明な経費計上による人件費の目減りを防ぎ、現場で汗を流す職人や技術者へ、積算された通りの賃金が支払われる仕組みが確立されることになる。
さらに、業界全体として、建設工事における最低制限価格の算定基準率の引き上げも議論された。最低制限価格の引き上げは、不当な低価格受注を防ぎ、結果として品質の確保と、適正な労働条件の維持に寄与する。これらの動きは、現場従事者の賃金水準と待遇改善に直接影響を与える重要な構造改革の試みである。

4.地域ごとの仕事量確保と強靱化予算の行方
地域建設業が安定的に存続し、地域の守り手としての機能を継続するためには、継続的で安定的な事業量の確保が不可欠であると、全国建設業協会会長は強調した。
今後の公共工事の仕事量を左右するのが、二〇二六年度から開始される**「第1次国土強靱化実施中期計画」**の推進である。神奈川県建設業協会は、この強靱化の取り組みを着実に進めるため、二〇二五年度補正予算において、公共事業費として約二兆円を上回る予算を措置するよう国に要請した。
これにより、老朽化したインフラの整備や災害に強い地域づくりが進み、結果的に地域建設業に対し、中長期的な事業量の見通しを提供することになる。現場で働く人々にとって、安定した事業量とは、雇用の継続性と技術の維持・向上に直結する基盤となる。
5.外国人材の育成と確保に関する議論の現状
人手不足が深刻化する建設業界において、外国人材の活用は不可避な論点である。
新潟県建設業協会は、国土交通省が進める**「建設分野の外国人材育成・確保あり方検討会」**において、十分な議論を行うよう求めている。外国人材を単なる労働力としてではなく、適切に育成し、確保していくための制度設計や環境整備が、今後の業界の持続可能性を左右する。現場における技術継承や多文化共生の課題解決に向けて、国レベルでの真剣な議論が期待されている状況である。
まとめ
今回の全建ブロック会議で議論された内容は、公共工事予算の拡充から、建設現場の労働環境改善、そして適正な賃金確保に至るまで、現場で働く方々の切実な声が反映されたものであった。特に、時間外労働の上限規制の見直しや、熱中症対策を考慮した積算基準の柔軟な運用は、直ちに現場の働き方「働き方改革」に影響を及ぼす重要課題である。
地域建設業が持続的に機能し、強靱な国土づくりを支えていくため、業界と行政が一体となり、具体的な制度改革に向けて動き出している。
