国交省における労務費や技能者賃金の実態を把握する試行について
国土交通省は現在、建設工事における労務費や賃金の適正水準確保を目的とした実態把握の試行的な取り組みを全国の公共工事を対象に展開中です。
この取り組みは、請負金額から労務費や賃金を算出できる仕組みを構築するための基礎データ収集を主眼としています。
具体的には、受注者に対して労務費、賃金、法定福利費の三つのデータ提出を求めており、特に賃金データについては、施工体制台帳に記載される技能者ごとの情報を把握する方針です。
この試行への参加は現在のところ金銭的なインセンティブ(優遇措置)を伴わないため、国土交通省は受注者に対し、この取り組みの目的や重要性を「受注者に丁寧に説明する」ことで、自発的な協力を促す考えを示しています。
収集されたデータは、将来的に公共工事の積算基準の改善に活用され、建設業全体の労務費の確実な確保を目指すものと想定されています。
国交省の賃金実態把握、何が目的なのか?
この試行的な実態把握の最大の目的は、建設工事における労務費および賃金の確実な確保にあります。
特に賃金については、施工体制台帳に記載された技能者の賃金実態を把握し、請負工事費から労務費や賃金を算出できる仕組みづくりに資するデータを集めることが重要視されています。
これにより、最終的には建設業者が適正な対価を得て、それが現場で働く技能者の賃金に適切に反映される環境を整備する狙いがあります。
現在、この種の調査では金銭的なインセンティブは付与されていませんが、国は取り組みの必要性を丁寧に説明し、受注者の主体的な参画を促しています。
労務費の確実な確保は、建設業界の持続可能性と人材定着の基盤であり、この調査はそのための客観的根拠を得るための重要なステップと位置づけられています。

具体的にどのようなデータを求められているのか?
受注者に対して提出が求められるデータは、大別して三つの要素です。
一つ目は「労務費」。
二つ目は「賃金」で、これは施工体制台帳に基づく技能者ごとの情報を含みます。
三つ目は「法定福利費」です。
これらのデータは、国土交通省が全国の公共工事を対象に集めており、建設業の適正な取引慣行の確立、特に労務費の確保状況を明確化するために不可欠な要素となります。
賃金データは、請負金額から労務費や賃金を算出できる仕組みを構築するうえで、中心となるデータと見なされています。
データ提出は、本省管理のソフトウェア・システムを通じて効率的に実施できるよう、現在、ソフトウェアベンダーとの連携を考慮しながら、そのための調整も進められています。
受注者には、提出が求められた際に正確なデータを速やかに提供できるよう、日頃からの労務管理体制を強化することが求められます。
収集されたデータはどのように活用されるのか?「目安」とは何か?
収集された労務費や賃金のデータは、建設業および職種ごとの「目安」を算定するために利用されます。
この「目安」は、データ分析を経て算出され、調査に協力した受注者にフィードバックされることになります。
まず、建設業全体における「目安」の考え方ですが、これは工事の請負金額から純工事費を差し引いたうえで、建設工事の確保された労務費率を100%と見なして基準値を定めます。
この基準値は、積算上の労務費が実際に適切に確保されているかを確認するための客観的な指標となります。
次に、職種ごとの「目安」については、施工体制台帳などを通じて把握された建設業者の平均賃金を計算し、専門工事業者が適用する賃金水準を100%として設定します。
この職種ごとの目安設定には、現場で働く個々の技能者の賃金実態が反映されるため、現場の状況に即した適正水準の議論が進むことが期待されます。
このプロセスによって設定される「目安」は、発注者側が積算基準を改善する際の重要な根拠となることを意図しています。

※画像は日刊建設新聞さまからお借りしています。
賃金データ提出で、個人の情報が漏れる心配はないのか?
提出される賃金データは、施工体制台帳に記載される技能者ごとの情報を基にしますが、この調査は、個別の技能者の処遇を直接的に問題視することが目的ではないとされています。
調査の背景にあるのは、労務費の確保や賃金水準が適正かを検証するための客観的なデータ収集であり、請負金額から労務費の確実な抽出を目指す仕組み構築に資するためのものです。
これはあくまでも、建設業全体の労務費確保の構造的な課題を解決するための統計的取り組みであると理解することが重要です。
受注者は、調査対象となった工事において、労務費、賃金、法定福利費を適切に管理し、求められた形式で提出する必要があります。
特に中小企業においては、労務管理やデータ収集の負担が増加する可能性もありますが、データの効率的な提出を可能にする本省管理のソフトウェア・システム導入が目指されており、これにより提出の利便性が図られることが期待されています。
調査結果は現場の賃金にどのように影響するのか?
今回の調査の最終的な成果は、公共工事の積算基準の改善に活用されることが明確な目標として掲げられています。
現状、工事の発注額に含まれる労務費の算定と、実際に現場で支払われる賃金との間に乖離が生じているケースが指摘されています。
今回の調査を通じて、発注者側(国)は、提示された請負金額と、実際に現場で必要とされた労務費(賃金含む)との間に大きな隔たりがないかを検証できるようになります。
具体的には、調査対象工事において、設計変更などにより労務費が増額されたと見込まれる期間と、実際にその期間で支払われた賃金を比較分析し、どのような差異が生じているかを抽出します。
この比較を通じて、積算基準のどの部分が現場の実態と合致していないのかを特定し、賃金水準の改善に資する措置を検討することが可能となります。
このプロセスが確立されれば、設計段階でより現実的で適正な労務費が計上されるようになり、それが公共工事の品質確保と同時に、現場で働く技能者への賃金還元を確実に実行するための根拠となります。
つまり、データに基づく根拠をもって、現場の技能者の適正な処遇を要求・実現できる環境整備が期待されるのです。
まとめ
国土交通省が主導する労務費・賃金の実態把握は、建設業における適正な賃金水準を確立し、構造的な課題を解決するための重要な施策です。
建設業者は、試行的な調査への協力を求められた際、労務費、賃金、法定福利費に関する正確なデータを、指定されたシステムや形式に従って提出する準備が必要です。
これは一時的な負担ではなく、長期的に見て建設業界全体の透明性と収益構造の改善、ひいては技能者の処遇改善に直結する取り組みであることを認識することが肝要です。
本取り組みの結果として算出される「目安」は、今後の公共工事における積算基準の改善に反映されることで、現場で働く全ての関係者の待遇向上に貢献することが期待されます。
建設業の持続的な発展のため、データに基づいた適正な評価体制への転換が急務です。この試行調査への真摯な対応が、現場の確かな労働環境改善の礎となるでしょう。
