日本空調衛生工事業協会(日空衛)と国土交通省は意見交換会を開催し、建設業界が直面する課題、特に発注行政の対応について議論を交わしました。
主要な議題は、入札参加資格要件の緩和、価格転嫁・取引適正化、改修工事に関する設計図書の精度向上、誠実な契約変更などの実施、建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用の5つです。
特に、入札資格審査における発注者による公平な評価の実現、評価システム運用ルールの明確化など、制度運営に関する基本的事項の徹底が要望されました。
また、下請け・専門工事業者の地位向上、建設技能者の適切な評価の導入が求められた点が注目されます。
国土交通省側は、これらの論点について、建設業界の法制度改正により既に担保されている部分があるとしつつも、技能者への報酬適正化を含め、継続的な協議が必要との認識を示しています。
Q1:入札参加資格審査の具体的な動きと、現場監督・技能者への影響はいかなるものか。
建設業界では、入札参加資格審査の運用を巡り、発注者ごとの評価のばらつきや制度運用ルールの分かりにくさが、長年の課題として指摘されてきました。
今回の定例意見交換会においても、日空衛は、発注者による公平な評価の徹底や、入札参加資格審査に関する運用ルールの明確化を求めました。
具体的には、入札参加資格要件などの緩和策の一環として、民間工事における一次下請けとしての施工実績を、直轄営繕工事における配置予定技術者の実務要件として認める措置の拡大や、建設工事費の上昇を踏まえた各種基準額の見直し、工事請負契約の締結に関する柔軟な対応などを要望しています。
こうした要望の背景には、建設技能者の高齢化や人材不足が進行する中で、専門工事業者に所属する技術者の実務経験や技術力が、入札・発注の場面で十分に評価されにくい現状があります。日空衛は、現場で積み上げられてきた経験を適切に評価する制度運用が、業界全体の持続性確保につながるとの考えを示しました。
これに対し国土交通省は、監理技術者などの専任を要する基準額や兼任制度について、昨年の建設業法改正で一定の制度整備を行なったと説明したうえで、合理化を求める意見がある一方で、技術者の負担増につながるとの指摘もあることに言及しました。今後は、発注者への調査結果なども踏まえながら、制度の在り方を検討していく考えを示しています。
入札参加資格審査を巡るこれらの議論は、制度そのものを直ちに変更するというよりも、既存制度の運用や評価の在り方を見直し、現場で働く技術者や監督の経験が適切に反映される環境づくりを進めていくことが主眼といえます。
今後の制度運用の動向次第では、現場で技術を磨いてきた人材の評価の在り方にも、一定の変化が生じる可能性があります。

日本空調衛生工事業協会と国土交通省との定例意見交換会
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。
Q2:元請けと協力会社間の「対等な関係」構築に向け、どのような課題が示されたのか。
定例意見交換会では、価格転嫁・取引適正化の観点から、元請け企業と協力会社(専門工事業者)との取引関係の在り方についても議論が行われました。
日空衛は、建設工事費や労務費の上昇が続くなかで、協力会社側に負担が偏ることのないよう、適正な価格転嫁と公正な取引環境の確保が重要であるとの認識を示しました。
具体的には、改正建設業法に基づく労務費の基準(標準労務費)を踏まえた契約の在り方や、安全衛生経費が現場の末端まで適切に行き渡るよう、発注者・元請け側に対する指導の必要性を訴えました。
また、民間工事においても、労務費相当額が適切に支払われる契約条件となるよう、行政による周知・指導を求めています。
これに対し国土交通省は、技能者の処遇改善や取引の適正化が、担い手確保の観点からも重要な課題であるとの認識を示しました。そのうえで、業界の実情を踏まえながら、関係者の協力を得つつ、継続的に対応していく必要があるとの考えを示しています。
元請けと協力会社の関係性については、制度変更を伴う即時的な結論が示されたわけではありませんが、価格転嫁や契約の適正化を通じて、より公正な取引環境を整備していくことが課題として共有されたといえます。
Q3:標準労務費とCCUSレベル別年収の関係について、どのような整理が示されたのか。
価格転嫁・取引適正化に関連して、日空衛は、改正建設業法に基づく労務費の基準(標準労務費)と、建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル別年収との関係性について、分かりやすい整理と周知を国に求めました。
要望の中では、標準労務費に基づく人件費が適切に支払われる契約となるよう、公共工事だけでなく民間工事においても、発注者への指導を強化する必要性が示されています。
あわせて、安全衛生対策に必要な経費が現場まで確実に行き渡るような制度運用の重要性についても言及されました。
さらに、2026年1月に施行予定の中小受託取引適正化法(取適法)について、同法が規定する製造委託の考え方が、建設工事にも明確に適用されるよう整理することを求めています。
これに対し国土交通省は、説明会などあらゆる機会を活用して、標準労務費とCCUSレベル別年収の関係性について周知を図っていくと回答しました。
また、公共工事設計労務単価や労務費の基準の改定を踏まえ、CCUSレベル別年収についても、適切に見直していく考えを示しています。
今回の議論では、具体的な制度変更の時期や内容が示されたわけではありませんが、労務費の基準と技能者評価の指標を整合的に運用していく必要性について、認識が共有されたと整理できます。

※画像はイメージです。
まとめ
今回の日空衛と国土交通省による定例意見交換会では、入札参加資格審査の運用、価格転嫁・取引適正化、技能者評価の在り方など、建設産業を取り巻く制度運用上の課題について幅広く意見が交わされました。
特に、労務費の基準や技術者の実務経験が、入札・契約・評価の各場面でどのように反映されるかという点について、業界と行政の間で問題意識が共有されたことは、今回の議論の一つの特徴といえます。
一方で、意見交換会は制度改正や運用変更を即時に決定する場ではなく、今回示された要望や見解についても、今後の検討課題として整理された段階にあります。国土交通省は、既存の法制度や制度運用の状況を踏まえつつ、発注者への調査や周知活動を通じて、必要な対応を検討していく考えを示しました。
今後は、入札参加資格審査や契約の在り方、労務費の取り扱いといった個別の論点について、制度の趣旨が現場に適切に反映されるかどうかが重要な視点となります。業界団体と行政との間で継続的に意見交換を重ねながら、制度運用の改善につなげていくことが求められるでしょう。
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