岩沼市で上下水道一体の革新的技術実証施設が完成
宮城県岩沼市の県南浄化センター内において、国土交通省が推進する「上下水道一体革新的技術実証事業」に採択された新たな研究施設が完成し、現地で記念式典が挙行された。この施設は、宮城県、メタウォーター、日本下水道事業団(JS)の3者が共同で提案した「好気性グラニュールによるダウンサイジング可能な下水処理技術実証研究」の拠点となるものである。
式典には国交省の本田康秀官房参事官や宮城県の千葉衛公営企業管理者らが出席し、人口減少や施設老朽化といった課題を抱える水道事業において、施設の小規模化(ダウンサイジング)を実現する技術確立への期待が示された。本実証研究は2026年度末まで行なわれ、従来の下水処理方式に比べて建設費および維持管理費の削減、省人化・省エネが可能となる革新的技術の検証が進められる予定である。

代表者によるテープカット
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
疑問1:新技術「好気性グラニュール」はいかにして建設コストを削減するのか?
今回導入される「好気性グラニュール」を用いた下水処理技術が、建設コストの削減に直結する最大の理由は、処理プロセスの劇的な簡素化と設備のコンパクト化にある。従来の下水処理場では、汚水を浄化するために「流入・流出」「沈殿」「撹拌(かくはん)」といった工程ごとに専用の水槽や巨大なプールのような設備を建設する必要があった。これには広大な敷地面積と、大量のコンクリートや鉄筋、掘削工事が必要となり、それが建設費を押し上げる主要因となっていたのである。
しかし、本実証実験で用いられる好気性グラニュールは、汚泥自体が高い沈殿性能をもつため、これらの複数の工程を単一のタンク内で完結させることが可能となる。一つのタンクで汚濁物質の分解から固液分離までを行なえるため、反応タンクの容量そのものを小さく設計できるのだ。
設備が小型化(ダウンサイジング)されれば、プラント建設に関わる土木工事の規模が縮小され、初期投資(イニシャルコスト)の大幅な圧縮が見込める。さらに、敷地制約の厳しい都市部や山間部の処理場においても、用地買収費を抑えつつ更新工事が可能となるメリットも生まれる。建設業者にとっては、施工規模こそ縮小するものの、特殊な技術を要する高付加価値な工事案件として捉えることができるだろう。

完成した研究施設
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
疑問2:国交省が推進する「実証事業」とはどのような制度設計なのか?
本件は単なる民間企業の技術開発ではなく、国土交通省の「上下水道一体革新的技術実証事業」として採択され、国費が投入されている点に注目すべきである。この事業制度は、水道・下水道事業における効率的かつ効果的な新技術の開発と普及を加速させるため、国が実証研究に必要な資金を助成する仕組みである。背景には、地方自治体の財政難がある。人口減少により水道料金収入が先細りするなかで、高度経済成長期に整備されたインフラが一斉に更新時期を迎えており、従来通りの高コストな施設更新は財政的に困難になりつつある。
そこで国は、民間企業の技術力と自治体のフィールド、そして日本下水道事業団(JS)のような専門機関の知見を融合させる「産官学連携」の枠組みに対し、資金面での支援を行なうことでブレイクスルーを図ろうとしているのだ。今回の実証研究においても、宮城県が実証フィールドを提供し、メタウォーターがエンジニアリングを担い、JSが計画管理を行なうという役割分担が明確化されている。
建設業界の経営者としては、こうした国の補助金や助成事業のトレンドを把握しておくことが重要だ。国がどの分野に投資を集中させようとしているのか、その方向性を理解することは、今後の公共工事の受注戦略を練るうえで欠かせない視点となるだろう。特に「省エネ」「省人化」「コスト縮減」に寄与する技術提案は、今後の総合評価落札方式などにおいても有利に働く可能性が高いといえる。
疑問3:ランニングコストの削減効果と2028年度以降の市場展望は?
建設費というイニシャルコストだけでなく、施設稼働後のランニングコスト(維持管理費)削減も、本技術の大きな訴求点である。ダウンサイジングは省人化や省エネにも寄与する。処理工程が単一タンクに集約されることで、送風機(ブロワ)やポンプなどの電気設備が効率化され、電力消費量の削減が期待できる。
また、システムがシンプルになることで、日々の点検やメンテナンス業務の負担が軽減され、人件費の抑制にもつながるだろう。これは、指定管理者制度などで包括的民間委託を受託する企業にとっても、利益率を向上させる重要な要素となる。
今後の展開としては、2026年度末まで岩沼市の施設で実証実験を行ない、そのデータを基に2028年度までにメタウォーターが設計・維持管理のガイドラインを作成する予定である。さらに、日本下水道事業団(JS)が全国の自治体に対して行なう「下水処理場再構築事業」の提案の中で、この新技術の導入を積極的に推奨していく方針が示されている。
つまり、2028年度以降、この「好気性グラニュール法」を採用した下水処理場の改築・更新工事が、全国各地で発注される可能性が高いということだ。ガイドライン化されれば、標準的な工法として認知され、地方自治体の発注仕様書にも盛り込まれるようになるだろう。建設関連企業としては、今のうちからこの技術動向を注視し、関連する施工ノウハウや維持管理体制の検討を始めておくことが、将来の受注機会獲得に向けた先行投資となるはずだ。
まとめ
宮城県で始動した下水処理技術の実証実験は、インフラ更新における「コストの壁」を技術革新で突破しようとする試みである。建設費と維持管理費の双方を圧縮するダウンサイジング技術は、財政難にあえぐ自治体にとって救世主となり得る。国の制度支援を受けたこのプロジェクトが成功すれば、2028年度以降の公共工事市場に新たな潮流を生み出すことになるだろう。
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