高砂熱学工業は、中部電力、建設コンサルタントのトーホーレディングス、設備工事業の三和ホールディングス(すべて岐阜県内企業)と共同で、小水力発電を活用したグリーン水素の地産地消モデル確立を目指す本格的な提携を開始しました。
これは、日本が目指す2050年カーボンニュートラル達成という国家的目標達成に向け、地域の再生可能エネルギーポテンシャルを最大限に活用するための重要な戦略的動きです。
この10年間の連携期間を通じ、各社は小水力発電による電源開発を強化し、約60基の建設ポテンシャルを視野に入れた事業展開を進める計画です。
このプロジェクトは、地域の建設関連企業にとって、単なるインフラ整備に留まらない、新たな安定的な受注機会と収益源を確保する「次の時代のゲートウェイ」となる可能性を秘めています。
具体的には、トーホーレディングスと三和ホールディングスが小水力発電施設の導入と保守管理を担い、高砂熱学工業がエネルギーマネジメントシステム(EMS)構築を含む全体的な水素製造・利用計画を主導することで、地域内で完結する脱炭素サプライチェーンの実現を目指します。
Q1: 建設業者が関わる具体的なプロジェクト内容と、小水力発電の利点とは何でしょうか?
このプロジェクトは、地域の河川や農業用水路など、未利用のエネルギー源を利用して発電する小水力発電設備を多数建設することを中核としています。
建設業者が担う役割は、水利権に基づく水路の確保、土木構造物の設計・施工、発電機や付帯設備の基礎工事、そして発電建屋の建設など、多岐にわたります。
トーホーレディングスは、岐阜県全域において、既に10,000箇所以上の小水力発電候補地を調査しており、その中から約60基の具体的な建設ポテンシャルを発掘しました。
小水力発電がグリーン水素製造に適している最大の理由は、その電源としての安定性にあります。太陽光や風力のように天候に左右されることなく、昼夜を問わず安定的に電力を供給し続けることが可能です。
この安定した電力が、水を電気分解して二酸化炭素を排出しないグリーン水素を製造するプロセスに最適なのです。
さらに、出力規模が1,000kW以下の小水力発電は、環境アセスメント(環境影響評価)の対象外となる場合が多く、大規模な電源開発に比べて許認可や設置までのリードタイムを短縮しやすいという利点があります。
これにより、地域の中小建設業者でも参入しやすく、地域密着型のインフラ整備として迅速な展開が可能となります。
この事業は、今後10年間で約60基という具体的な建設需要を創出し、関連する土木・設備工事の安定供給源となることが期待されます。

水素供給のイメージ図
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。
Q2: 地域の中小建設・設備企業にとって、この連携事業から生まれる具体的な経済メリットは何ですか?
小水力発電設備の導入は、地域経済への貢献度が非常に高いビジネスモデルです。
建設費用の多くは、資材調達や施工において地域内での発注・契約が前提となるため、地域の中小建設コンサルタント、土木業者、設備工事業者に対して、持続的かつ大規模なビジネスチャンスを提供します。
この提携に参加している三和ホールディングスのような地域企業は、小水力発電施設の導入・保守管理を担うことで、単なる工事請負業者から、地域エネルギーインフラの運用・保守を担う中核企業へと事業領域を拡大します。
同社は既に10億円規模の設備投資を確保しており、これは地域の建設関連企業が安定した収益基盤を築くうえで重要な要素となります。
また、製造されたグリーン水素は、地域のバス、燃料電池車、トラックといったモビリティの燃料や、公共施設や産業施設への熱供給に充当される計画です。
これに伴い、地域の建設・設備業者は、水素ステーションの整備、水素利用設備の設置・改修工事、そしてこれらのインフラを長期的に維持管理するメンテナンス業務といった、新たな付帯インフラ整備需要を享受することになります。
地域密着型のエネルギーサプライチェーンが構築されることで、エネルギー費用が地域内で循環し、地域全体の経済活性化にも寄与します。
Q3: 建設現場で求められる新しい技術やスキル、そしてDXの必要性について解説してください。
この脱炭素社会に向けたインフラ整備において、建設業に求められる技術は従来の土木・建築技術に留まりません。
高砂熱学工業が全体事業を主導し、**エネルギーマネジメントシステム(EMS)**の構築を担うことからも明らかなように、建設・設備業者は、発電設備そのものだけでなく、高度な制御システムやモニタリング技術を統合する能力が必須となります。
現場監督や技術者は、小水力発電の効率を最大化するために、水流や地形といった地域の特性を深く理解し、精密な設計と施工を行なう専門性が求められます。
さらに、グリーン水素を安全かつ効率的に製造・利用するための水素関連設備の知識、設置技術、そして厳格な安全管理体制の構築も、今後不可欠なスキルセットとなります。
複数の発電所が地域に分散して設置されるため、これらの施設を効率的に運用・保守するためには、**DX(デジタルトランスフォーメーション)**の導入が鍵となります。
IoTセンサーを活用した発電状況の遠隔監視、AIを用いた予知保全システムの導入など、デジタル技術を用いた施工管理や運用管理が求められます(※前回の回答から補足)。
建設業者は、これらの新技術に積極的に取り組み、従来の施工能力に加えて、デジタルエンジニアリング能力を融合させることが、次の10年間の競争力維持に直結します。
地域のエネルギー構造そのものを設計・構築する「エンジニアリングパートナー」への転身が求められる時代です。

(右から)高砂熱学工業の久保田浩司副社長、小島社長、飛騨五木ホールディングスの井上社長、井上企画研究室長
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。
Q4: 建設業界が長期的な事業展望のなかで直面する「エンジニアとしてのチャレンジ」とは?
このプロジェクトは、単なる公共工事の受注機会ではなく、事業を推進する地元企業トップが「エンジニアとしてチャレンジし続ける」機会であると強調するように、技術者一人ひとりの意識と能力変革を強く促しています。
小水力発電は、地域ごとに水利権や水文条件が異なり、画一的な設計が困難です。このため、現場の技術者には、常に変化する環境や条件に応じて、最適なソリューションを提供するための高度な応用力と問題解決能力が求められます。
これは、ルーティンワークではなく、技術的な創造性を発揮する機会といえます。
また、この連携事業は、2050年のカーボンニュートラルという長期的な目標を見据えたものであり、地域企業に今後10年間にわたる安定した事業基盤を提供します。
建設業者が単発のプロジェクトで終わらせず、設備の長期的な保守・メンテナンス事業にも関与することで、収益の多角化と安定化を図ることが可能です。
地域建設業が、脱炭素インフラの整備を通じて地域社会のレジリエンス(強じん性)強化に貢献することは、社会的な意義も非常に大きく、技術者のモチベーション向上にもつながります。
地域に根差した企業が、次世代のエネルギーインフラを支える中核となるためには、変化を恐れず、新しい知識と技術の習得に投資を続けることが、最も重要な「チャレンジ」となるでしょう。
まとめ
岐阜県における小水力発電とグリーン水素の地産地消モデル構築に向けた官民連携は、地域の中小建設・設備業者に、長期にわたり安定した建設需要と、事業拡大の機会を提供する画期的な取り組みです。
この事業は、単なる工事の受発注に留まらず、脱炭素化という国家目標の達成に向けて、建設業が「地域のエネルギーインフラを創造するエンジニアリングパートナー」へと進化するための試金石です。
