公共工事の積算適正化と歩切り根絶が現場の処遇改善を加速させる

国土交通省が実施した実態調査により、地方自治体などの公共発注機関において、予定価格の積算に最新の「公共工事設計労務単価」が適用されていない事例が判明した。
具体的には、市区町村の約3%に相当する57団体が依然として旧来の単価を使用しており、これが適切な労務費確保を妨げる要因となっている。

また、設計金額を合理的な理由なく引き下げる「歩切り」についても、2025年1月の調査で30団体において再発が確認されたが、国交省の働き掛けにより同9月までに是正の見通しが立った。

国交省は今後、改正建設業法の趣旨に則り、実態調査を毎年実施することで、資材単価に不透明な乗率を設定する「単価歩切り」を含めた不適切な慣行の根絶と、予定価格の適正化を徹底する方針を打ち出している。

市区町村の約3%で最新労務単価が未適用という実態

なぜ、国が定めた最新の労務単価がすべての現場で即座に反映されないのか。
建設業界が長年抱いてきたこの疑問に対し、国交省の「公共工事入札契約適正化法(入契法)」に基づく2025年度の実態調査が明確な数字を突き付けた。
調査結果によれば、国や都道府県、政令指定都市では100%の適用が確認されたものの、特殊法人などの8団体、および市区町村の57団体において、2025年6月時点でも最新単価が適用されていなかった。

公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)や入契法の適正化指針では、予定価格の設定において「市場における労務の実勢価格」を反映することが義務付けられている。
国交省建設業課は、最新単価を適用しない積算は「法令上そぐわない」との厳しい見解を示している。
現場の技能労働者に適切な賃金を支払うための原資となる労務単価が、発注段階で旧来の低い水準に据え置かれることは、中小建設業者の経営を圧迫するだけでなく、担い手確保を阻害する重大な過失といえる。
今後は国による個別の現状把握と働き掛けが強化されるため、受注側としても自社が関わる自治体の適用状況を厳密に注視する必要がある。

根絶されない「歩切り」の再発と巧妙化する手法への警戒

現場から最も嫌われる商慣習の一つである「歩切り」が、依然として根絶されていない実態も浮き彫りになった。
2025年1月の最新調査では、一度は是正されたはずの30団体において歩切りの再発が確認されている。
これに対し国交省は、改善要請や追跡調査、個別ヒアリングを通じて、2025年度中にはすべての団体での根絶を確認する予定だ。

特筆すべきは、設計金額全体を削る従来の手法だけでなく、資材単価に対して不透明な乗率を掛けることで実質的な価格抑制を図る「単価歩切り」への警戒が強まっている点だ。
国交省は、こうした行為が歩切りと同様に不適切な結果を招くとして、全国の発注機関に慎むよう周知を徹底している。
歩切りは、本来積算されるべき正当なコストを削り取る行為であり、結果として現場の安全対策費や労務費が犠牲になる構造を生む。
毎年の実態調査が定例化されることで、発注者側の「予算ありき」の積算に対する監視の目はこれまで以上に厳しくなる。

現場実態を反映する「独自歩掛かり」の有効活用と水平展開

一方で、積算の精度を高めるための自治体独自の取り組みも進んでいる。
公共工事では、直轄工事と比べて発注ロットが小さい場合や、地域特有の施工条件が存在する場合が多い。
こうした事情に対応するため、都道府県21団体、市区町村115団体が、現場の実態に即した「独自歩掛かり」を設定していることが判明した。

国交省は、これらの独自設定が単なるコスト削減の手段ではなく、予定価格の正確な算出に寄与している「好事例」に注目している。
これらの事例を年度内に整理し、全国へ水平展開することで、地域の特性に応じた適正な積算環境の構築を目指す考えだ。

中小建設業者にとって、現場の苦労や特殊性が正当に評価される歩掛かりの普及は、適正な利益確保に向けた追い風となる。
施工の効率性や地域性を反映した見積もりが、単なる「高い・安い」の議論ではなく、技術的根拠に基づいた価格設定として認められる環境が整いつつある。

適正な積算が人材確保と技能労働者の処遇改善の鍵を握る

公共工事の積算適正化は、単なる会計上の問題ではなく、建設業界が直面する人材不足解消のための「一丁目一番地」の施策だ。
労務費の適切な確保は、若手入職者の賃金引き上げや、既存社員の待遇改善に直結する。
改正建設業法の施行により、発注者には適正な労務費を担保する責任が法的に課せられるようになった。
これにより、受注側である中小建設業者も、発注者に対して「最新単価の適用」や「歩切りの撤廃」を堂々と主張できる環境が醸成されている。

技能労働者の高齢化が進むなか、次代を担う人材を確保するためには、他産業に見劣りしない給与水準と、休日を確保できる余裕のある工期設定が不可欠だ。
国交省が今回示した、未適用団体への個別指導や歩切りの継続調査という強い姿勢は、現場の努力が報われる「健全な取引」を支える基盤となる。
経営者はこれらの制度の動きを自社の採用戦略に結び付け、適正価格での受注がいかに社員の利益に還元されるかを社内外に発信していく姿勢が求められるだろう。


※画像はイメージです。

発注者への働き掛けと改正建設業法に基づく健全な経営の確立

建設業界の構造改革は、今まさに実行段階にある。国交省が都道府県や市区町村に対して行なう働き掛けは、これまで「立場が弱い」とされてきた受注側の発言力を強める一助となるだろう。

しかし、制度が整うのを待つだけではなく、企業側も自衛の策を講じる必要がある。
具体的には、最新の労務単価に基づいた見積書の作成を徹底し、万が一、不当な歩切りや旧単価の押し付けがあった場合には、公的な通報窓口や相談機関を活用するなどの毅然とした対応が望まれる。

現場を預かる現場監督や職人の知恵と技術が、正当な価格で評価されない時代は終焉を迎えつつある。
積算の透明性が高まることは、単に企業の利益を守るだけでなく、建設業という職業の社会的地位を向上させることに他ならない。
法改正による追い風を最大限に活かし、発注者との対等なパートナーシップを築くことが、持続可能な経営を実現するための最短距離となる。
今回の実態調査の結果を真摯に受け止め、現場の隅々にまで適正な労務費が行き渡る循環を作ることが、業界全体の責務だろう。

 

 

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