全国建設業協会(全建)が都道府県建設業協会の会員企業1933社を対象に実施した「2025年度労働環境の整備に関するアンケート」の結果、建設業界における技能労働者の賃上げ傾向が継続している実態が明らかとなった。
直近1年間で下請け企業と契約する際の労務単価を引き上げた企業の割合は72.8%に達し、前年度から5.9ポイントの上昇を記録した。
しかしながら、政府と全建を含む建設業4団体が合意した「技能労働者賃金のおおむね6%上昇」という目標水準の達成は、多くの企業にとって依然として高いハードルであると判明した。
下請け企業における技能労働者の賃上げ程度について、「6%以上引き上げた」と回答した企業は21.7%にとどまり、「6%未満引き上げた」企業が63.7%と過半数を占めている。数字から見て、目標達成の難しさが浮き彫りとなっている。
賃上げ目標達成の難しさと継続的な重圧
建設業界ではここ数年、毎年賃上げが求められ、直近では数値目標も引き上げられている状況が続いている。直近のアンケート結果によれば、下請け技能労働者の賃上げ目標の達成割合は、25年度が21.7%であったのに対し、前年度の目標(5%超の上昇)をクリアした24年度の34.7%から大きく減少した。
同様に、直用技能労働者においても、25年度に目標をクリアしたのは16.3%であり、24年度の29.6%と比べて半分近くにまで減少している。このデータは、継続的な賃上げの必要性を認識しながらも、特に地域建設業が体力的に息切れしつつある状況を示唆するものである。
直用雇用する職員全体の賃金については、約9割の企業が基本給や一時金を引き上げているものの、技能労働者に焦点を当てた場合、目標達成の難しさが際立っている。政府との賃上げに関する申し合わせ事項については、全体の8割以上が認知している事実がある。
しかし、目標達成の割合が大幅に低下したことは、現在の経済環境や地域ごとの事業構造が、一律な高い賃上げ率の実現を困難にしている現実を物語っている。

安定雇用への移行:給与体系に見られる構造変化
技能労働者の給与体系には、安定志向への明確な構造変化が見られる。アンケート結果によると、技能労働者の給与体系として**月給制を採用する企業の割合が56.2%**となり、前年度から3.5ポイント上昇した。これに対し、日給月給制は3.1ポイント下降し、30.6%となっている。
月給制への移行は、技能労働者に対し、稼働日数に関わらず一定の収入を保証する安定的な雇用形態を提供しようとする企業の意図の表れである。これは、建設業界における人材確保や定着、ひいては働き方改革を推進する上での重要な動きと捉えることができる。
日給月給制の採用割合が減少し、月給制が過半数を占めたという事実は、業界全体で労働条件の改善と安定化が進められている証拠である。
地方の厳しい経営環境、若者の流出が深刻化
継続的な賃上げの圧力と、目標達成の難しさの背景には、地域建設業が抱える深刻な経営環境がある。アンケートに寄せられた自由意見からは、地方の厳しい現実が明らかとなっている。
業界内では「地方は民間工事が非常に少なく公共工事に依存するしかない」との声も多い。さらに、「公共工事の減少や少子高齢化、若者の流出などで会社経営は危機的状況にある」という切実な窮状も訴えられている。
地方の中小企業においては、構造的な人口減少や経済活動の偏りにより、賃上げを実現しながら若者の確保を同時に行うことが非常に難しい状況にある。地域建設業が継続的に事業を維持するためには、賃上げ努力に対する外部からの支援が不可欠であるという認識が広まっている。
厳しい状況下にあっても、下請け契約する際の今後の労務単価については、55.3%の企業が「引き上げる予定」と回答している。これは、企業が技能労働者の待遇改善に向けた継続的な努力を行う意思を持っていることを示している。
しかし、この意向を実現するためには、後述するような政府や行政による強力な支援策が求められている。

企業が求める具体的な支援策
賃上げを継続し、地域建設業の経営を安定させるため、政府や行政に対する具体的な要望は多く挙がっている。
「賃金の引き上げに伴う支援を充実させてほしい」という声も多く、賃上げによるコスト増を企業努力だけで吸収しきれない地域においては、直接的あるいは間接的な支援策が、経営維持と賃上げ継続の鍵となる。
また、公共工事の設計労務単価に関する要望も極めて切実である。従来の枠を超えた、抜本的な改善が必須といえる。
公共工事の設計労務単価が、実際の賃上げ水準と乖離している現状があるため、公共工事に依存する地方の中小企業が技能労働者の待遇を改善するためには、この単価を大幅に引き上げることが必要不可欠である。
継続的な賃上げと労働環境の整備は、業界全体にとっての喫緊の課題であり、政府、元請け、そして地域の事業者が連携し、経営体力の維持と適切なコスト転嫁を実現していくことが求められている。
まとめ
全国建設業協会の調査結果は、建設業界が賃上げ努力を継続している一方で、特に地域建設業が「6%上昇」の目標達成に苦慮し、経営体力維持の限界に直面している現状を明確に示している。
月給制への移行など待遇改善の兆しは見られるものの、地方の事業継続には、設計労務単価の抜本的な引き上げや、賃上げに伴う支援の充実が不可欠であり、これらの要望が強く行政に突きつけられている。
現場の技能労働者が安定した環境で働き続けられるよう、業界全体での構造的な課題解決に向けた取り組みが急務といえる。
