2025年12月に公表された建設業の民間(七会)連合協定工事請負契約約款の改正により、
労務費の確保や現場におけるハラスメント対策が契約レベルで明確化されました。
本記事では、今回の民間約款改正のポイントと、中小建設会社・現場監督が押さえるべき実務対応を解説します。
建設業の民間約款改正とは?2025年改正の全体像
建築関連7団体で構成される「民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会」は、2025年12月12日付で「民間(七会)連合協定工事請負契約約款」(民間約款)を改正する決定を公表した。この改正は、国の中央建設業審議会(中建審)による建設工事標準請負契約約款(標準約款)の改正を踏まえた措置であり、建設業における適正な労務費の確保と、現場におけるハラスメントを含む迷惑行為への対策、さらにCM(コンストラクションマネジメント)やPM(プロジェクトマネジメント)などの「関連業務受託者」の権限明確化を柱とする。
特に、契約当事者間で労務費や賃金の支払いを約束する新条項が設けられた点は、現場で働く中小建設業者にとって極めて重要な進展といえる。また、正当な理由がない過度な要求や社会通念上許容範囲を超える言動を「迷惑行為」と規定し、被害を受けた者が書面をもって必要な措置を請求できる仕組みを新設したことは、建設現場の労働環境改善に直結する改革である。
なぜ民間約款は改正されたのか?背景と目的
今回の民間(七会)連合協定工事請負契約約款(民間約款)改正は、建設業界が長年直面する構造的な課題、特に適正な請負金額の確保と労働環境の改善要請に対応する喫緊の措置である。近年、建設資材費の高騰や深刻な人手不足が続く中で、現場で働く労働者の賃金を適正に確保し、事業の持続可能性を高める必要性が高まっていた。標準約款が中建審によって改正されたことを受け、民間工事においても同様の対応が強く求められ、民間約款委員会がこれに追随する形で改正を実施する運びとなった。
最大の目的は、請負契約の透明性を高めるとともに、現場で働く人々が安心して職務に従事できる環境を、契約約款という法的基盤のうえで整備することにあると考えられる,。
適正労務費確保の新条項とは?現場への影響
新設された労務費・賃金の支払いに関する約束条項は、建設業者が労働者に対し適正な賃金を支払うための資金を、契約段階で確保することを促す重要な規定である。標準約款では、この条項は下請契約の各段階にも連鎖する「A」と、個々の契約段階で導入する「B」の二つに分かれて整備されたが、民間約款ではこのうち「B」が適用されることになった。
この「B」は、個々の契約当事者が、その契約段階において労務費や賃金の支払いを約することを意味する。これにより、発注者と受注者、また受注者と下請業者の間など、それぞれの契約において、適正な労務費の確保が契約上の義務として明確に位置付けられる。現場で働く職人や技術者にとっては、賃金の確保がより確実なものとなるよう、契約書の内容を精査する重要性が増し、下請業者への適正な支払いを求める根拠も強化されることになる。

関連業務受託者とは具体的にどのような立場の者を指し、なぜ権限の明確化が必要とされたのか
改正民間約款では、CM(コンストラクションマネジメント)やPM(プロジェクトマネジメント)といった、第三者による専門的業務を行なう者を「関連業務受託者」として明確に定義した。具体的には、発注者から関連業務を受託した者のうち、設計者、監理者、そして受注者(施工者)を除いたCMやPMなどに携わる者が該当する。
この定義は、複雑化する建設プロジェクトにおいて、設計・施工・監理以外に多様なマネジメント業務を担う専門家が介在する実態に対応するためである。定義を明確にすることで、関連業務受託者の権限と責任の所在が明確になり、現場での業務遂行における指示系統の混乱を防ぐ狙いがある。発注者は、これらの関連業務受託者の名称、業務内容、担当者の氏名を受注者に対して通知することが義務付けられる。現場の受注者は、誰がどのような権限を持って関与するのかを明確に把握でき、スムーズな連携が可能になる。
建設現場の迷惑行為・ハラスメント対策はどう変わる?
建設現場における不当な要求やハラスメントといった迷惑行為は、長年にわたり労働者のモチベーションや安全衛生に悪影響を及ぼしてきた。新設された条文では、正当な理由がない過度な要求や言動、および社会通念上許容される範囲を超えた言動を「迷惑行為」と規定した。これにより、迷惑行為の範囲が契約約款上で具体的に定義されたことは、現場の健全化に向けた大きな一歩といえる。もし発注者から受注者へ、あるいは受注者から発注者へ迷惑行為が発生した場合、その行為を受けた側は、理由を明示した書面をもって、相手方に対し必要な措置を講じるよう請求する権利を持つ。
これは、現場監督や職人といった立場の者が、不当な圧力やハラスメントに直面した際に、契約約款に基づいた法的・具体的な対抗手段を持てることを意味し、精神的な負荷の軽減や、良好な現場環境の構築に大きく寄与するものと期待される。この規定により、言動の適正化が契約レベルで担保されることになり、結果として人材定着や生産性向上にもつながる波及効果が期待できる。
現場で迷惑行為を受けた際、具体的にどのような手続きを踏むべきか
現場で迷惑行為に遭遇した場合、この改正約款の恩恵を受けるためには、定められた手続きを正確に踏む必要性がある。まず、その行為が約款に規定された「迷惑行為」に該当するかどうかを冷静に判断する。そして、措置を請求する際には、必ず理由を明示した書面を作成し、相手方に提出しなければならない。口頭での抗議や要求では、この約款上の請求権を行使したことにはならない点に留意すべきである。書面には、迷惑行為の内容、発生日時、場所、関与者、そして請求する措置の内容(例:当該行為の停止、関係者への注意喚起など)を具体的に記載する必要がある。この書面は、事実関係を明確にし、後の紛争を防ぐための重要な証拠にもなり得るので、社内の法務部門や管理部門と連携して慎重に作成する体制を構築することが肝要である。

今回の民間約款改正は、大手ゼネコンだけでなく、
元請・下請として民間工事に関わる中小建設会社や現場監督にも直接影響します。
中小企業や現場監督が今回の約款改正に備えて行なうべきことは何か
民間(七会)連合協定工事請負契約約款(民間約款)改正は、契約実務と現場運営の両面に大きな影響を及ぼす。中小企業の経営者や現場監督は、まず改正された民間約款の内容を深く理解し、自社の業務フローに組み込むことが肝要である,。特に、労務費確保に関する条項、関連業務受託者の定義と通知義務、そして迷惑行為に対する措置請求権の三点を重点的に確認し、関係者への周知徹底を行なうべきである。自社が発注者または受注者のいずれの立場になる場合でも、契約書を作成または受領する際には、これらの新条項が適切に反映されているかを細かくチェックする必要がある。
また、現場においては、迷惑行為に関する規定を社内研修などで共有し、従業員が不当な要求に対して躊躇なく措置を請求できる意識と環境を醸成することが急務である。この新制度の導入は、業界全体の「働き方改革」を推進する一環であり、適切な契約管理と労働環境の整備は、企業の信頼性を高める基盤となることだろう。改正の意義を正しく理解し、これを競争力強化の機会と捉える姿勢が求められる,。
まとめ
2025年の民間約款改正は、建設業における労務費確保とハラスメント対策を契約レベルで明確化した重要な制度改正です。
民間(七会)連合協定工事請負契約約款(民間約款)の改正は、建設業の構造改革を促進する強力な施策であり、適正労務費の確保、現場での迷惑行為への対策、関連業務受託者の権限明確化という、現場の根幹に関わる課題を一挙に解決に導くための基盤を整備した,。中小企業や現場監督にとって、これは単なるルールの変更ではなく、適正な対価を得て、安心して働ける環境を契約上保証されるための強力な制度的支援となる,。この制度改正の波を捉え、自社の契約実務と現場マネジメント体制を見直し、健全な経営基盤を確立することが、持続的な成長への鍵となる。
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