「身長・腕力は関係ない」ANA流マニュアルに学ぶ、建設現場の女性定着術

建設と空港、異業種が挑む共通課題

建設産業女性定着支援ネットワーク(須田久美子幹事長)は15日、空港グランドハンドリング協会(空ハン協)と共催し、関西国際空港において「女性活躍推進に向けた異業種交流会」を開催した。この交流会には、建設企業および空ハン協の会員企業から約40名が参加し、互いの業界における業務内容や課題について学びを深めるとともに、性別を問わず誰もが働きやすい職場環境の構築に向けて活発な意見交換が行なわれた。

両団体は国土交通省による業種間交流推進の取り組みを通じ、2025年から連携体制をとっている。空ハン協は航空機の誘導や手荷物の積み降ろし、旅客サービスなどを担う企業で構成されており、屋外での作業が多い点や、特定の業務において男性の比率が高い点など、建設業界と多くの共通項をもっている。
当日は3つのグループに分かれ、手荷物のコンテナ積載作業や航空機を誘導する「マーシャリング」の現場を見学するなど、実践的な視察も実施された。


手荷物をコンテナに積み込むソーティング場を見学
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。

異業種交流から学ぶ、現場改善と女性活躍のヒント

建設業界において、慢性的な人手不足や職人の高齢化、そして若手や女性の定着率向上は喫緊の課題である。今回の空港グランドハンドリング業界との交流は、一見すると異なる産業間の連携に見えるが、その実、抱える悩みや解決すべきテーマは驚くほど似通っている。
ここでは、今回の交流会で共有された事例や議論された内容をもとに、建設現場の改善に役立つ視点をQ&A方式で解説する。

 Q. なぜ建設業が空港業務(グランドハンドリング)と連携するのか?

A. 労働環境や業務特性に多くの共通点があり、課題解決のヒントが共有できるからである。
建設現場と空港のグランドハンドリング業務は、共に「屋外作業が主体であること」「体力勝負の側面があること」「男性従業員が多数を占める職場環境であること」など、類似した特性をもっている。

特に、風雨や猛暑、厳冬といった厳しい気象条件下での業務遂行が求められる点は、両業界にとって共通の悩みである。今回のような異業種交流を通じて、自社内や業界内だけでは気づかなかった安全対策や業務効率化のアイデアを取り入れることは、閉塞感を打破し、組織の硬直化を防ぐために極めて有効な手段となる。
空ハン協の大貫哲也理事(CKTS社長)も、「現場の声こそが企業・業界変革の力」であると述べており、業界の枠を超えた知見の共有が変革の鍵を握っている。

 Q. 「力仕事」や「身体的負担」の軽減について、どのような具体策があるか?

A. ANAグループが発表した「作業手順の資料化(マニュアル化)」が参考になる。
今回の交流会における女性活躍推進の取り組み紹介では、ANAグループのプロジェクトチームが、身長の高低や腕力の有無に関わらず、手荷物の積み込み作業などを円滑に進められるよう、作業手順を詳細に資料化した事例を発表した。これは建設業にとっても非常に示唆に富む事例である。

建設現場では依然として「見て覚えろ」という文化や、個人の体力や勘に依存した作業が少なくない。しかし、身体的なハンディキャップを補うための手順書やマニュアルを整備し、コツを言語化・視覚化することは、女性だけでなく、力の弱い若手や体力が低下したベテラン職人にとっても働きやすい環境を作ることにつながる。
属人化を排除し、標準化を進めることは、安全性の向上のみならず、多様な人材を受け入れる土壌作りに直結する。

 Q. 季節ごとの過酷な環境(猛暑・厳冬)への対策は?

A. 業界を超えて「装備」や「休憩の取り方」などの知見を共有することが重要である。
グループディスカッションでは、夏季および冬季の過酷な労働環境対策について活発な意見交換が行なわれた。空港の駐機場は、建設現場と同様に遮るものが少なく、コンクリートの照り返しや寒風に直接さらされる環境である。

熱中症対策としての空調服の活用や休憩所の設置工夫、防寒対策としての高機能インナーの導入など、それぞれの業界で培われた「身を守るための知恵」を出し合うことは、即効性のある対策につながる。
特に近年の異常気象に対し、単一業界の常識にとらわれない柔軟な発想で安全衛生管理を見直すことが求められている。


グループディスカッション
※画像は日刊建設工業新聞さまからお借りしています。

Q. 女性の定着支援として、ライフイベントへの対応はどうすべきか?

A. 出産後の働き方の選択肢を拡充することが、離職防止の鍵となる。
交流会では、出産後の働き方に関する選択肢の拡充についても議論がなされた。建設業においても、現場第一線で活躍していた女性が出産や育児を機に退職せざるを得ないケースは多い。

例えば、現場管理から積算やCADオペレーターなどの内勤業務へ一時的に配置転換を行なう制度や、短時間勤務制度の柔軟な運用など、キャリアを断絶させないための仕組みづくりが不可欠である。
土木技術者女性の会や女性技能者協会などが活動報告を行なったように、実際に現場で働く女性たちの声を吸い上げ、制度設計に反映させることが定着率向上の第一歩となる。

 Q. 現場の意識を変えるためには何が必要か?

A. 慣習を変える苦労を恐れず、現場から声を上げ続ける姿勢が必要である。
長年培われてきた業界の慣習や制度を変えることは容易ではない。空ハン協の大貫理事が指摘したように、改革には苦労が伴うものである。

しかし、人手不足が加速する現代において、旧態依然とした体制のままでは企業の存続自体が危ぶまれる。女性が働きやすい職場は、男性にとっても、高齢者にとっても働きやすい職場である。
「昔からこうだった」という固定観念を捨て、他業界の成功事例を積極的に取り入れながら、現場レベルから改善の声を上げ続けることが、建設業の魅力を高め、次世代の人材を確保するために不可欠なプロセスであるといえる。

 まとめ

今回の異業種交流会は、建設業と空港業務という異なるフィールドにありながら、共通の課題をもつ者同士が手を取り合うことで、新たな解決策が見出せることを示した。女性の定着支援は単なる福利厚生ではなく、業務の標準化や安全対策、ひいては企業の生産性向上に直結する経営課題である。

ANAグループの事例に見られるような、体力に依存しない作業手順の確立や、季節ごとの環境対策の共有は、すぐにでも自社の取り組みとして検討する価値がある。既存の枠組みにとらわれず、外部との連携を通じて働き方改革を推進することが、選ばれる建設企業への近道となるだろう。

 

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