建設業が“人で勝つ”時代へ:全建ブロック会議から読み解く採用・育成戦略

はじめに:採用・育成こそ次の競争力
関東甲信越地区で開かれた全国建設業協会(全建)のブロック会議では、「人材確保・育成」と「適正賃金の確保」が主要議題として取り上げられました。この流れは、建設業に従事する中小企業・現場にとって「目をそらせないテーマ」です。

2025年度の全建事業計画でも、技能者の賃上げ・働き方改革・生産性向上を柱とする取り組みが掲げられています(全建2025年度事業計画)。

本稿では、会議の内容をもとに、「建設業における人材獲得・教育の潮流」「中小企業がとるべき戦略」「現場で実践できる手法」を掘り下げます😊

業界が抱える現実:“いい人材”を呼べない理由

まず、なぜ今、人材確保・育成が声高に議論されるのか。その背景を押さえておきましょう。

1. 少子化・高齢化による母数減少

国土交通省の「建設技能労働者の人材確保検討会」は、建設業では高齢化と若年入職者減少が深刻化しており、将来の技能承継が急務であると指摘しています。

2. 業界イメージのギャップ

「長時間労働」「厳しい現場」「低賃金」というイメージは根強く、若者・転職者にとって抵抗要因になりがちです。実際、全建ブロック会議の場でも、「賃金を上げてほしい」「働き方を改善しなければ人は来ない」という意見が相次ぎました。

3. 適正利潤・コスト構造のギャップ

現場では、人件費が圧迫され、“見えないコスト”を削らざるを得ない場面が多々あります。最低制限価格や一般管理費の設定水準が低いため、適正な処遇を維持しにくいという声も、会議で多数上がりました。

4. 技術・知識格差と育成体制の未整備

若手が即戦力として使えるようになるまでに長期間を要することも課題。現場教育・研修体制・OJTの仕組みが不十分な企業も多くあります。

こうした課題背景を理解した上で、どう打ち手を考えるかが鍵です。

※画像は建設通信新聞さまよりお借りしました。

全建ブロック会議で浮かんだ“人材戦略の方向性”

ブロック会議では、関東甲信越をはじめとした地域協会から、次のような要望・課題が出されました。

・賃金アップの原資確保:施工単価や一般管理費の見直しを国に要望

・技術者育成制度の整備:ICT技術者育成制度の公的支援

・働き方改革対応:時間外規制への柔軟対応や熱中症対策加算の制度化

・公共事業支払改善:前払金の遅延や支払期間の改善要望

このような声は、単なる要求ではなく、業界の転換点を示す方向性でもあります。人件費を軽視できない体質へとシフトし、待遇・制度・魅力を揃えてこそ、人が来て残る職場になるというメッセージです。

会議内容をうけ、2025年度の全建事業計画では技能者の賃上げ・適正工期見積り・ICT活用推進が明記されています。

中小建設会社が実践すべき人材採用・育成戦略

以下は、現場会社・中小企業で実践可能な採用・育成の戦略案です。

✅ 戦略的採用アプローチ

・ターゲット層を明確にする:高校・専門学校・地域人材など、ローカルなタッチポイントを持つ場所に出向く

・魅力的な採用メッセージを作る:技術力・扱う機械・ICT活用事例・キャリアパスなど、他業種との差別化要素を訴求

・インターンシップ・体験型実習を提供:現場見学・短期体験を通じて“現場の実感”を伝える

・紹介制度・リファラル活用:社員・協力会社からの紹介インセンティブ制度を導入

これらを表面的に導入するだけでなく、運用とフィードバックの仕組みをつくることが肝要です。

ICT・DXを活用した育成支援手法

人材育成とICT/DXは、相互補完関係にあります。以下は、現場教育にDXを取り入れる手法です。

・オンライン研修プラットフォーム:建設技術・法令・安全教育をeラーニング化。サイバー大学・建設DX系教材サービスなどの導入。

・VR/AR現場体験:仮想現場での安全訓練、施工手順シミュレーションで若手の経験学習を補完

・ナレッジ共有ツール:クラウド型社内ナレッジベース、質問掲示板、現場ノウハウ動画共有

・進捗管理・育成計画ツール:社員育成進捗を追えるタスク管理ツール (例:Trello, Asana など) を活用

・フィードバックAI/チャットボット支援:業務記録ログから課題抽出や振り返りヒントを出す仕組み

DX導入には初期コストや学習負荷がありますが、長期視点で見れば人材育成効率・定着率向上に寄与します。

人材確保・育成成功のポイントと注意点

人を育てるには以下のポイントを抑えておきましょう:

・全社一貫したメッセージとリーダーシップ
社長・現場監督・中間管理職が一体となって「人を育てる会社」であることを語り、行動で示す

・目に見えるキャリアパス提示
昇格モデル・技術スペシャリスト路線など、将来像を見せることで希望を持たせる

・初期失敗を許容する文化
ミスを叱責するのではなく、改善機会とする姿勢を持つことで若手が挑戦できる環境に

・フィードバックと改善のサイクル
研修・OJT活動の振り返り、改善点を反映させる仕組みを作る

・待遇・福利厚生の検討
賃金水準・手当制度・休暇制度などの見直しも不可欠

・中小企業ならではの柔軟性を活かす
大企業にできない「若手を抜てきする」「現場幅広い業務体験をさせる」など、小回りの強みを武器に

注意点として、制度を整えるだけでは意味がなく、運用できる仕組みと継続性、そして現場への落とし込み力が伴わないと形骸化します。

 

 まとめ:人材戦略が中小建設会社の未来を左右する

全建ブロック会議で強調された「人材確保・育成」「賃金向上」「働き方改革」は、もはや業界のスローガンではなく、実務現場に落とし込まなければならないテーマです。

中小建設会社さま・現場施工者さまにとっては、人を育て残すことが新たな競争力そのものになりつつあります。

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