アス合材価格転嫁の壁――中小建設会社が知るべき「限界稼働率」と供給リスク」

📌今回は、道路舗装に使われる アスファルト合材(いわゆる「合材」)を巡る 価格転嫁が進まない現状 と、 製造工場の稼働率低迷がもたらす“地域供給リスク” に焦点をあて、現場視点で押さえておきたい制度・取引実務まで解説します。

①合材価格の“転嫁が進まない”実態

まず、背景を整理しましょう。

合材に使われるストレートアスファルトや A重油など、原材料・燃料コストは上昇が長期化しています。例えば、上昇幅が約1.7倍というデータもあります。

しかしながら、合材の販売価格(東京地区、日本アスファルト合材協会調べ)は、原材料上昇の影響を十分に受け止めておらず、 価格転嫁が1〜2割程度の上昇にとどまるケースが多いとの情報があります。

また、政府(国土交通省)も、2022年4月付で「原材料費等の高騰に応じて適正な取引価格を当事者間協議の上設定するよう」通知を出しています。

同省の直近データでは、価格動向として「合材(新材・再生材)がやや上昇」、需給動向として「合材新材がやや緩和」となっており、需給がゆるんでいる=つまり需要が落ちている可能性も指摘されています。

以上から、下請け・発注サイドとも「値上げをそのまま価格に反映できていない」「工場側にも余裕がない」という現実が浮かび上がります。

中小建設会社の現場視点でいえば、「合材コストの上昇分を請負金額に反映できるか」が将来の利益を大きく左右します。

※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。

②なぜ「転嫁できない」のか?3つの要因

この価格転嫁の停滞には、構造的な理由があります。現場目線で押さえておきたい3つの要因を整理します。

1⃣ 需要減少&稼働率低迷

合材の製造数量は、ピーク時(1992年度)以来大幅減少しており、日本アスファルト合材協会のデータでは2024年度に会員企業で3 360万トンと前年度比▲2.6%となっています。

稼働率(会員工場)は全国平均で約32.8%と低迷しています。

供給側が余裕を持てない=価格交渉力が弱くなる構図です。

2⃣取引構造の制約

生コンなどと異なり、合材は「共同販売」などによる価格決定が禁止されています。価格交渉は工場・問屋・施工会社という個別交渉に依存します。

公共発注者や大手発注者が「原材料高騰の反映を協議せよ」と通達していても、下請け・中小業者は「交渉を仕掛けられる立場」ではないことが多いです。

3⃣発注側・公共工事の予算制約

道路工事全体の予算が横ばい、あるいは微減の中でコストが上がっているため、「単価は据え置き」のまま施工量を増やしたり工期を厳しく食い込んだり、という発注条件も見られます。

中小の建設会社としては「材料上がってるのに、請負金額はそのまま」という構図に直面することになります。

③現場監督・中小企業が押さえておくべき“取引の実務ポイント”

では、現場や中小企業として、何を意識しておくべきか。具体的に3つのポイントを紹介します。

✔ 段階①:原材料高騰を「見える化」する

ストレートアスファルト、A重油、燃料、運搬費、人件費…。コスト上昇の要素を自社データ(過去実績)として整理しておきましょう。

製材メーカー(合材工場)から提示される見積書・納入単価の変化を記録しておき、「どれくらい上がっているか」数字で説明できるようにすることが、交渉の第一歩です。

✔ 段階②:発注者・元請との協議タイミングをつくる

公共工事・私発注工事ともに、「原材料費の高騰を受けて価格転嫁を検討せよ」という通知が出ています(国土交通省など)

発注者から「変更契約・見直し」の提案が出たら、すぐに自社材料コスト上昇の資料を持って協議に臨む。

工期・施工条件・量の見直しも交渉材料になります。「材料高だから施工条件見直したい」という視点を持つこと。

✔ 段階③:地域供給リスクを想定し工場との連携強化

製造工場の稼働率が低く、地域供給に“限界稼働率”という観点も生まれています。災害復旧時などに地域の合材プラントが減ってしまうと、急な需要変化に対応できません。

中小建設会社としては、「いつも使っている合材工場が休止・撤退するとどうなるか」をシミュレーションしておきましょう。

代替工場の検討・納期・運搬コストがどう変わるかを押さえておくことが重要です。

発注元・元請側にも「合材の供給リスク」という観点を伝え、材料単価だけでなく供給安定性も評価対象に入っているという意識をもっておくと、交渉力が上がります。

④「限界稼働率」と地域のインフラ影響も考える

中小建設会社の視点ではあまり語られないキーワード「限界稼働率」が、実は大きな視点です。

製造工場がある地域では、一定の稼働率を下回ると設備維持・品質管理・流通コストの観点から採算がとれず、撤退や統廃合の可能性が高まります。

例えば北陸・沖縄など、全国10地区中で稼働率が30%以下の地域も多く報告されています。

製造・出荷が困難になると「材料取り合い」「急な単価上昇」「納期遅延」というリスクが増大。結果的に中小企業が受注した工事にも影響が波及します。

つまり、「価格が安くても納期が遅れて現場が困る」「材料代を据え置きで受けても、将来の供給が怪しくなる」―この両面を見たうえで取引判断をしなければなりません。

発注仕様書に「合材の納入体制」「代替供給先」「価格見直し条項」が盛り込まれているかを確認しておくと、急な材料高・供給変動に備えやすくなります。

⑤まとめ:中小建設会社が次にとるべきステップ

最後に、現場・経営の両視点で取るべきアクションを整理します。

💡自社コストデータを更新:合材・燃料・人件費の上昇幅を記録し、見える化する。

💡発注先・元請との協議に備える:原材料価格高騰の影響を資料化し、価格転嫁の協議に臨む。

💡合材供給体制を確認する:使用している合材工場の稼働状況・地域の供給リスクを把握。代替プランを検討。

💡契約仕様をチェック:見直し条項・代替材料・納期条件などが盛り込まれているか、現場監督レベルでも確認する。

💡発注側にも供給リスクを伝える:「材料が高い・供給が不安定」という現場の実態を共有し、協議の土壌を作る。

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