大手ゼネコン決算に見る建設業の利益回復と適正受注の潮流

業界を覆う好調の波と利益構造の転換

大手および準大手ゼネコン各社の2026年3月期第3四半期連結決算が出揃い、建設業界における利益面での好調さが極めて鮮明な結果となった。集計対象となった主要23社のうち、実に9割を超える22社が営業増益を達成し、そのうち10社においては過去最高となる営業利益を記録している。これまで業界全体を苦しめてきた激しい受注競争や、長引く資材価格の高騰といったネガティブな要因から脱却し、各社が確実な利益を確保できる体質へと転換を果たしたことが数字として表れた形だ。

特筆すべきは、単に売上規模を拡大させるのではなく、施工体制やキャパシティに見合った計画的な受注を徹底した点にある。無理な規模拡大を追わず、利益率を重視した経営判断が功を奏し、通期予想においても上方修正が相次ぐなど、高収益体制は今後も継続する見通しが強まっている。本稿では、今回の決算内容をもとに、建設業界で起きている構造的な変化と今後の展望について、現場や経営の視点から紐解いていく。


※画像は建設通信新聞さまからお借りしています。

 なぜ今、ゼネコン各社は記録的な増益を達成できたのか?

多くの建設関係者が抱く疑問として、「資材高騰が続くなかで、なぜこれほどの利益改善が可能だったのか」という点が挙げられるだろう。最大の要因は、各社が「売上至上主義」から「利益重視」へと明確に舵を切ったことにある。

かつての建設業界では、完成工事高の積み上げを最優先とし、採算が厳しい案件であっても受注競争に参加するケースが散見された。しかし、今回の決算ではその傾向が一変している。例えば大林組の事例では、施工キャパシティに見合った計画的受注を行なった結果、完成工事高自体は減少したものの、利益面では好調を維持した。これは、現場の施工能力を超えた無理な受注を抑制し、適正な工期と要員配置が可能な案件を厳選した結果であるといえる。

また、徹底したコスト管理も大きな要因だ。資材価格の上昇は依然として経営の重荷ではあるが、各社は原価低減活動を推進し、現場単位での収支管理を強化することで利益率の低下を食い止めた。鹿島建設が述べるように、徹底したコスト管理が奏功し、適正利益を生み出せる体質への変化が進んでいることは、業界全体にとって大きな示唆を含んでいる。

 発注者の意識変化と物価上昇への理解は進んでいるか?

現場サイドからすれば、見積もり金額の増額やスライド条項の適用がスムーズに行なわれるかどうかが死活問題となる。この点についても、今回の決算からはポジティブな兆候が見て取れる。清水建設が「発注者の物価上昇への理解が進んでいる」と言及しているように、民間・公共を問わず、建設コストの上昇に対する発注者側の受容性が高まっている

これまでであれば、「資材が上がったので増額をお願いしたい」という交渉は難航を極めるのが常であった。しかし、昨今のインフレ基調や建設業の窮状が社会的に認知されたことで、適正な価格転嫁が受け入れられやすい土壌が形成されつつある。インフロニア・ホールディングスも、土木・建築ともに受注時採算が高水準を維持しているとしており、適正な利益を含んだ契約締結が可能になっている現状がうかがえる。これは、下請け企業や中小建設業者にとっても、価格交渉を行ないやすい環境が整いつつあることを意味しており、業界全体への波及効果が期待される。

 土木と建築で利益率に違いはあるか?

決算の詳細を見ると、土木分野と建築分野で利益率の改善状況に若干の特徴が見られる。特に土木分野においては、鹿島建設(24.6%)、大成建設(21.9%)、ピーエス・コンストラクション(20.7%)など、完成工事総利益(粗利)率が20%を超える企業が複数現れた。

土木工事においてこれほどの高利益率が達成された背景には、大型工事が竣工を迎えるにあたり、追加工事の獲得や設計変更への対応が適切に行なわれたことがある。大成建設が指摘するように、工事の進捗に伴う変更契約がきっちりと利益に結びついている点は注目に値する。一方、建築分野においても、資材高騰の影響を大きく受けつつも、ターゲットとなる粗利率10%に近い水準、あるいはそれを上回る企業が大勢を占めた。建築は鉄骨や生コンなどの資材価格変動の影響をダイレクトに受けやすいが、前述の選別受注や発注者との価格交渉により、採算割れを防ぎ、健全な水準まで回復させていることがわかる。


※画像はイメージです。

 現場の「施工キャパシティ」重視がもたらすメリットとは?

今回の好決算を支えたキーワードの一つが「施工キャパシティ」である。これは、自社や協力会社が保有する技術者・技能者の数、機材の能力、安全管理体制などを考慮した、「無理なく施工できる限界量」を指す。

無理にキャパシティを超えた受注を行なうと、現場では長時間労働が常態化し、工程管理に歪みが生じ、結果として労働災害のリスクが高まるだけでなく、手直し工事や突貫工事による追加コストが発生して利益を圧迫する。今回、大手各社がこのキャパシティを重視し、戦略的に施工を進めたことは、現場の働き方改革という観点からも極めて重要である。適正な工期と要員で現場を回すことが、結果として企業の利益最大化につながるという事実が、数字として証明された形だ。これは中小規模の建設会社にとっても、経営戦略を立てるうえで重要な指針となるだろう。

 今後の建設市場の見通しは明るいか?

この好況は一過性のものなのか、それとも長期的なトレンドなのか。各社の見通しによれば、この良好な事業環境は2027年3月期も継続すると予測されている。鹿島建設は「業績トレンドは成長軌道にある」と強気の姿勢を崩していない。

豊富な手持ち工事残高に加え、都市再開発やインフラ更新需要など、建設需要自体は底堅い。加えて、各社が確立した「適正受注・適正施工」のサイクルが機能し続ける限り、極端な業績悪化に陥るリスクは低いと考えられる。もちろん、人手不足や2024年問題への対応といった課題は依然として存在するが、利益が出せる体質になったことで、人材への投資やDX(デジタルトランスフォーメーション)への投資を行なう余力が生まれている点もポジティブな要素だ。今後は、この確保した利益をいかにして現場の処遇改善や生産性向上に還元し、持続可能な業界構造を築いていけるかが問われるフェーズに入るといえる。

まとめ

大手・準大手ゼネコンの決算は、建設業界が長年の課題であった「低収益体質」からの脱却を図りつつあることを如実に示した。資材高騰という逆風の中でも、適正な価格転嫁施工キャパシティに見合った受注活動を徹底することで、過去最高益を記録する企業が続出した事実は重い。

発注者の理解が進み、土木・建築ともに適正利益が確保できる環境が整いつつある今、この流れを中小企業や末端の現場まで浸透させることが、業界全体の健全な発展には不可欠である。無理な受注を避け、質の高い施工を適正な対価で提供するというビジネスの基本に立ち返ることが、結果として企業の成長と現場の幸福につながることを、今回の決算結果は教えてくれている。

 

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