国土交通省は、調査や設計といった直轄業務の履行期限を平準化するため、建設コンサルタンツ協会(建コン協)などの関係団体と密接に連携した対策検討を開始した。
この取り組みの背景には、特定の時期に業務が集中することで発生する長時間労働を解消し、設計者や技術者の働き方改革を実効性のあるものにする狙いがある。
国交省の報告によれば、測量・地質調査・土木関係の業務において、第4四半期(1月〜3月)に履行期限が集中する割合は、2013年度の90%から2024年度には54%へと大幅に減少した。
しかしながら、政府が当面の目標として掲げる「35%以下」には依然として届いておらず、中長期的な目標である「上半期と下半期で件数を二分する」状態の実現に向け、さらなる対策が求められている。
国交省は今後、受注者側の超過勤務の実態を詳細に把握し、無理のない業務発注や履行期限の設定を追求する方針を打ち出した。
履行期限の第4四半期集中率は54%に改善。しかし目標達成には至らず
建設業界において長年の懸案事項となっているのが、年度末に工期や履行期限が集中する「繁忙期の偏り」だ。
国交省が有識者会議の「業務・マネジメント部会」で示したデータによれば、履行期限が第4四半期に集中する割合は、過去10年強で劇的な改善を見せた。
2013年度には全体の9割が年度末に集中するという極端な状況にあったが、2024年度実績では54%まで低下している。
これは、国庫債務負担行為(ゼロ債務負担行為)の活用や、適切な工期設定の徹底が一定の成果を収めた証左といえる。
だが、現場の負担感は依然として払拭されていない。国交省が目標とする35%以下という数値は、年度末の「追い込み」を構造的に排除するためのデッドラインだ。
現状の54%という数字は、依然として半数以上の業務が1月から3月に集中していることを意味し、これが現場の技術者や事務担当者の疲弊を招く主因となっている。

※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。
深夜・休日出勤の撲滅へ。実効性のある労働実態把握を強化
こうした現状に対し、受注者側を代表する建設コンサルタンツ協会は、国交省の動きを高く評価しつつも、より踏み込んだ対策を求めている。
協会の代表者は、平準化の究極的な目標は「深夜勤務や土日出勤の撲滅」にあると強調した。
単に統計上の履行期限を分散させるだけでなく、実際の労働時間がどのように推移しているか、休日が確保されているかといった「実質的な働き方」を重視する構えだ。
今後は、協会側が独自に調査した残業実態や出勤状況のデータを国交省と共有し、より現場の現実に即した是正策を協議していく方向で一致した。
建設業にも時間外労働の上限規制が適用されたことで、これまでのような「年度末だから仕方ない」という言い訳は通用しなくなった。
労働基準法を遵守しつつ業務を完遂するためには、発注者側による「平準化」がもたらす余裕こそが、中小企業の存立基盤となる。
予算繰り越し制度の柔軟運用。3割を超える業務が次年度へ継続
平準化を支える重要な制度的枠組みとして注目されるのが、予算の翌年度繰り越しだ。
国交省は近年、この繰り越し手続きに対して極めて柔軟な対応を継続している。
2013年度には、年度内に稼働している業務のうち翌年度に繰り越された件数はわずか3%に過ぎなかった。
しかし、この割合は近年急上昇しており、2022年度に28%、2023年度に33%、そして2024年度には34%にまで達した。
つまり、現在では約3分の1の業務が年度をまたいで継続されており、これが年度末の集中緩和に大きく寄与している。
中小企業にとって、年度末の突貫工事は人件費の高騰や事故リスクの増大を招くリスク要因でしかない。
繰り越し制度が一般化したことで、無理な工期短縮を強行せず、品質確保と安全管理に注力できる環境が整いつつあることは、経営上の大きなメリットだといえる。

※画像はイメージです。
採用競争力を左右する「働き方改革」。平準化を経営の追い風に
平準化の進展は、中小企業の採用戦略にも多大な影響を及ぼす。
深刻な若手入職者不足に直面する建設業界において、最大のネックとなっているのは「不規則な休日」と「長時間労働」のイメージだ。
公共工事の平準化が進み、年間を通じて業務量が一定になれば、企業は安定した人員配置計画を策定できる。
これは、繁忙期のみに頼る非正規雇用の抑制や、常用雇用の維持に直結する。
また、若手社員に対する教育・研修の時間も確保しやすくなり、人材定着率の向上が期待できる。
国交省と業界団体が連携して労働実態を注視する姿勢を強めている今、企業側に求められるのは、この平準化の流れを自社の「ホワイト化」に活用する知恵だ。
デジタルツールを用いた徹底的な工数管理や、平準化された工期を前提とした週休2日の完全実施は、他社との差別化を図る強力な武器となる。
まとめ
国交省が主導する業務平準化は、単なる行政手続きの変更ではなく、建設業界の構造そのものを変える抜本的な改革だ。
第4四半期の集中率54%という現状を真摯に受け止めつつ、35%以下の目標達成に向けた国の動向を注視することが重要だ。
中小企業の経営者や現場監督は、繰り越し制度などの支援策を最大限に活用し、従業員の健康と企業の持続可能性を守るための体制構築を急がなければならない。
現場の働き方が変わることこそが、建設業の再生につながるだろう。
無料で求人募集や協力会社の募集ができる、建設業向けマッチングサイト『建設円陣』はコチラ↓(バナーをクリック!)
