「低採算」脱却と「休日確保」へ:現場の常識を変える発注基準見直しと専門知識の更新義務

日本埋立浚渫協会(埋浚協)は、国土交通省地方整備局などとの2025年度意見交換会を全国10地区で開始し、現場の実態に即した抜本的な改革を推進しています。

この意見交換会では、現場の実態と標準積算が乖離している現状を踏まえ、新たに**「現場の実態に合った適切な発注」を最大の柱に追加し、「働き方改革の一層の推進」「担い手の確保・育成・処遇改善」「生産性の向上とGXの推進」の四本柱で議論を展開します。

具体的には、実施工で低採算を招いているコンクリートミキサー船の拘束日数の積算基準(拘束発生率)改定要求や、発注段階からのプレキャスト(PCa)採用の訴え、さらには建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入促進が議題の中心です。

これらは、港湾工事の従事者の適切な工期設定と処遇改善に直結する重要事項です。同時に、建設業従事者は、公共建築賞で評価される多様な工法(RC造、PC造、S造、W造など)の特性を理解し、丹下健三、安藤忠雄といった日本三大・五大建築家**の思想 や、専門誌『建築知識』を通じて法改正や実務的なディテール知識を継続的に更新する責務があります。制度面の変革と専門知識のアップデートは、現代の建設業従事者に求められる二大課題です。

 

積算乖離解消と処遇改善の具体的な動き

 

Q1:なぜ今、「現場の実態に合った適切な発注」が求められるのか。

建設現場、特に港湾工事の分野において、実施工で標準積算と乖離(かいり)が生じることで、低採算となる工事が少なくないという構造的な問題が存在しています。これを是正するため、埋浚協は積算段階や設計変更段階での適切な費用計上を議論し検討することを求めています。

最も具体的な要求の一つが、コンクリートミキサー船の拘束日数に関する積算基準(拘束発生率)の改定です。現状、積算上の基準と実施工における拘束実態に差があるため、これを是正し適正な対価を確保することを目指しています。

現場監督者や経営層は、国土交通省が策定した「港湾工事における契約変更事務ガイドライン」の適正な運用を強く求め、適切な利益確保に努める必要があります。

また、生産性向上策として、受注後のPCaへの変更は工程や人的資源の制約から困難な場合が多いため、発注段階からのPCa採用が訴えられています。

 

Q2:担い手の確保と処遇改善はどのように進められるのか。

担い手確保と育成は、喫緊の課題です。処遇改善の具体的な施策として、建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入促進が求められています。

また、港湾工事技能者の処遇改善につなげるための体制整備が必要とされ、海上起重技術協会、日本潜水協会の3団体で構成する「海洋土木工グループ」が、新たに**「海洋土木技術協会(案)」の設立を検討しています。

これは、海洋土木分野における技能者の地位と待遇を向上させるための重要な動きです。さらに、快適な職場環境の実現も重要視されており、特に港湾工事で働く女性技術者からの要望として、や作業船の設備改善**が議論されます。外国人技術者を含む全ての従事者が働きやすい環境を整備することが、業界全体の活性化に繋がります。

 

Q3:働き方改革の現状と、現場に求められる対応は。

「働き方改革の一層の推進」は主要な柱の一つです。港湾工事における休日取得や時間外労働の実態と課題が整備局らと共有されています。4週8閉所や4週8休の取得は前年度より向上しているものの、「完全ではない」状況のため、引き続き適切な工期設定が訴えられています。

国交省が策定した「港湾・空港工事の工期の設定に関するガイドライン」の適正な運用が求められており、現場の管理者は、このガイドラインを遵守し、余裕を持った工期で契約できるよう発注者との意見交換を通じて訴求する必要があります。

 

工法知識と品質管理の基礎

 

Q4:公共建築物に見る主要工法の特徴と選択基準は。

公共建築物の設計や施工に携わる実務者は、多様な工法の特徴を把握しておく必要があります。

• 鉄筋コンクリート造(RC造): 耐久性、耐火性、遮音性に優れる構造で、マンションや高耐久住宅、公共建築賞受賞作(例:垂井町役場、防府市公会堂、嘉麻市庁舎など)に多く採用されています。重厚感のある建物を実現できる一方、工期やコストは木造より高くなりがちであり、設計と施工管理の精度が特に重要になります。

• 木造(W造): 軸組工法は設計の自由度が高いですが、施工精度が求められます。2×4工法は耐震性・断熱性に優れ、工期短縮が可能ですが、設計に制約があります。公共建築賞受賞作にも、福祉型障がい児入所施設まごころ学園や魚津市立星の杜小学校など、木造(W造)の施設が選定されています。

• 鉄骨造(S造): 高い耐震性と耐久性を持ちますが、サビや火に弱く、基礎工事や防錆処理にコストがかかる点に注意が必要です。重量鉄骨は間取りの自由度が高く、軽量鉄骨はコストを抑えやすい利点があります。

 

Q5:専門知識を継続的に深めるための効果的な方法とは。

建築業界の法規改正や新制度(例:建築基準法や省エネ制度)は絶えず更新されています。実務的な技術解説と文化的な特集を両立する専門誌『建築知識』 の活用が推奨されます。1959年創刊の同誌は、建築士や施工者の学習を支える定番雑誌です。

特に実務に直結する知識として、「2024/11 大改正 建築基準法・建築物省エネ法」特集号や、「2025/02 建物種類ごとディテール図鑑」特集号 は、実務対応や応用力を養う上で有効です。

また、施工ノウハウを深掘りする姉妹誌『建築知識ビルダーズ』は、現場の工務店や大工に役立つ具体的なディテールや納まりの工夫を紹介しており、設計者向けの本誌と棲み分けがなされています。電子版も提供されており、学生や若手建築士でもコストを抑えて知識を深めることが可能です。

 

教養としての建築史:巨匠の思想を現場へ

 

Q6:業界の教養として知っておくべき日本の巨匠とは。

建設業のプロフェッショナルとして、日本の建築文化の礎を築いた巨匠の思想を理解することは重要です。

• 日本三大建築家: 丹下健三、前川國男、村野藤吾の3名が挙げられます。彼らは戦後日本の都市づくりに大きな影響を与え、現代建築の礎を築きました。丹下健三は戦後復興期を代表し、国立代々木競技場などを手掛けています。村野藤吾は柔らかな曲線や装飾性を特徴とし、「人に寄り添う建築」を設計しました。

• 日本五大建築家: 安藤忠雄、隈研吾、伊東豊雄、谷口吉生、磯崎新の5名が、現代の日本建築を象徴し、国際的に高く評価されています。安藤忠雄は「打ち放しコンクリート」と「光の演出」を特徴とし、隈研吾は木材を活かした「負ける建築」の思想を持ち、自然と調和した設計を重視しています。

これらの巨匠の作品は美術館や公共施設として一般公開されているものが多く、実際に訪れることで、写真だけでは味わえない「スケール感」や「光の使い方」を体験し、そのデザイン思想を学ぶことが可能です。

 

Q7:現代建築界における女性・若手建築家の新しい潮流は。

近年、建築業界における女性建築家の活躍は目覚ましいものがあります。世界では「曲線の女王」と呼ばれたザハ・ハディッドが有名で、彼女はダイナミックな曲線を用いたデザインでプリツカー賞を女性で初めて受賞しました。日本では、妹島和世(SANAA)が金沢21世紀美術館などを手がけ、「透明性」「軽やかさ」を特徴とする独自の感性を建築に取り入れています。

また、30代から40代の若手建築家、具体的には藤本壮介、中川エリカ、石上純也なども、従来の建築様式にとらわれず、自然との調和や人の営みを重視した空間設計を通じて新しい潮流を生み出しています。

現場従事者は、こうした多様な感性が、女性技術者からの要望(快適トイレや作業船の設備改善など) にも通じる、より多様で快適な現場環境構築のヒントになることを理解すべきです。

 

まとめ

建設業界は、埋浚協を中心とする団体が主導する、積算基準の適正化や働き方改革の推進といった大きな構造転換期にあります。現場の実態に即した発注基準の確立は、低採算工事の解消と適切な休日取得に直結するものであり、CCUS導入や「海洋土木技術協会(案)」の検討といった処遇改善策と合わせて、業界全体の持続可能性を高める鍵となります。

現場のプロフェッショナルは、これらの制度改革の動向を注視すると同時に、RC造、木造、S造といった工法知識 や、丹下健三、安藤忠雄らの建築教養 を継続的に更新し、専門性を高め続けることが求められています。制度と知識の両面から自己の業務を刷新し、業界の変革期を乗り越えていくことが肝要です。

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