【青森県予算編成方針と建設業が直面する人材課題】
青森県が2025年10月6日に公表した2026年度予算編成方針は、地域経済を支える建設業界に対して、事業戦略と人材戦略の両面で重要な指針を提示した。この方針において、最優先の取り組みとして「地域特性を生かしたしごとづくりと所得向上・労働力確保」が明記されており、人材の定着と確保が喫緊の課題であることが強調された。
また、基本計画の政策では、インフラの長寿命化を図るための「予防保全型インフラメンテナンスへの転換推進」が盛り込まれた。予算編成の基本枠組みはシーリング(上限枠)ゼロ設定であり、公共事業関係費は地方負担ベースで前年度当初比0%の見積もり目安額が設定されたが、老朽対策や大規模施設整備は「公共施設等適正管理推進事業債」などの各種財源を積極活用し、着実に推進する方針である。この厳しい財政枠組みの中で、老朽化対策という新たな専門性が求められる事業を着実に進めるためには、現場における専門技術の向上と効率的な人材運用が避けられない状況にあります。
労働力確保の最優先課題化が現場に求める変革
Q:最優先課題とされた「労働力確保」の実現に向け、現場は具体的にどのような対応を求められるのか。
青森県の予算方針において、「労働力確保」が「地域特性を生かしたしごとづくりと所得向上」と並び最優先で掲げられた事実は、建設業界における人手不足が、公共インフラの維持という県の根幹に関わる問題として認識されていることを示唆します。さらに、「若者の定着・還流」の推進も重点事項として挙げられており、現場は短期的な人員補充だけでなく、長期的な人材育成と定着に焦点を当てる必要に迫られています。
具体的には、現場の魅力を向上させるための働き方改革の推進が必須条件となります。シーリングゼロという厳しい予算枠の中で、労働力を確保し、所得向上を目指すためには、デジタル技術(DX)の導入による生産性の抜本的な向上が不可欠です。これにより、長時間労働の是正、作業負担の軽減を実現し、若年層や女性を含む多様な人材が働きやすい環境を整備することが、公共工事を受注し続けるための前提条件の一つとなります。単に採用活動を強化するだけでなく、職場環境の質そのものを高めることが、行政方針に対応するための重要な一手です。

※青森市の街並み
予防保全への移行と専門スキル習得の必要性
Q:予防保全型インフラメンテナンスへの転換は、現場の職人や技術者にどのような技術・資格習得を要求するのか。
県が推進する予防保全型インフラメンテナンスは、インフラが損傷する前に計画的に点検・補修を行う方式です。この転換により、現場の業務の中心は、緊急性の高い修繕から、緻密な診断技術と計画的な維持管理へとシフトします。
この業務内容の変化は、現場従事者に対し、従来の施工技術に加え、構造物の劣化メカニズムに関する専門知識と、点検・診断技術の習得を強く要求します。老朽対策や大規模施設整備を着実に推進するために、「公共施設等適正管理推進事業債」などの財源が活用される方針であり、これらの事業に携わる技術者には、点検結果を正確に評価し、最適な補修計画を提案・実行する高度な能力が求められます。
企業側は、この技術変革に対応するため、従業員に対する教育・研修制度を抜本的に見直す必要が生じています。特に、既存の熟練職人の持つ経験知を、点検や診断という予防保全のプロセスに結びつけ、若手技術者へ体系的に継承する仕組みの構築が急務です。技術力の高い人材の育成こそが、予算が厳格化された中で安定的に公共事業を受注し続けるための競争力の源泉となります。

厳格な予算枠内での人材投資戦略
Q:公共事業関係費の目安額が前年度当初比0%という状況下で、人材育成や賃金向上は可能なのか。
地方負担ベースの公共事業関係費が前年度当初比0%目安とされたことは、予算執行における効率性と費用対効果が極めて厳しく問われることを意味します。しかし、この厳しい枠組みの中でも、最優先事項として労働力確保と所得向上が挙げられていることから、人材への投資こそが事業の継続性を担保するという認識が必要です。
予算が安定的に推移する中で、現場が取るべき戦略は、まず不採算な業務や非効率なプロセスを徹底的に削減することです。削減によって生まれた余力を、優秀な人材の獲得・定着のための賃金や福利厚生の改善、または専門技術習得のための教育投資に充当します。
また、自然災害防止などの緊急安全対策は別枠で対応することが示されており、これらは地域社会の「いのちとくらしを守る基盤強化」に直結する重要な事業です。これらの高度な専門性が求められる分野で確実な実績を積むことが、企業の信頼性を高め、結果として安定的な事業量確保に繋がり、それが間接的に従業員の待遇改善の基盤となります。現場監督や経営層は、この予算方針を機に、人件費をコストではなく、インフラ維持管理という新たな市場で優位に立つための戦略的な投資として再定義することが求められています。
まとめ
青森県の2026年度予算方針は、建設業界に対し、予防保全への技術的シフトと、労働力確保のための抜本的な職場改革という二重の課題を突き付けています。厳しい財政環境の中で事業を安定させる鍵は、人材の質にあります。現場は、高度な専門性を備えた人材の育成と、若者が定着できる魅力的な職場環境の構築を最優先で進める必要が生じています。
この変革こそが、地域社会の基盤強化を担う建設業の持続可能性を確かなものとします。
