日本道路グループを特定、那珂川市総合運動公園整備・BTO事業の全容
福岡県那珂川市が進める「(仮称)那珂川市総合運動公園整備運営事業」において、公募型プロポーザルの結果、日本道路を代表企業とする企業グループが優先交渉権者に特定された。本事業は、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)に基づく「BTO(建設・譲渡・運営)方式」を採用している点が最大の特徴だ。
構成企業には代表企業のほか、プロジェクトブレイン、ホーホゥ、ファイブ、内山緑地建設、涼華園、大匠建設といった企業が名を連ねており、3月末までの契約締結を予定している。
事業内容は、サッカーコート1面分の広場や陸上トラックを備えた多目的広場、庭球場、弓道場、クラブハウスなどの新設に加え、既存施設の解体・撤去、さらには開園後の維持管理・運営までを含む広範なものとなる。工期は2029年3月までとし、その後2043年3月末まで同グループが指定管理者として運営を担う計画である。
本記事では、この事例をもとに、建設業の経営や資金繰りに直結する「PFI・BTO方式」のお金と制度の仕組みについて解説する。

完成イメージ
※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。
Q1:BTO方式における「お金の流れ」は従来とどう違うのか?
従来の公共工事(直営方式など)では、役所が仕様を決め、入札で施工者を選定し、完成・引き渡しと同時に請負代金全額が支払われて契約が終了するのが通例であった。対してBTO(Build-Transfer-Operate)方式は、民間事業者が施設を建設(Build)し、完成直後に所有権を自治体に移転(Transfer)するものの、その後の運営・維持管理(Operate)まですべて民間が行なう仕組みである。
お金の流れにおける決定的な違いは、「長期的なキャッシュフロー」が発生する点にある。本事業では、2029年の完成後、2043年までの約14年間にわたり維持管理・運営期間が設定されている。建設費の支払いは引き渡し時に行なわれるケースや割賦払いされるケースなど契約によるが、重要なのは「運営対価」である。
建設会社やそのグループ企業は、単に建物を作って終わるのではなく、その後10年以上にわたって施設の点検、修繕、清掃、管理業務を受託し、対価を得続けることになる。これは、景気の波を受けやすい「フロー型(請負)」の収益構造から、安定的な「ストック型(継続課金)」の収益構造へと経営体質を転換させる好機となる制度だ。
Q2:「独立採算の付帯事業」は、建設会社にとってリスクかチャンスか?
本件の公募条件には、事業範囲として「付帯事業」が含まれており、これは「地域活性化や利用者の利便性向上につながる施設を独立採算で整備・運営する」ものとされている。ここが制度上の大きなポイントである。通常の公共工事では、設計図書にないものを作ることは許されないが、PFI事業では民間側の提案で収益施設を作ることが推奨される。
例えば、公園内にカフェやレストラン、有料のスポーツスクール、物販店などを設置し、その売上を事業者の収益とすることができる。建設会社の視点で見れば、自社で施工した店舗のテナント料や事業収益が直接入ってくる形だ。
もちろん、「独立採算」である以上、赤字になれば事業者のもち出しとなるリスクはある。しかし、公共施設の敷地という集客が見込める好立地でビジネスを展開できる利点は大きい。従来の「入札額を叩き合う」競争から、「どれだけ収益を生む施設を提案・施工できるか」という企画提案力の競争へと、稼ぐためのルールが変わっていることを認識すべきである。
Q3:地域の中小企業がこの制度に食い込むメリットは?
「日本道路」のような道路舗装業界の大手が代表企業であっても、今回の構成員には「内山緑地建設」「涼華園」「大匠建設」といった、造園や土木・建築を専門とする企業が含まれている。PFI事業では、維持管理期間が長期に及ぶため、遠方の大手企業だけでは日常的なメンテナンスや緊急時の対応がコスト高になりがちだ。そのため、地域に根差した中小企業の協力が不可欠となる。
制度的なメリットとして、こうした長期契約の案件に関わることは、金融機関からの信用力向上に寄与する可能性がある。自治体との長期契約は安定収益の裏付けとなるため、融資を受ける際の事業計画として評価されやすい。
また、下請けとして単発の工事をもらうだけの立場から、グループ構成員として「運営」に関与することで、発注者(自治体)と直接対話する機会が生まれ、次の公共工事受注への実績作りにもつながる。
那珂川市の事例は、地域の建設会社が「施工」だけでなく「経営」のパートナーとして公共事業に参画できる枠組みであることを示している。

※画像はイメージです。
Q4:見積・積算において注意すべき「ライフサイクルコスト」とは?
BTO方式の現場では、イニシャルコスト(建設費)の削減だけでなく、ランニングコスト(維持管理費)を含めたトータルコストの低減が求められる。これは「ライフサイクルコスト(LCC)」の考え方だ。従来の入札では「とにかく安く作る」ことが正義とされがちだったが、BTOでは「安く作って、後で修繕費が膨らむ」提案は採用されない。
現場監督や積算担当者は、「高耐久の資材を使って修繕頻度を下げる」「清掃ロボットが入りやすい床構造にする」「LED照明や断熱材で光熱費を下げる」といった、長期的なコスト縮減効果を金額換算して提案するスキルが求められる。制度上、こうした提案が評価点として加算されるからだ。目先の材料費削減ではなく、15年後、20年後を見据えた「お金の計算」ができる人材が、これからの建設現場では重宝されることとなる。
まとめ
那珂川市の総合運動公園整備事業は、PFI・BTO方式という制度を活用し、官民が連携して長期的な施設運営を行なうモデルケースである。建設会社にとって、この方式は「請負工事」から「事業運営」へとビジネスモデルを進化させる重要な契機となる。
独立採算事業による収益化や、長期契約による経営基盤の安定化など、制度を正しく理解し活用することで、地域建設業は新たな収益の柱を築くことができる。「作る技術」に加え「運用する視点」をもつことが、次世代の建設経営における必須条件となるだろう。
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