建設業界における労働時間改革の現状と課題
2024年4月より、トンネル切羽掘削作業員にも時間外労働の罰則付き上限規制が適用され、建設業界の働き方は大きな転換期を迎えています。日本トンネル専門工事業協会(トンネル専門協)が実施した最新の調査報告書によれば、この規制適用後、73.9%の作業所長が時間外労働の減少を実感していることが明らかになりました。月当たりの時間外労働時間は、「ゼロ」が8.7%、そして「1~30時間」が67.4%を占め、大半の現場が新たな規制の範囲内で業務を遂行できている状況が示されています。この調査は、トンネル専門協の施工系会員企業23社のうち、切羽掘削作業を行う現場を対象に、経営幹部と作業所長に分けて実施されたもので、規制が現場にもたらした具体的な変化を浮き彫りにしています。労働時間短縮の動きは、業界全体の生産性向上と、より持続可能な働き方への移行を促進する重要な一歩と考えられます。
Q1:2024年4月からの労働時間規制は、現場にどのような影響をもたらしましたか?
トンネル切羽掘削作業員に適用された時間外労働の罰則付き上限規制は、2024年4月から施行されました。この規制導入により、多くの現場で時間外労働が実際に減少していることが、作業所長へのアンケート結果から明確に見てとれます。具体的には、7割以上の作業所長が「減少した」と回答しており、月当たりの時間外労働が30時間以下に収まっている現場が全体の約7割を占める状況です。これは、規制が意図した効果を一定程度発揮し、現場の労働環境改善に貢献していることを示唆するものです。一方で、「毎月30時間を超え、年間360時間を上回る見通し」と回答した現場も6.5%存在しており、依然として規制遵守に課題を抱える現場もあることが浮き彫りになりました。業界全体で更なる取り組みが求められます。
Q2:労働時間の現状について、経営幹部はどのように認識していますか?
経営幹部を対象とした調査では、各社における1日当たりの労働時間設定について興味深い結果が得られました。最も多かった回答は「8.0時間」で37.5%を占め、次いで「9.0時間」および「設定なし」がいずれも18.7%という結果でした。これは、多くの企業が一般的な8時間労働を基準としている一方で、特定の現場や業務に応じて柔軟な対応を取っている実態を示しています。また、法定休日の設定については、「日曜日」が68.7%と圧倒的多数を占め、「土曜日」が25.0%、「土・日曜日」が6.3%という内訳でした。この結果は、建設業界が伝統的に日曜日を休日とすることが多い慣習を反映しつつも、一部で週休2日制への移行が見られることを示唆しています。

Q3:トンネル専門協が統一の積算基準を策定することについて、どのような議論がありますか?
トンネル専門協が労働時間に関する統一の積算基準を策定する提案に対し、経営幹部の間では賛成意見が多数を占めています。**「賛成」と回答した企業は53.3%**に上り、「どちらともいえない」が33.4%、「反対」が13.3%という内訳でした。この結果は、業界全体として、労働時間基準の明確化と標準化が求められていることの表れと考えられます。仮に統一基準が策定される場合、職員の1日当たりの労働時間数としては「8.0時間」が半数以上の56.2%を占め、次いで「9.5時間」(18.7%)、「9.0時間」(12.5%)と続く結果となりました。統一基準の導入は、元請企業と下請企業間の取引における透明性を高め、適正な工期設定とコスト管理に貢献することが期待されます。
Q4:元請企業からの労働時間に関する指示は、現場にどの程度浸透していますか?
2024年4月以降、元請企業から労働時間に関して何らかの指示があったかという質問に対し、作業所長からの回答は「あった」と「特になかった」が同数という結果でした。この結果は、元請企業間での労働時間規制への対応に差異があることを示唆しており、一律に規制の趣旨が下請企業にまで浸透しているとは言えない現状がうかがえます。規制の実効性を高め、業界全体の働き方改革を推進するためには、元請企業が主体的に労働時間管理の徹底を促し、サプライチェーン全体で協調して取り組む必要性が改めて認識されます。具体的な指示内容やその効果については、今後の詳細な分析が待たれます。
Q5:トンネル専門協は、調査結果を受けて今後どのような取り組みを進める計画ですか?
今回の調査結果を踏まえ、トンネル専門協は統一の積算基準策定に向けた具体的な検討を開始する方針を明確に示しています。特に、歩掛かり策定(サイクルタイム)時の労働時間については、**「基本を昼勤8時から17時、夜勤18時から3時(深夜勤務時間4時間)との内容に統一して設定する」**という方向性が打ち出されました。これは、発注者や元請企業に左右されがちな現場の労働時間を、より標準化された形で管理しようとする試みです。昼勤においては、拘束時間9時間のうち昼休憩1時間を差し引いた実労働時間を8時間とし、さらに「実作業時間は7.5時間(朝礼・移動時間などを抜いた時間)」として明確に定義することが提案されています。この「実作業時間」の明確化は、実際の掘削作業に費やされる時間を正確に把握し、積算の適正化を図るうえで極めて重要です。

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まとめ
2024年4月に施行されたトンネル切羽掘削作業員への時間外労働規制は、多くの現場で労働時間短縮という具体的な変化をもたらしました。しかし、一部には依然として課題を抱える現場も存在し、元請企業からの指示の浸透度にもばらつきが見られます。こうした状況を受け、日本トンネル専門工事業協会が統一の積算基準策定に向けて動き出したことは、業界全体の働き方改革を加速させる上で非常に大きな意味を持つでしょう。**労働時間の明確な定義と標準化は、現場の効率化、安全性の向上、そして何よりも建設業で働く人々のQOL(生活の質)向上に直結します。**今後も業界全体の協調体制を強化し、持続可能な建設業の実現に向けた取り組みが着実に進むことを期待します。
