公共工事の担い手不足は発注側も深刻―44都道府県が乗り出す市町村支援と民間活用の急拡大

国土交通省などが実施した最新の調査によると、市町村の公共工事発注担当者の育成を支援する取り組みを行なっている都道府県が、全体の9割を超える44団体に上ることが明らかになった。
これは入札契約適正化法の指針に基づき、技術者不足に悩む小規模市町村の発注体制を持続させるため、国や都道府県が努力義務として支援を行なっているものである。

具体的には、市町村職員向けの講習会開催や、都道府県の内部研修への受け入れなどが主な支援策として挙げられている。
一方で、市町村側も独自の対策を講じており、約9割の団体が何らかの職員教育を実施しているものの、発注関係事務においては約6割の団体が民間企業や公益法人を活用しているという実態も判明した。
特に設計、積算、監督業務といった専門性が求められる分野での民間活用が進んでおり、発注事務の共同化に取り組む自治体も見られるなど、公共工事の発注体制は大きな転換期を迎えている。

疑問1:なぜ今、都道府県による市町村支援が急増しているのか

建設業界において現場の職人不足や技術者不足が叫ばれて久しいが、実は工事を「発注する側」である自治体、特に小規模な市町村においても、土木・建築職の公務員不足は深刻な状況にある。
今回の調査で44都道府県が支援に乗り出しているという事実は、もはや市町村単独では適正な公共工事の発注や管理が困難になりつつある現状を裏付けている。

適正化指針の見直しにより、技術者が不足する小規模市町村への補完・支援体制の構築が必要不可欠とされたことが背景にある。
入札や契約の手続きは、法律に基づいた公正かつ厳格な運用が求められる。しかし、ベテラン職員の退職や採用難により、ノウハウの継承が途絶えれば、入札の遅延や設計図書の不備、あるいは現場監督機能の低下といった実害が生じかねない。

これらは受注者である建設企業にとっても、工期遅延や手戻りの増加といったリスクに直結する問題である。
都道府県が講習会(26団体)や内部研修への受け入れ(31団体)を積極的に行なう背景には、地域インフラの守り手である地場建設業者が、安心して入札に参加できる環境を維持するという目的も含まれているといえるだろう。


都道府県による市町村発注職員の育成支援(複数回答)
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。

疑問2:市町村は具体的にどのような教育を行なっているのか

調査結果によれば、約9割にあたる1508の市区町村で教育・研修が実施されている。しかし、その内訳を見ると「他団体の研修への参加」が1225団体と圧倒的に多く、「職場での教育(OJT)」は581団体にとどまる。
これは、自庁内で十分な指導ができるベテラン技術者が不在であるか、あるいは教育体制を組む余裕がないほど業務が多忙であることを示唆している。

建設企業においては「見て覚えろ」という職人文化から、体系的な教育システムへの移行が進んでいるが、自治体においても外部リソースへの依存度は高まっている。
「研修の開催」を自前で行えているのは396団体に過ぎないという数字は、地方自治体の技術力維持がいかに危機的な状況にあるかを物語っている。
発注担当者の知識不足は、現場での協議が噛み合わない、設計変更の承認が遅れるといったトラブルの原因となるため、受注者側も発注担当者の経験値や背景(事務職か技術職か、研修を受けているかなど)を考慮したコミュニケーションが求められるようになるだろう。

疑問3:発注事務の「民間活用」とはどういうことか

本調査で注目すべきは、発注関係事務において約6割(1035団体)が民間企業などを活用しているという点である。具体的には、設計業務、積算業務、そして工事監督業務などが対象となっている。

これは建設業者にとって大きな意味を持つ。従来であれば、発注者(役所の職員)と直接行っていた設計の打ち合わせや現場の立会い検査などが、今後は発注者支援業務を受託した「建設コンサルタント」や「民間企業の技術者」との間で行われるケースが増えることを意味するからだ。
民間の技術者は専門知識が豊富である反面、契約図書や仕様書に基づいた厳格な管理を行なう傾向がある。

また、発注業務自体がビジネスチャンスとなる可能性もある。施工だけでなく、自治体の発注者支援業務を新たな事業の柱として検討する企業も出てくるかもしれない。
公共工事のプレイヤーが「官と民」という単純な構造から、官の業務の一部を民が担う複雑な構造へと変化していることを認識しておく必要がある。

疑問4:小規模自治体の「共同化」は進んでいるのか

人口減少が進む地域では、単独での事業執行が難しくなり、近隣自治体と連携する動きが出ている。
調査では121団体が発注関係事務の共同化に取り組んでいることが分かった。その手法として最も多いのが「事務の委託(32.2%)」であり、次いで「連携協約の締結(23.1%)」となっている。

共同発注や広域連合の活用が進めば、発注ロットの大型化や、入札参加資格要件の統一化などが進む可能性がある。
これまで地元の小さな町役場の案件だけを受注していた企業であっても、広域的な競争にさらされるリスクと、逆により大きな案件に参入できるチャンスの両面が生じる。

事務の委託が進めば、書類の様式や提出先が変わることも想定されるため、常に管轄自治体の広報や入札情報を注視し、制度変更に遅れを取らないような情報収集体制が不可欠となる。


※画像はイメージです。

疑問5:建設企業は今後どう対応すべきか

発注体制の変化は、現場の業務フローに直接影響を与える。都道府県主導の研修を受けた職員が増えれば、法令遵守や安全管理に対する要求水準が、より標準化・厳格化されることが予想される。
また、監督業務の民間委託が進めば、現場代理人に求められる書類作成能力や説明能力のレベルも上がっていくだろう。

一方で、発注者側のリソース不足を補う提案力があれば、それは強力な武器になる。
「言われた通りに作る」だけでなく、設計図書の照査段階での積極的な疑義照会や、ICT活用による監督員の負担軽減(遠隔臨場など)を提案できる企業は、人手不足に悩む発注者から重宝されるはずだ。
制度や体制が変わる過渡期こそ、変化に対応できる企業が生き残るチャンスである。

まとめ

国土交通省の調査により、公共工事の発注体制を維持するために、44都道府県が市町村支援に動き出している現状が明らかになった。
市町村側も9割が教育を実施しているものの、6割が設計や監督業務などで民間企業を活用しており、行政のアウトソーシング化が加速している。

また、一部では事務の共同化も始まっており、発注の仕組み自体が変わりつつある。
建設企業としては、発注担当者が必ずしもベテラン公務員ではない可能性や、監督員が民間コンサルタントであるケースを想定し、より論理的で明確な施工管理やコミュニケーション能力を磨くことが求められる。

 

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