業界の現状と変革への要請
全国建設業協会(全建)などが参画したブロック会議における議論を通じて、現在の建設業界が抱える深刻な課題、特に「3K(きつい、汚い、危険)」といった根強いネガティブイメージの払拭と、それに伴う人材確保への苦戦が浮き彫りになりました。
建設業がインフラ整備を担う社会的役割の重要性が国民に十分に伝わっていないという認識があり、さらに従来の3Kに加えて、「給料が安い、休暇が少ない」といった新たな要素への懸念も指摘されました。
これらの構造的な課題を克服するため、業界全体として働き方改革の推進、そして現場の担い手の確保・育成に向けた具体的な施策の実行が急務です。
特に、若年層の入職を促し、現場への定着を図るためには、入職時の処遇改善や職場の魅力向上、多様なサポート体制の構築が喫緊の課題として強く求められています。
技能者への適切な処遇が実現しない限り、担い手確保・育成は極めて困難であるという認識が共有されています。
建設業界の「よくある質問」と具体的な対応策を以下に述べます。
Q1:建設業の根強い「3K」イメージは、本当に現場の努力だけでは変えられないのか?
A1:従来の「きつい、汚い、危険」というイメージは依然として社会に根強く残存し、これが若年層をはじめとする新たな担い手の参入を阻害する大きな要因です。
現場の安全対策や環境改善への努力は進められていますが、このイメージを抜本的に払拭するには、単なる現場の改善努力に留まらない、業界全体での構造的な変革が不可欠です。
特に問題視されているのは、業界の重層的な構造のなかで、現場で汗を流す技能者に対して適正な賃金や評価が届きにくい点といえます。
これに対処するため、業界団体や行政は、建設業の社会的な重要性を国民に広報するとともに、技能者のモチベーションを維持し、誇りをもって働けるようにするための処遇改善策の推進を強く要請しました。
処遇改善の実現を前提としたうえで、働きやすさと働きがいの創出、離職防止や定着率向上に向けた取り組みを強化する必要があります。
これは、労働条件の改善だけでなく、例えば、建設業法に基づく適切な工期設定の徹底や、技能者のスキルアップを支援する教育・評価制度の整備など、多角的な支援体制の構築を含みます。

各会合では人材の育成・働き方改革が急務とし国交省主体の取り組みを求めた=10月16日、和歌山市のホテルグランヴィア和歌山
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
Q2:公共工事の積算基準の見直しは、現場の技能者の賃金にどのように反映されるのか?
A2:2025年度からは、公共工事に係わる積算基準において、技能者の給与水準に配慮した積算が適用される方向で、制度的な後押しが進められています。
これは、技能者が適正に評価され、建設業が「憧れの建設業」として社会的に認知されることを目指すものです。
しかし、この積算基準の変更が単なる「形式的な積算」で終わってしまう懸念も指摘されています。
重要な論点は、積算された適切な給与水準が、元請けや下請けを通じて、現場末端の技能者にまで確実に浸透し、実態としての賃金引き上げに繋がるか否かという点に集約されます。
あるブロック会議では、「処遇改善を前提とした賃金引き上げの実現が、担い手確保における最も重要な要素で」との意見が示されています。
建設業者は、公共工事の積算基準の趣旨を正しく理解し、これを現場の技能者の賃金水準に反映させる取り組みを、経営層が主体となって推進していく必要があります。
発注者側にも、適切な工期設定と品質確保を徹底し、建設業者が適正な利益を確保できる環境整備への協力が求められています。
Q3:若年層や新たな担い手の確保・育成に向け、具体的にどのような戦略が重要視されているのか?
A3:我が国の生産年齢人口が減少するなかで、若年層の確保は建設業界にとって喫緊の課題です。
若年層の担い手人口を2030年までに現在の1.5倍に回復させるという目標を達成するためには、従来の慣習にとらわれない戦略的な対策が不可欠といえます。
若年層の採用および確保には、まず入職時の処遇改善が求められ、職場の魅力向上と、継続的な成長を支える多様なサポート体制の整備が重要です。
具体的には、若年者への定着支援、OJTやOFF-JTを組み合わせたスキルアップのための教育・研修体制の構築、さらには採用活動を円滑化するためのノウハウ提供や、採用コストを削減するための支援策などが計画されています。
特に、中小建設業者に対しては、新人育成や雇用管理に関する実践的なサポートを強化する必要があります。
また、技能者が「建設業を選んで良かった」と思えるよう、建設業法の遵守のもと、適切な処遇改善を前提としたうえで、自主的に「働きがい」を感じられる職場環境を構築する努力が求められています。
Q4:現場の生産性向上や働き方改革は、どのように進められ、何を目指すべきか?
A4:現場の生産性向上と働き方改革は、担い手確保と処遇改善を両立させるための基盤的要素です。
建設業における長時間労働の是正は社会的な要請となっており、そのためには、建設業法に基づき、適切な工期設定とそれに基づく現場の工程管理が極めて重要です。
ある議論では、「建設業の魅力向上のためには、適切な工期の確保と品質の確保を両立し、そのなかで技能者の処遇を改善することが不可欠である」という認識が共有されています。
建設業者は、ITツールやデジタル技術の活用、業務プロセスの徹底的な見直しを通じて、効率化を図り、労働時間短縮を実現する必要があります。
生産性向上は、単に効率を追求するだけでなく、技能者がより高度な技術や専門性を発揮できる環境を整備することに繋がります。
これが「魅力ある建設業」への転換を促し、結果として若年層の入職と現場への定着に貢献することが期待されています。
この取り組みは、処遇改善と表裏一体であり、働き方改革の成果を賃金に反映させるという好循環を生み出すことが最終的な目標です。

Q5:企業が「働きがい」と「定着率」を高めるために、現場で実践すべきことは何か?
A5:賃金改善に加え、現場で働く人々が誇りを持って、自律的に業務に取り組める環境を整備することが、高い定着率を実現するための鍵です。
建設業者が取り組むべきは、「適切な処遇改善を前提としたうえでの、自主的な『働きやすさ』と『働きがい』の創出、および定着率向上に向けた取り組みの強化です」。
具体的には、技能者の能力や貢献度を正当に評価する人事評価制度の導入や、明確なキャリアパスの提示が挙げられます。
また、安全衛生管理の徹底は、危険な職場というイメージを払拭するために不可欠な要素です。
特に、現場の中核となる若年層や中堅層に対し、「適切な処遇」と「働きがい」という両輪が揃っていることを実感してもらうことが、建設業への愛着を高め、長期的な定着に繋がります。
発注者、元請け、協力会社が一丸となり、技能者一人ひとりの成長を支援し、誇りをもって働ける環境を提供することが、持続可能な建設業の確立に向けた最重要課題です。
業界の努力に加え、建設業の社会的な重要性を国民に広く理解してもらうための情報発信も、引き続き推進されています。
まとめ
建設業界が抱える人材確保の課題は深刻ですが、公共工事の積算基準における処遇改善への配慮や、若年層確保のための戦略的サポートの強化など、変革に向けた具体的な制度的後押しは進められています。
現場で働く皆様の処遇改善を確実に実現するためには、これらの制度的措置を形式的なものに終わらせることなく、現場末端まで確実に浸透させることが肝要です。
適正な賃金と、働きがいのある職場環境の実現こそが、建設業が「憧れの産業」へと変貌するための最も重要な道筋です。
業界全体でこの変革を推進し、持続可能な建設業の基盤を強固にする必要があります。
